従業員の自主的学びを支援!職務外の資格取得やMBA取得もOKの助成金を解説します【人材開発支援助成金(人への投資促進コース/自発的職業能力開発訓練)】

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従業員から「簿記の資格を取りたい」「プログラミングの講座を受けたい」「MBAを取得したい」と相談を受けたとき、「それは自己啓発だから自分のお金で受けて」と断っていませんか。

確かに、会社が指示していない研修は業務とは関係ない自己啓発として扱われることが多く、費用は全額自己負担というのが一般的です。しかし、従業員が自主的に学びたいという意欲があるのに、会社が何も支援しないのは、せっかくのスキルアップのチャンスを逃すことになります。

一方で、会社が費用を全額負担すると決めても、次のような悩みが出てきます。

・どの研修まで会社が費用を出すべきか、線引きが難しい
・特定の従業員だけ支援すると、不公平だという声が出る
・高額な研修費用を全額負担するのは、会社の負担が大きすぎる

実は、従業員が「自分で学びたい」と申し出た訓練の費用を会社が半分以上負担する制度を就業規則に定めておけば、国の助成金で訓練費用の45〜60%を取り戻すことができます。

この記事では、従業員の自主的な学びを会社が支援する「自発的職業能力開発訓練」について、要件と活用方法を整理していきます。

こんな企業におすすめ!

・従業員から「資格を取りたい」「講座を受けたい」と相談を受けることがある
・従業員の自己啓発を応援したいが、どこまで会社が費用を負担すべきか悩んでいる
・業務に直接関係する研修だけでなく、幅広いスキルアップを支援したい
・従業員の学ぶ意欲を引き出し、自律的な成長を促したい
・MBA取得など高額な学費がかかる社会人大学院への進学を支援したい

1. そもそも「自発的職業能力開発訓練」とは?

(以下、人への投資促進コースのご案内P22、P23より引用)

「自発的職業能力開発訓練」は、労働者が自発的に受講した訓練費用を事業主が負担する場合に助成される制度です。
この制度は「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)」の一部として位置づけられており、社員の自主的な学びを会社が支援する仕組みです。

制度の3つの特徴

特徴1:従業員からの申し出がスタート
この制度の最大の特徴は、会社が一方的に「この研修を受けなさい」と指示するのではなく、従業員本人が「この研修を受けたい」と自発的に申し出ることが前提となっている点です。
従業員が自分で学びたい内容を選び、自分で教育訓練機関に申し込み、受講料等を支払います。その後、会社が労働者本人に対して訓練経費を補助する流れになります。

特徴2:自発的職業能力開発経費負担制度の整備が必要
従業員の自主的な学びを支援するためには、あらかじめ「自発的職業能力開発経費負担制度」を就業規則または労働協約に規定しておく必要があります。
簡単に言うと、「従業員が自分で選んだ研修費用の半分以上を会社が負担する」というルールを就業規則に明記し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
制度を整備しておくことで、従業員が「会社は学びを応援してくれる」と感じられ、自主的なスキルアップを後押しすることができます。

特徴3:幅広い訓練が対象
対象となる訓練は、職務を問わず、職業に必要となる知識や技能の習得をさせるための訓練であれば、幅広く認められます。
例えば、以下のような訓練が対象となります。

・簿記検定、宅建士、中小企業診断士などの資格取得講座
・プログラミング、Webデザイン、データ分析などのスキルアップ講座
・ビジネススクール(MBA)や社会人大学院での学位取得
・オンライン学習サービス(Udemy、Schooなど)による自主学習
・語学学校やTOEIC対策講座

ただし、OFF-JT(座学)であることが条件で、OJTは対象外です。また、実施方法は「通学制」「同時双方向型の通信訓練」「eラーニング」「通信制」のいずれかである必要があります。

従業員の学ぶ意欲を引き出す制度設計

この制度の最大のメリットは、従業員自身が「学びたい」という意欲を持って訓練を選ぶため、受講のモチベーションが高く、実際にスキルが身につきやすいという点です。
会社が一方的に「この研修を受けなさい」と指示した場合、従業員は義務感で受講するだけで終わってしまうことが多いですが、自分で選んだ研修であれば、積極的に学ぼうという姿勢が生まれます。
また、制度を整備することで、従業員に対して「会社はあなたの学びを応援している」というメッセージを伝えることができ、従業員のエンゲージメント向上にもつながります。
このように、自発的職業能力開発訓練は、従業員の自主性を尊重しながら、会社も助成金で費用負担を軽減できる制度です。次の章では、具体的にどれくらいの助成額が見込めるのかを見ていきます。

2. いくらもらえる?【助成額と助成率】

自発的職業能力開発訓練では、社員に支払った訓練経費に対して助成が受けられます。ただし、訓練期間中の賃金に対する助成はありません。(以下、人への投資促進コースのご案内P3、P4、P5より引用)

経費助成

訓練にかかった経費(受講料、教材費など、会社が負担した金額)に対して、以下の助成率で支給されます。

中小企業:45%(賃金要件等を満たす場合:60%)

例えば、従業員が20万円の講座を受講し、会社が全額(20万円)を負担した場合、9万円の助成が受けられます。賃金要件を満たせば12万円が助成されます。

賃金助成

自発的職業能力開発訓練では、賃金助成はありません。
これは、社員が業務時間外(休日や就業時間後など)に自主的に訓練を受けることを想定しているためです。

賃金要件・資格等手当要件とは

助成率が加算される「賃金要件等を満たす場合」とは、以下のいずれかを満たした場合です。

訓練修了後に行う訓練受講者に係る賃金改定前後の賃金を比較して5%以上上昇している場合、又は、資格等手当の支払を就業規則等に規定した上で、訓練修了後に訓練受講者に対して当該手当を支払い、かつ、当該手当の支払い前後の賃金を比較して3%以上上昇している場合に、助成率等を加算

簡単に言うと、訓練を修了した従業員の賃金を5%以上引き上げるか、または資格手当を新設して3%以上賃金を引き上げれば、助成率が45%から60%に上がります。

受講者1人当たりの経費助成の限度額

訓練時間数に応じて、1人当たりの限度額が設定されています。

一般的な訓練の場合

・実訓練時間数100時間未満:7万円
・実訓練時間数100〜200時間未満:15万円
・実訓練時間数200時間以上:20万円

大学・大学院の場合

・大学(1年当たり):60万円
・大学院(1年当たり):国内60万円、海外200万円

例えば、社会人MBAプログラム(2年間)の場合、国内大学院であれば最大120万円(60万円×2年)が限度額となります。

定額制サービスによる訓練の場合

UdemyやSchooなどの定額制オンライン学習サービスを利用した場合、受講者1人1月あたり2万円が限度額となります。

助成額のシミュレーション例

【例1】中小企業の社員が簿記2級講座を受講(賃金要件を満たさない場合)

・受講料:5万円(会社が全額負担)
・訓練時間:80時間(100時間未満)

受け取れる助成金:
・経費助成:5万円×45% = 2万2,500円
・実質負担:2万7,500円

【例2】中小企業の社員が社会人大学院に通学(賃金要件を満たす場合)

・学費:年間120万円(会社が全額負担)
・通学期間:2年間

受け取れる助成金:
・1年目:60万円(限度額)×60% = 36万円
・2年目:60万円(限度額)×60% = 36万円
・合計:72万円

賃金要件を満たすことで、240万円の学費負担に対して72万円の助成を受けられます。

【例3】複数の社員がオンライン学習サービスで自主学習(賃金要件を満たさない場合)

・定額制サービス利用料:月額2,000円×10名×6か月 = 12万円(会社が全額負担)

受け取れる助成金:
・経費助成:2万円(限度額)×10名×6か月×45% = 5万4,000円
・実質負担:6万6,000円

助成金の限度額

1事業所が1年度に受給できる助成金の限度額

自発的職業能力開発訓練は、人への投資促進コース全体で2,500万円の限度額がありますが、そのうち自発的職業能力開発訓練については300万円が上限となります。

つまり、人への投資促進コース全体で2,500万円に達していない場合でも、自発的職業能力開発訓練だけで300万円が限度となります。

受講回数の制限

1人の労働者が1年度に受講できる回数は3回までです。

ただし、「定額制訓練」「自発的職業能力開発訓練」のうち定額制サービスによる訓練、及び「事業展開等リスキリング支援コース」のうち定額制サービスによる訓練を活用して1人の労働者が1年度に3回定額制サービスによる訓練を受講した場合、3回が上限となります。

3. 金額入り事例

ここでは、実際の事例を元にした中小企業の具体的な活用モデルを紹介します。

助成を受けられたケース

ケース1:経理担当者の簿記2級取得支援(従業員15名の卸売業A社)

背景:
経理担当の社員から「簿記2級を取得したい」と相談を受けた。会社としても経理スキルの向上は歓迎したいが、受講料を全額会社負担にするか、全額自己負担にするか悩んでいた。

実施内容:
・自発的職業能力開発経費負担制度を就業規則に規定(会社が受講料の2分の1以上を負担)
・社員が簿記2級の通信講座(受講料5万円)に自主的に申し込み
・会社が受講料の全額(5万円)を社員に支給

受け取った助成金:
・経費助成:5万円×45% = 2万2,500円
・実質負担:2万7,500円

結果:
社員は無事に簿記2級に合格。会社の実質負担は2万7,500円で済み、社員の自己負担はゼロ。社員のモチベーションも上がり、他の社員からも「自分も資格を取りたい」という声が出た。

ケース2:営業社員のMBA取得支援(従業員30名のIT企業B社)

背景:
営業部長から「MBAを取得してマネジメント力を高めたい」と相談を受けた。社会人大学院の学費は年間120万円と高額だが、会社の次世代リーダー育成のため支援を決断。

実施内容:
・自発的職業能力開発経費負担制度を就業規則に規定
・社員が国内の社会人大学院(2年制MBAプログラム)に合格し、入学
・会社が学費の全額(年間120万円×2年)を負担
・訓練修了後、部長職への昇進とともに月給を5%引き上げ

受け取った助成金(賃金要件達成):
・1年目:60万円(限度額)×60% = 36万円
・2年目:60万円(限度額)×60% = 36万円
・合計:72万円

結果:
2年間で240万円の学費負担に対して72万円の助成を受け、実質負担は168万円。社員はMBAを取得し、新規事業立ち上げのプロジェクトリーダーとして活躍。投資に見合う成果が得られた。

ケース3:複数社員のオンライン学習支援(従業員20名の製造業C社)

背景:
社員から「プログラミングを学びたい」「Webデザインを勉強したい」など、様々なスキルアップの要望があったが、一人ひとり異なる研修を会社が用意するのは難しかった。

実施内容:
・自発的職業能力開発経費負担制度を就業規則に規定
・定額制オンライン学習サービス(月額2,000円)を10名が利用
・会社が利用料の全額を負担(月額2,000円×10名×6か月 = 12万円)
・各社員が自分の興味に応じて講座を選択(プログラミング、デザイン、マーケティングなど)

受け取った助成金:
・経費助成:2万円(限度額)×10名×6か月×45% = 5万4,000円
・実質負担:6万6,000円

結果:
少額の負担で多様な学びの機会を提供でき、社員の満足度が向上。営業部の社員がWebマーケティングを学び、自社サイトの改善提案をするなど、業務にも良い影響が出た。

ケース4:パート従業員の資格取得支援(従業員25名の小売業D社)

背景:
店舗で働くパート従業員(週30時間勤務、雇用保険加入)から「登録販売者の資格を取りたい」と相談を受けた。資格取得により店舗での医薬品販売が可能になるため、会社としても支援したいと考えた。

実施内容:
・自発的職業能力開発経費負担制度を就業規則に規定(雇用保険加入者全員を対象)
・パート従業員が登録販売者試験対策講座(受講料3万円)に自主的に申し込み
・会社が受講料の全額(3万円)を負担

受け取った助成金:
・経費助成:3万円×45% = 1万3,500円
・実質負担:1万6,500円

結果:
パート従業員が登録販売者試験に合格し、医薬品コーナーの責任者として活躍。他のパート従業員からも「自分も資格を取りたい」という声が上がり、店舗全体のスキルアップにつながった。パートやアルバイトも雇用保険に加入していれば対象となることが実証された。

助成対象外となったケース

ケース1:会社が一方的に指定した研修(自発的ではない)

背景:
営業成績が低迷している社員に対して、会社が「営業力強化研修を受講するように」と指示し、費用を会社が負担した。

なぜ対象外か:
自発的職業能力開発訓練は、労働者が「自発的に」受講することが前提です。会社が一方的に指示した研修は、たとえ自発的職業能力開発経費負担制度を規定していても対象外となります。

代替案:
会社が指示する研修であれば、「人材育成支援コース」や「事業展開等リスキリング支援コース」を活用しましょう。これらのコースでは、会社主導の訓練でも助成を受けることができます。

ケース2:経費負担制度を就業規則に規定していなかった

背景:
従業員から「資格を取りたい」と相談を受け、口頭で「受講料の半分を会社が負担する」と約束し、従業員が受講。しかし、就業規則には何も規定していなかった。

なぜ対象外か:
自発的職業能力開発訓練を受けるには、あらかじめ「自発的職業能力開発経費負担制度」を就業規則または労働協約に規定し、制度施行日までに労働基準監督署に届け出る必要があります。口頭での約束だけでは助成対象になりません。

代替案:
今すぐに自発的職業能力開発経費負担制度を就業規則に規定し、労働基準監督署に届け出ましょう。次回以降の訓練から助成を受けることができます。

ケース3:会社の負担が訓練費用の半分未満だった

背景:
従業員が10万円の講座を受講した。就業規則には「会社が受講料の50%を負担する」と規定しており、本人にもそのように説明していたが、実際の精算時には4万円(40%)しか負担しなかった。

なぜ対象外か:
自発的職業能力開発経費負担制度では、事業主が自発的職業能力開発経費の2分の1以上の額を負担することが要件です。就業規則に50%と定めていても、実際の負担額が2分の1未満であれば要件を満たしません。

代替案:
就業規則で定めた負担割合は必ず守り、実際の支払いでも50%以上を負担するようにしましょう。就業規則の内容と実際の運用に差が生じると、助成金が不支給になるだけでなく、従業員との信頼関係にも影響します。

ケース4:業務と全く関係のない趣味の習い事

背景:
従業員が「英会話を習いたい」と申し出たが、業務では英語を全く使わない。

なぜ対象外か:
自発的職業能力開発訓練は、「職業に必要となる知識や技能の習得をさせるための訓練」である必要があります。業務と全く関係のない趣味の習い事は対象外です。

ただし、将来的に英語を使う業務に携わる可能性がある、または自己啓発として職業能力の向上につながると判断できる場合は、対象となる可能性があります。判断に迷う場合は、管轄の都道府県労働局に相談しましょう。

代替案:
業務に直接関係する訓練(ビジネス英語、TOEIC対策など、業務で使う可能性がある内容)であれば、対象となる可能性が高まります。

4. 支給要件(複雑なルールを整理!)

(以下、人への投資促進コースのご案内P22、P23より引用)

自発的職業能力開発訓練の助成を受けるには、自発的職業能力開発経費負担制度の整備、訓練内容、訓練対象者、事業主のそれぞれについて、複数の要件を満たす必要があります。

自発的職業能力開発経費負担制度の要件

まず、就業規則または労働協約に「自発的職業能力開発経費負担制度」を規定する必要があります。この制度には、以下の5つの要件があります。

1. 雇用保険の被保険者を対象とした制度であること

被保険者を対象としたものであること(被保険者以外の者を対象に含めたものでも可)

正社員だけでなく、パート・アルバイトなど雇用保険に加入している社員であれば対象にできます。

2. 会社が訓練費用の2分の1以上を負担すること

事業主が、自発的職業能力開発経費の2分の1以上の額を負担するものであること

例えば、受講料が10万円の場合、会社は最低でも5万円以上を負担する必要があります。全額負担でも問題ありません。

3. 会社から社員に通貨で支払うこと

事業主が、通貨により直接当該被保険者に支払われるものであること(事業主が直接訓練機関に受講料等を支払う場合を除く。)

原則として、従業員が受講料を支払った後、会社が従業員に現金で補助する形になります。ただし、就業規則等の規定に基づき、会社が直接教育訓練機関に受講料を支払う場合も対象となります。

4. 就業規則に規定し、労働基準監督署に届け出ること

制度を規定した就業規則または労働協約を、制度施行日までに雇用する労働者に周知すること

就業規則については、制度施行日までに管轄する労働基準監督署へ届け出たものであること(常時10人未満の労働者を使用する事業主の場合、制度施行日までに事業主と労働組合等の労働者代表者による申立書を作成することでも可)

制度を作ったら、必ず労働基準監督署に届け出て、従業員に周知する必要があります。

5. 従業員が自発的に訓練を受講できる制度であること

被保険者が自発的職業能力開発として、訓練等を受講できるものであること

会社が一方的に「この研修を受けなさい」と指示するのではなく、従業員が自分で選んで受講できる制度である必要があります。

制度設計の柔軟性

なお、以下のような制度設計は可能です。

・対象労働者を限定すること(例:正社員のみ、勤続3年以上など)
・会社が労働者からの申請に対して審査をすること
・あらかじめ経費補助の対象とする訓練を限定すること(例:業務に関連する資格のみ)
・経費負担額の上限を設けること(例:年間10万円まで)

ただし、資格・試験の受験料のみを補助する制度や、独学のための書籍の購入費を補助する制度は対象外です。あくまで「訓練」の受講費用を補助する制度である必要があります。

訓練内容の要件

1. 自発的職業能力開発経費負担制度を利用した訓練であること

自発的職業能力開発経費負担制度を利用し、被保険者が自発的職業能力開発を行うために実施する訓練であること

就業規則に規定した制度に基づいて実施される訓練である必要があります。

2. 職業に必要な知識や技能を習得する訓練であること

職務を問わず、職業に必要となる知識や技能の習得をさせるための訓練であること

業務に直接関係する訓練だけでなく、将来的に業務に役立つ可能性のある訓練も対象となります。ただし、業務と全く関係のない趣味の習い事は対象外です。

3. OFF-JTであること

OFF-JTであること

座学(通学、オンライン、eラーニングなど)による訓練が対象です。OJT(実務訓練)は対象外です。

4. 実施方法が通学制、オンライン、eラーニング、通信制のいずれかであること

訓練の実施方法が、「通学制」、「同時双方向型の通信訓練」、「eラーニング」又は「通信制」のいずれかであること

対面での通学だけでなく、オンライン講座やeラーニングも対象となります。

5. 訓練時間が10時間以上であること

通学制・同時双方向型の通信訓練の場合:1コースあたりの実訓練時間数が10時間以上であること
eラーニング・通信制による訓練の場合:1コースあたりの標準学習時間が10時間以上であること、または標準学習期間が1か月以上であること

ただし、一般教育訓練等の指定講座の訓練の場合は、この要件は不要です。

6. 事業外訓練であること

外部の教育訓練機関が実施する訓練である必要があります。社内の研修は対象外です。

定額制サービスによる訓練を行う場合

UdemyやSchooなどの定額制オンライン学習サービスを利用する場合、各従業員が修了した教育訓練の受講時間数の合計が、支給申請時において10時間以上である必要があります。

海外大学院での訓練を行う場合

海外の大学院での訓練も可能です。その場合は、自発的職業能力開発訓練の要件に加えて、「成長分野等人材訓練(海外の大学院により実施される訓練)」の要件を満たす必要があります。

訓練対象者の要件

1. 雇用保険の被保険者であること

助成金を受けようとする事業所において、被保険者であること
訓練実施期間中において、被保険者であること

雇用保険に加入していることが前提となります。

2. 自発的に訓練を受講する意思があること

従業員が自分の意思で「この訓練を受けたい」と申し出て、受講することが必要です。会社が一方的に指示した訓練は対象外です。

事業主の要件

「対象となる事業主」に該当すること
助成金の支給を受けるための一般的な事業主要件(雇用保険適用事業所であること、訓練実施計画届の提出、事業内職業能力開発計画の作成、会社都合による離職者を出していないことなど)があります。

これらの共通要件については、別途「対象となる事業主」「対象とならない事業主」の記事で詳しく解説していますので、そちらをご確認ください。

[「対象となる事業主」「対象とならない事業主」の記事はこちら]

自発的職業能力開発経費負担制度を就業規則等に規定していること(重要)

前述の「自発的職業能力開発経費負担制度の要件」を満たす制度を、訓練開始前に就業規則または労働協約に規定し、労働基準監督署に届け出ている必要があります。

これは自発的職業能力開発訓練で最も重要な要件です。制度を整備していない場合は、まず制度を作成し、届け出ることから始めましょう。

以下のような場合、助成金は支給されません。

・訓練開始前に自発的職業能力開発経費負担制度を就業規則に規定していない
・訓練開始前に助成金の計画届を提出していない
・会社の負担が訓練費用の2分の1未満
・会社が一方的に指示した訓練(社員の自発的な申し出ではない)
・訓練期間中に対象労働者が退職した
・訓練期間中の賃金台帳や出勤簿、受講証明書などの書類が不備
・不正受給を行った事業主(過去5年以内)

これらの要件をすべて満たすことで、初めて助成金の支給対象となります。次の章では、実際の申請から受給までの流れを見ていきます。

5. 全体フロー(申請から受給までの流れ)

(以下、人への投資促進コースのご案内P22より引用)

自発的職業能力開発訓練の申請から受給までは、大きく6つのステップに分かれます。特に重要なのは、訓練開始前に制度を整備し、計画届を提出することです。

Step 1:自発的職業能力開発経費負担制度の整備(訓練開始前)

やるべきこと:

就業規則または労働協約に「自発的職業能力開発経費負担制度」を規定し、労働基準監督署に届け出ます。

制度には以下の内容を明記します。

・対象となる労働者(雇用保険の被保険者)
・会社が負担する経費の割合(訓練費用の2分の1以上)
・経費の支払い方法(通貨で直接労働者に支払う、または会社が訓練機関に直接支払う)
・労働者への周知方法

ポイント:
制度を作成したら、必ず労働者に周知しましょう。社内掲示板への掲載、社内メールでの通知、朝礼での説明など、周知した証拠を残しておくことが重要です。

Step 2:従業員からの訓練受講の申し出

やるべきこと:

従業員が自分で受講したい訓練を選び、会社に申し出ます。

会社は、就業規則で定めた制度に基づき、申請内容を審査し、承認・不承認を決定します。

ポイント:
従業員からの申し出であることが重要です。会社から「この研修を受けなさい」と指示した場合は、自発的職業能力開発訓練の対象外となります。

Step 3:訓練実施計画届の提出(訓練開始の1か月前まで)

やるべきこと:

訓練開始日の1か月前までに、管轄の都道府県労働局に以下の書類を提出します。

・職業訓練実施計画届(様式第1-1号)
・訓練カリキュラム
・経費負担制度を規定した就業規則の写し
・その他必要書類

ポイント:
訓練開始後の事後申請は認められません。従業員が訓練を申し込む前に、余裕を持って計画届を提出しましょう。

Step 4:従業員による訓練の受講と費用支払い

やるべきこと:

従業員が自分で教育訓練機関に申し込み、訓練を受講し、受講料を支払います。

訓練期間中は、以下の書類を保管します。

・受講証明書(修了証)
・領収書・請求書
・訓練カリキュラム

ポイント:
原則として、従業員本人が教育訓練機関に受講料を支払い、後から会社が補助する流れになります。ただし、就業規則等の規定に基づき、会社が直接訓練機関に受講料を支払う場合も対象となります。

Step 5:会社から従業員への経費補助

やるべきこと:

訓練修了後、会社が従業員に対して、就業規則で定めた割合(2分の1以上)の経費を補助します。

ポイント:
通貨で直接労働者に支払う必要があります。給与と一緒に振り込むなど、支払った証拠を残しておきましょう。

Step 6:支給申請(訓練修了日の翌日から2か月以内)

やるべきこと:

訓練修了後、以下の書類を管轄の都道府県労働局に提出します。

・支給申請書(様式第4号)
・訓練実施結果報告書
・経費助成の支給対象となる経費の領収書・請求書
・受講証明書(修了証)
・会社から従業員への経費補助の支払証明(給与明細など)
・その他必要書類

提出期限:訓練修了日の翌日から2か月以内

ポイント:
支給申請の期限は厳格です。2か月を過ぎると原則として支給されませんので、訓練修了後は速やかに書類を準備しましょう。

よくある失敗パターンと対策

失敗パターン1:制度を整備せずに訓練を開始してしまった

→ 対策:訓練開始前に必ず自発的職業能力開発経費負担制度を就業規則に規定し、労働基準監督署に届け出ましょう。

失敗パターン2:会社の負担が訓練費用の半分未満だった

→ 対策:就業規則で「訓練費用の2分の1以上を会社が負担する」と明記し、実際にも50%以上を負担しましょう。

失敗パターン3:計画届の提出を忘れた

→ 対策:従業員から訓練受講の申し出があったら、すぐに計画届の準備を始めましょう。訓練開始の1か月前までに提出が必要です。

次の章では、申請時によくある質問をまとめています。

6. よくある質問(Q&A)

Q1. 既に就業規則に資格取得支援制度がありますが、自発的職業能力開発経費負担制度として認められますか?

A. 内容が要件を満たしていれば認められます。
既存の制度が、①雇用保険の被保険者を対象としている、②会社が訓練費用の2分の1以上を負担する、③通貨で労働者に支払う、④就業規則に規定されている、⑤従業員が自発的に訓練を受講できる、という5つの要件を満たしていれば、自発的職業能力開発経費負担制度として活用できます。
ただし、制度の内容が要件を満たしていない場合は、就業規則を改定する必要があります。

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Q2. 従業員全員を対象にせず、正社員のみや勤続3年以上の従業員のみを対象にすることはできますか?

A. 可能です。
法令の範囲内で、対象労働者を限定することは認められています。例えば、「正社員のみ」「勤続3年以上」「部長職以上」などの条件を設けることができます。

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Q3. 会社が受講できる訓練の種類を限定することはできますか?

A. 可能です。
あらかじめ経費補助の対象とする訓練を限定することができます。例えば、「業務に関連する資格取得講座のみ」「会社が認めた講座のみ」などの条件を設けることができます。
ただし、あまりに限定しすぎると、社員の自発的な学びを阻害することになるため、バランスを考えましょう。

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Q4. 受講料の上限を設けることはできますか?

A. 可能です。
経費負担額の上限を設けることができます。例えば、「年間10万円まで」「1講座につき5万円まで」などの上限を設定できます。

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Q5. 社員が訓練を途中で辞めた場合、助成金はどうなりますか?

A. 原則として、訓練を修了していない場合は助成対象外となります。
ただし、やむを得ない理由(病気、怪我など)により訓練を中断した場合は、個別に判断されることがあります。管轄の都道府県労働局に相談しましょう。

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Q6. 業務時間中に訓練を受けた場合も対象になりますか?

A. 原則として対象外です。
自発的職業能力開発訓練は、労働時間以外において労働者の申し出により実施される自発的な訓練が対象です。業務時間中に会社の指示で受講する訓練は、「人材育成支援コース」や「事業展開等リスキリング支援コース」を活用しましょう。

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Q7. 複数の社員が同じ訓練を受講することはできますか?

A. 可能です。
複数の社員がそれぞれ自発的に同じ訓練を受講することは問題ありません。ただし、会社が一方的に「この研修を全員受けるように」と指示した場合は対象外となります。

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Q8. 賃金要件を満たすには、訓練修了後いつまでに賃金を引き上げる必要がありますか?

A. 訓練修了後の賃金改定前後の賃金を比較して判断されます。
具体的には、訓練修了日の翌日から起算して3か月以内に賃金改定を行い、改定前後の賃金を比較して5%以上上昇していることが必要です。

7. まとめ

自発的職業能力開発訓練は、従業員が「学びたい」と自主的に申し出た訓練の費用を会社が支援する場合に、助成金で訓練費用の45〜60%を取り戻すことができる制度です。

この制度を使えば、従業員から「簿記の資格を取りたい」「プログラミングを学びたい」「MBAを取得したい」と相談を受けたとき、会社が費用の半分以上を負担しても、助成金により実質的な負担を軽減できます。簿記2級の講座(受講料5万円)なら、会社が全額負担しても実質2万7,500円で済み、社会人大学院(2年間で学費240万円)なら、72万円の助成を受けることができます。

さらに、この制度はパートやアルバイトなど、雇用保険に加入している従業員であれば誰でも対象となるため、幅広い従業員のスキルアップを支援できます。

ただし、この制度を活用するには、訓練開始前に「自発的職業能力開発経費負担制度」を就業規則に規定し、労働基準監督署に届け出ることが必須です。「従業員が自分で選んだ研修費用の半分以上を会社が負担する」というルールを就業規則に明記することで、従業員に対して「会社はあなたの学びを応援している」というメッセージを伝えることができ、従業員のエンゲージメント向上にもつながります。

まずは、自社で活用できそうか、就業規則に制度を追加できるかを検討することから始めましょう。制度を整備しておけば、従業員から学びたいという声が上がったときに、すぐに助成金を活用できます。

要件が複雑で自社が対象になるか判断が難しい場合や、就業規則の作成に不安がある場合は、助成金に詳しい社会保険労務士へご相談されることをおすすめします。


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