【人材開発支援助成金(人への投資促進コース)】とは?サブスク・AI・DXなど幅広く使える期間限定の助成金!制度の全体像をわかりやすく解説します


社内のITスキルをもっと底上げしたいが、専門的なデジタル研修は費用が高くて踏み出せない。月額定額で使い放題の研修サービスを導入したいが、会社の負担が大きい。従業員が自分でセキュリティ資格を取りたいと言っているが、費用を会社で負担してよいか迷っている。

そんな場面で活用できるのが「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)」です。

令和4〜8年度の期間限定コースで、国民からの提案をもとに設けられた5つの訓練メニューがあります。

「人材育成支援コース」と比べて助成率が高く設定されており、特にデジタル・IT人材の育成や、従業員の自発的な学びへの支援に特化した内容です。

こんな企業におすすめ!

・高度なITスキルやデジタル技術(DX)を社員に習得させたい
・「Udemy」や「Schoo」などの定額制(サブスク)動画研修を導入したい
・IT未経験者を雇用して、働きながら即戦力のエンジニアに育てたい
・従業員が自ら「学びたい」と希望した時の支援制度を作りたい

1. 人への投資促進コースとは?

人への投資促進コースは、令和4〜8年度の期間限定で設けられた人材開発支援助成金のコースです。

人材育成支援コースが「職務に関連した訓練全般」を対象とする恒常的な制度であるのに対し、このコースは「デジタル・IT人材の育成」や「従業員の自発的な学び」など、特定の目的に特化した訓練を高い助成率で支援します。

例えば、社内のシステム担当者に情報処理安全確保支援士(セキュリティ資格)の取得講座を受けてもらう、月額定額の動画学習サービスを全社員に導入する、従業員が自分で選んだ資格スクールの費用を会社が負担するといった場合がこのコースの対象です。

1事業所・1年度あたりの助成上限額は2,500万円(成長分野等人材訓練は1,000万円)と大きく設定されています。
令和8年度末で終了する期間限定コースのため、活用を検討している場合は早めの準備をお勧めします。

2. 5つのメニューと選び方のポイント

「人への投資促進コース」には、目的に応じて5つのメニューが用意されています。自社の課題に合うメニューを確認し、詳細記事で要件をチェックしてください

メニュー対象経費助成率(中小企業)
①高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練ITSSレベル3・4の訓練、大学院での訓練75%
②情報技術分野認定実習併用職業訓練IT分野未経験者へのOJT+OFF-JT訓練60%
③定額制訓練サブスクリプション型研修サービス60%
④自発的職業能力開発訓練従業員が自発的に受講した訓練費用の補助45%
⑤長期教育訓練休暇等制度長期休暇・時短勤務制度の導入制度導入20万円+賃金助成

① 高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練

ITスキル標準(ITSS)またはDX推進スキル標準(DSS-P)のレベル3・4相当の高度なデジタル人材を育成するための訓練、または国内外の大学院での訓練が対象です。助成率75%と最も高く設定されています。資格取得のための受験料も助成対象になります。

対象高度デジタル人材の育成訓練、大学院での訓練など
特徴経費助成率が 最大75%
活用例・AI、データサイエンス、セキュリティ技術などの高度IT研修を受けさせる。
・社会人大学院(国内・海外)に通学し、MBAや修士号を取得してもらう。

👉 詳しい要件・申請方法は「高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練」の記事で解説しています。

② 情報技術分野認定実習併用職業訓練

IT分野未経験者を即戦力化するために、OJT(職場実習)とOFF-JT(座学・外部研修)を組み合わせた訓練を6か月〜2年間実施する場合に助成されるメニューです。
厚生労働大臣の認定が必要で、資格取得費用も対象になります。

人材育成支援コースの「認定実習併用職業訓練」と仕組みは同様ですが、IT分野専用のメニューとして経費助成率が高く設定されています(認定実習併用職業訓練の45%に対し、情報技術分野認定実習併用職業訓練は60%)

対象IT分野未経験者(15歳以上45歳未満など年齢要件あり)
特徴外部研修費用の助成に加え、OJTも対象
活用例未経験で採用した若手社員に対し、システム開発の実務指導とプログラミングスクールへの通学をセットで行う

👉 詳しい要件・申請方法は「情報技術分野認定実習併用職業訓練」の記事で解説しています

③ 定額制訓練

月額定額で複数の訓練が受け放題のサブスクリプション型研修サービスを会社が契約し、従業員に受講させた場合に助成されるメニューです。
eラーニングや同時双方向型のオンライン研修が対象で、1人1か月あたり2万円を上限に経費の60%が助成されます。

対象サブスクリプション型の研修サービス(eラーニング等)
特徴複数の従業員が、定額で好きな講座を選んで受講できます。
活用例従業員のデジタルリテラシー向上のため「Udemy Business」や「Schoo」などを導入し、業務時間内に学習してもらう。

👉 詳しい要件・申請方法は「定額制訓練」の記事で解説しています

④ 自発的職業能力開発訓練

従業員が自分の意思で外部の研修や資格スクールに通い、その費用を会社が全部または一部負担した場合に助成されるメニューです。業務命令ではなく従業員の自発的な学びを支援することが条件で、就業規則に「自発的職業能力開発経費負担制度」を定める必要があります。

対象労働者が自発的に受講した訓練費用
特徴会社からの業務命令ではなく、本人の意思によるスキルアップを支援します。
活用例社員から「このセミナーに行きたい」と申請があり、会社が費用を補助する制度を運用する。

👉 詳しい要件・申請方法は「自発的職業能力開発訓練」の記事で解説しています。

⑤ 長期教育訓練休暇等制度(〜令和9年3月)

30日以上の長期教育訓練休暇制度や、所定労働時間の短縮制度を就業規則に定め、実際に従業員に適用した場合に助成されるメニューです。有給で付与した場合は賃金助成(1人1時間あたり1,000円)も受けられます。

対象30日以上の長期休暇、または短時間勤務制度など
特徴研修費用ではなく、制度導入時の経費(20万円)や、休暇中の賃金などが助成されます。
活用例社員が資格取得のために1ヶ月休職して勉強に専念できる制度を作り、実際に取得してもらう。

👉 詳しい要件・申請方法は「教育訓練休暇制度・長期教育訓練休暇制度・教育訓練短時間勤務等制度」の記事をご覧ください(記事6)

3. いくらもらえる? 助成率・助成額(中小企業)

3.助成内容(金額・助成率)

各メニュー共通の助成率・助成額の目安は以下の通りです(中小企業の例)

経費助成

研修にかかった入学料や受講料などが戻ってきます。
正規・非正規雇用に関わらず支給されます。
長期教育訓練休暇等制度については、制度導入に対して20万円(24万円)が支給されます。

メニュー経費助成率賃上げ等加算時経費助成の上限額(1人あたり)
①高度デジタル人材訓練75%加算なし(高率固定)100時間未満30万円〜200時間以上50万円
①成長分野等人材訓練75%加算なし(高率固定)国内大学院150万円/年、海外500万円/年
②情報技術分野認定実習併用職業訓練60%75%(+15%)100時間未満15万円〜200時間以上50万円
③定額制訓練60%75%(+15%)1人1か月あたり2万円
④自発的職業能力開発訓練45%60%(+15%)100時間未満7万円〜大学院60万円/年
⑤ 長期教育訓練休暇等制度20万円(制度導入経費として)20万円(制度導入経費として)1回限り

賃金助成・OJT実施助成

メニュー賃金助成(1人1時間あたり)OJT実施助成(1人1コースあたり)
①高度デジタル人材訓練1,000円なし
①成長分野等人材訓練(国内大学院)1,000円なし
②情報技術分野認定実習併用職業訓練800円(+200円)20万円(+5万円)
③定額制訓練なしなし
④自発的職業能力開発訓練なしなし
⑤長期教育訓練休暇制度(有給のみ)1,000円なし

※()内は賃上げ等加算時の加算額

助成限度額:(1事業所・1年度あたり)

無制限にもらえるわけではなく、以下の通り「2つの枠(財布)」で上限が決まっています。

【枠①:2,500万円】以下のメニューの合計額
以下の4つのメニューは、すべて合わせて1事業所・1年度あたり2,500万円が上限です。

・高度デジタル人材訓練
・定額制訓練
・情報技術分野認定実習併用職業訓練
・長期教育訓練休暇等制度
・自発的職業能力開発訓練(※このメニュー単独では300万円が上限です)

【枠②:1,000万円】以下のメニュー単独

・成長分野等人材訓練(大学院での訓練など)
1事業所・1年度あたり1,000万円が上限となります。

具体的な計算例(同じ年度内に行う場合)

ケースA:枠内で収まる場合(全額支給)

内容:同じ年度内で「高度デジタル(1,000万円)」+「定額制(500万円)」を実施した。合計金額:1,500万円
計算:どちらも「枠①2,500万円」の枠なので、この枠内に収まるかどうか計算する。
2,500万円 > 1,500万円 →○
――――――――――――――――――――
【判定】 2,500万円以内なので、全額支給されます。

ケースB:枠をオーバーする場合(カットされる)

内容:同じ年度内で「高度デジタル(2,000万円)」+「定額制(1,000万円)」を実施した。合計金額:3,000万円
計算:どちらも「枠①2,500万円」の枠なので、この枠内に収まるかどうか計算する。
2,500万円 < 3,000万円 →×
――――――――――――――――――――
【判定】 2,500万円を超えているため、超過分の500万円分は支給されません(支給額は2,500万円まで)

ケースC:別枠を利用する場合(合算して多くもらえる)

内容:同じ年度内で「高度デジタル(2,000万円)」+「成長分野(大学院)(800万円)」を実施した。合計金額:2,800万円
計算:高度デジタルは【枠①】、大学院は【枠②】で計算します。

2,500万円 > 2,000万円 →○
1,000万円 >  800万円 →○
――――――――――――――――――――

【判定】 それぞれの枠内に収まっているため、合計2,800万円が全額支給対象となります。

このように、基本的には「人への投資促進コース全体で2,500万円」ですが、「大学院に通う訓練(成長分野)」だけは別枠でカウントされると覚えておくと間違いありません。

4. 申請の流れ(共通)

どのメニューを利用する場合でも、基本的な申請の流れは共通しています。
特に「計画届」の提出タイミングには注意が必要です。

STEP1:社内準備

職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定・周知を行います。
高度デジタル人材訓練の場合は、DX推進指標の自己診断や事業適応計画の認定など、事業主要件を満たすための事前準備が必要です。

STEP2:計画届の提出

訓練開始日(定額制訓練は契約期間の初日)の6か月前から1か月前までの間に、「職業訓練実施計画届(様式第1-1号)」を管轄の都道府県労働局へ提出します。(例:4月1日から訓練開始したい場合、2月末日までに提出が必要です)

※もし期限に遅れてしまったら?
1日でも遅れると、予定していた開始日での申請は一切受け付けてもらえません。
この場合は「訓練開始日を後ろにずらす(1か月以上先の日程に変更する)」ことで、期限内提出の要件を満たすように計画を修正し提出しましょう。

STEP3:訓練の実施

計画届の内容に沿って訓練を実施します。受講を証明する修了証などは必ず保管してください。
支給申請日までに訓練にかかった経費を全額支払っておく必要があります。

STEP4:支給申請

最後に、助成金をもらうための申請を行います。

• 提出期限
訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に支給申請書と必要書類を労働局へ提出します(例:6月30日に訓練が終了した場合、8月31日が提出期限です)

• 審査と支給
労働局による審査(数か月から半年程度かかります)を経て、問題がなければ「支給決定通知書」が届き、指定口座に助成金が振り込まれます。

メニューによる手続きの違い
②情報技術分野認定実習併用職業訓練は、計画届の前に厚生労働大臣の認定申請(訓練開始30日前まで)が必要です。
⑤長期教育訓練休暇等制度は、計画届ではなく「制度導入・適用計画届」の提出が必要で、手続きの流れが他のメニューと異なります。詳しくは各記事をご確認ください。

5. Q&A

Q1. 人材育成支援コースと人への投資促進コース、どちらを使えばよいですか?

訓練の内容と目的によって使い分けます。
ITスキル標準レベル3・4の高度デジタル人材育成、サブスク型研修サービスの活用、従業員の自発的な学びへの費用補助などが目的であれば、高い助成率が設定されている人への投資促進コースが有利です。

一方、正規・非正規を問わず幅広い職務関連研修を継続的に実施したい場合は、期限のない人材育成支援コースが適しています。
なお、人への投資促進コースは令和8年度末で終了するため、活用を検討している場合は早めに計画を立てることをお勧めします。

Q2. 複数のメニューを同時に申請できますか?

はい、要件を満たせば複数メニューの同時申請が可能です。
ただし、1事業所・1年度あたりの助成上限額(人への投資促進コース全体で2,500万円)の範囲内となります。
また、③定額制訓練と④自発的職業能力開発訓練を合わせた定額制サービスによる訓練の受講は、1人につき1年度3回までの制限があります。

Q3. 複数の事業所を持つ場合、事業所ごとに申請できますか?

はい、事業所ごとに申請できます。
ただし、定額制訓練の場合は複数の事業所に係る申請を「主たる適用事業所」にまとめて提出する必要があります。
助成上限額(2,500万円)も「1事業所・1年度あたり」で計算され、他の事業所分の支給額は主たる適用事業所において計上されます。

6. まとめ

人材開発支援助成金「人への投資促進コース」は、企業のDX対応や社員の自律的なキャリア形成を強力にバックアップする制度です。
特にITスキルの底上げやデジタル変革を進めたい企業にとっては活用価値の高いコースです。

人材開発支援助成金は、手順さえ守れば、従業員の成長と会社のコスト削減を同時に叶える強力なツールです。 まずは社内で「誰に」「どんなスキルを」身につけさせたいか話し合うところから始めてみませんか?

令和8年度末の終了まで残り少なくなっています。
活用を検討している場合は計画届の提出期限(訓練開始1か月前)を逆算して早めに動き出すことが重要です。要件の確認や計画届の作成でお困りの場合は、都道府県労働局・ハローワーク、または社会保険労務士にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください

※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。助成金の支給要件は変更されることがあるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。

【参照資料】
厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内(令和8年度版)」
厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内(詳細版)」
厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース(長期教育訓練休暇制度))改正のご案内(令和8年4月)」

👉 厚生労働省:人材開発支援助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)



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