「社内でAIやデータサイエンスを扱えるエンジニアを育てたいが、専門的な研修は受講料が数十万円もするため導入に踏み切れない」
「幹部候補の社員を働きながら大学院(MBAなど)に通わせたいが、学費と業務の調整がネックになっている」
「社内の技術力が古くなっており、最新のクラウド技術やセキュリティに対応できる人材が不足している」
専門性の高い技術研修や大学院への通学は、一般的なビジネスマナー研修などに比べて費用が高額になりがちで、中小企業にとっては決して小さくない投資です。
こうした”高度な人材育成”を行う企業を対象に、訓練経費の 最大75% を助成する制度が、人材開発支援助成金(人への投資促進コース)の 「高度デジタル人材訓練」 と 「成長分野等人材訓練」 です。
本コースは、国が推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)や成長分野への労働移動を後押しするために設計されており、他のコースと比較しても高い助成率が設定されています。さらに、令和7年(2025年)4月からは、研修期間中の賃金助成額が ”1人1時間あたり1,000円” (中小企業の場合)に引き上げられ、企業の実質的な負担はさらに軽減されました。
この記事では、DXの推進や次世代リーダーの育成をお考えの経営者様に向けて、この高率助成コースの具体的な仕組みと、活用するための要件を分かりやすく解説します。
1.そもそも「高度デジタル・成長分野」の訓練とは?
一言で言えば、このコースは ”国が最も力を入れているハイレベルな教育に対し、特例的に高い助成金を出す制度” です。
通常の人材育成(新入社員研修や職種別研修など)に対する助成率は45%程度ですが、このコースでは 最大75% という非常に高い助成率が設定されています。なぜなら、ここでの対象は「現場の作業を覚えるための訓練」ではなく、”企業の未来を切り拓くコア人材(高度専門職や経営幹部候補)を育てるための投資” だからです。
具体的には、以下の2つの柱で構成されています。
【高度デジタル人材訓練】
”社内のエンジニアを、IT専門家へ”
一般的なPC操作やプログラミングの基礎ではなく、AI(人工知能)、クラウド、セキュリティ、データサイエンスといった、これからのビジネスに不可欠かつ”高度なデジタル技術”を習得させるための訓練です。
つまり、単なる「IT担当者」ではなく、DXを推進できる「専門家」を育てるための制度です。
【成長分野等人材訓練】
”社員を大学院へ送り出し、経営や技術のプロへ”
国内・海外の大学院(修士・博士課程)に通わせ、長期的な視点で高度な知識を習得させるための訓練です。MBA(経営学修士)の取得や、最先端の研究を行うための通学が対象です。
つまり、働きながら大学院で学び直し(リスキリング)をさせ、次世代のリーダーや研究者を育てるための制度です。
【この制度の最大のメリット】
大学院の学費や高度なIT研修の受講料は、数十万円〜数百万円と高額になりがちです。中小企業単独では負担が重いこの”未来への投資”を、国が費用の3/4(75%)を負担することで強力に後押しする。それがこのコースの本質です。
2.いくらもらえる?【助成額と助成率】
本コースは、国の成長戦略分野であるため、他のコースと比較して高い助成率が設定されています。 特に中小企業に対しては、訓練経費の75%が助成されるほか、訓練期間中の賃金に対する助成も手厚くなっています。
経費助成(受講料などの補助)
研修機関や大学院に支払う費用に対して助成されます。
助成率:75% (100万円の研修コースを契約した場合、75万円が国から振り込まれ、会社の実質負担は25万円で済むということです)
対象となる経費 入学料、受講料、教科書代 資格試験の受験料(※訓練終了後、指定された期間内に受験した場合)
賃金助成(研修時間の給与補助)
社員が業務を離れて研修を受けている時間(労働時間)に対して助成されます。
助成額:1人1時間あたり 1,000円 (1日8時間の研修を10日間受けさせた場合、80時間×1,000円=8万円が会社に助成されるということです)
支給限度額(1事業所・1年度あたり)
無制限にもらえるわけではなく、以下の通り「2つの枠(財布)」で上限が決まっています。
【枠①:2,500万円】以下のメニューの合計額
以下の4つのメニューは、すべて合わせて1事業所・1年度あたり2,500万円が上限です。
・高度デジタル人材訓練★この記事で紹介している訓練
・定額制訓練
・情報技術分野認定実習併用職業訓練
・長期教育訓練休暇等制度
・自発的職業能力開発訓練(※このメニュー単独では300万円が上限です!)
【枠②:1,000万円】以下のメニュー単独
・成長分野等人材訓練(大学院での訓練など)★この記事で紹介している訓練
1事業所・1年度あたり1,000万円が上限となります。
具体的な計算例(同じ年度内に行う場合)
ケースA:枠内で収まる場合(全額支給)
内容:同じ年度内で「高度デジタル(1,000万円)」+「定額制(500万円)」を実施した。合計金額:1,500万円
計算:どちらも「枠①2,500万円」の枠なので、この枠内に収まるかどうか計算する。
2,500万円 > 1,500万円 →○
――――――――――――――――――――
【判定】 2,500万円以内なので、全額支給されます。
ケースB:枠をオーバーする場合(カットされる)
内容:同じ年度内で「高度デジタル(2,000万円)」+「定額制(1,000万円)」を実施した。合計金額:3,000万円
計算:どちらも「枠①2,500万円」の枠なので、この枠内に収まるかどうか計算する。
2,500万円 < 3,000万円 →×
――――――――――――――――――――
【判定】 2,500万円を超えているため、超過分の500万円分は支給されません(支給額は2,500万円まで)
ケースC:別枠を利用する場合(合算して多くもらえる)
内容:同じ年度内で「高度デジタル(2,000万円)」+「成長分野(大学院)(800万円)」を実施した。合計金額:2,800万円
計算:高度デジタルは【枠①】、大学院は【枠②】で計算します。
2,500万円 > 2,000万円 →○
1,000万円 > 800万円 →○
――――――――――――――――――――
【判定】 それぞれの枠内に収まっているため、合計2,800万円が全額支給対象となります。
このように、基本的には「人への投資促進コース全体で2,500万円」ですが、「大学院に通う訓練(成長分野)」だけは別枠でカウントされると覚えておくと間違いありません。
3.金額入り事例【”成功”と”失敗”のケーススタディ】
「75%助成」や「時給1,000円の賃金助成」といっても、実際にどれくらいの金額が戻ってくるのかイメージしづらいかもしれません。 ここでは、中小企業における具体的な活用モデルを2つご紹介します。
ケース1:システム開発会社(AIエンジニアの育成)
状況 従業員20名のWebシステム開発会社。顧客から「AI(人工知能)を組み込んだシステム開発」の要望が増えてきたが、社内にノウハウがない。そこで、若手エンジニア1名に専門的なAI技術を習得させ、新事業の柱にしたいと考えた。
活用した訓練 メニュー:高度デジタル人材訓練 内容:経済産業大臣認定の「第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)」のAI実装コース(通学・オンライン併用)を受講。 期間:3ヶ月(講義と演習で計120時間) 費用:受講料 50万円
助成額の試算(見込み)
1. 経費助成:50万円 × 75% = 37万5,000円
2. 賃金助成:1,000円 × 120時間 = 12万円 助成金合計:”49万5,000円” 会社の実質負担:50万円(受講料) + 研修中の賃金 – 49万5,000円 ≒ ”ほぼ研修費相当をカバー”
結果 会社は金銭的な負担を極限まで抑えつつ、社員に最先端のAI技術を習得させることに成功。エンジニア本人も「会社が自分のキャリアに投資してくれた」とモチベーションが向上し、新たなAI案件の受注リーダーとして活躍している。
ケース2:製造業(幹部候補の大学院通学)
状況 創業40年の部品メーカー(従業員50名)。次期社長候補である専務(40代)に、最新の経営理論と技術経営(MOT)を学ばせるため、働きながら国内の社会人大学院に通わせたい。
活用した訓練 メニュー:成長分野等人材訓練 内容:国内大学院の修士課程(2年間)への通学。 費用:入学金・授業料など2年間で 200万円
助成額の試算(見込み)
1. 経費助成:200万円 × 75% = 150万円 ※国内大学院の上限は”年間150万円”のため、2年間で最大300万円まで枠があり、全額75%計算が可能。
2. 賃金助成:業務時間内に通学した時間(講義時間)に対して支給。 例:2年間で400時間通学した場合 = 1,000円 × 400時間 = 40万円 助成金合計:”190万円” 会社の実質負担:200万円 – 190万円 = ”10万円” (+通学中の賃金負担)
結果 個人で負担するには重すぎる学費の大部分を会社(助成金)がカバー。本人は業務と学業を両立しながら修士号を取得し、学んだ経営戦略を自社の事業計画に反映させている。
ケース3:従業員が個人で研修を申し込みをした場合
社員が自分で見つけたAIセミナー(20万円)に申し込み、支払いも済ませた。その後、会社に事後報告してきた。
判定:不支給 理由: この助成金は、会社が「事業内職業能力開発計画」に基づいて主体的に企画し、費用を負担する訓練が対象です。社員個人が勝手に申し込み・支払いをしたものは、たとえ後から会社が費用を補填しても対象外となります。必ず”計画届を提出してから”申し込むようにしてください。
4.「高度デジタル人材訓練」の支給要件

高率助成を受けるためには、以下の「事業主」「労働者」「訓練」の3つの要件をすべて満たす必要があります。
事業主の要件
助成金を受けようとする事業主は、次の①および②に該当する必要があります。
① 「対象となる事業主」に該当すること
「対象なる事業主」とは、具体的には以下の条件をすべて満たした事業主のことです(パンフレットP30「対象となる事業主」参照)
・雇用保険に入っていること:まず大前提として、従業員を雇い、会社として雇用保険に加入している事業所であることが必要です。
・人材育成の計画を作って社員に知らせていること:「我が社はどのような人材を育てたいか」という方針をまとめた計画書(事業内職業能力開発計画)を作り、従業員代表の意見を聞いた上で、社員全員に知らせている必要があります。
・「育成担当リーダー」を決めていること:社内で研修や人材育成を取り仕切る責任者として、「職業能力開発推進者」を1名選んでおく必要があります(役員や部課長などが一般的です)
・会社都合の解雇(リストラ)をしていないこと:計画届を提出する日の「6か月前」から申請日までの間に、解雇や退職勧奨など、会社都合で社員を辞めさせていないことが重要です。
・離職者の割合が高すぎないこと:上記④と同じ期間に、会社都合などで離職した人の数が、全社員の6%を超えていない必要があります(ただし、離職者が3人以下の場合は問題ありません)。
・研修中も給料をきちんと払っていること:業務扱いの研修を受けている時間は「労働時間」ですので、通常通りの給与(残業代含む)を支払っている必要があります。
・過去に研修を受けた人が大量に辞めていないこと:もし過去にこの助成金を使ったことがある場合、その研修を受けた人の「半数以上」が短期間で辞めてしまっているような状況だと、今回は申請できません。
・書類を整理し、5年間保存すること:タイムカードや賃金台帳など、審査に必要な書類をきちんと整理し、支給が決まった後も5年間は捨てずに保存しておく義務があります。
・審査や調査に協力すること:労働局から「追加の書類を出してください」と言われたり、実地調査が入ったりした際に、素直に協力する必要があります。協力しないと不支給になります。
② 「次の1~4のいずれかに該当すること」 (パンフレットP8・P56より引用)
1. 「主たる事業が日本標準産業分類の大分類の『情報通信業』であること」
ソフトウェア業、情報処理サービス業、インターネット附随サービス業などが該当します。
2. 「産業競争力強化法に基づく事業適応計画(情報技術事業適応)の認定を受けていること」
いわゆる「DX投資促進税制(デジタル化のための設備投資等を行った企業に対し、税額控除や特別償却を認める国の制度)」の適用を受けるために必要な計画認定のことです。
3. 「独立行政法人情報処理推進機構(IPA)からDX認定を受けていること」
いわゆる「DX認定制度(国が『この会社はデジタル変革の準備が整っている』と認める制度)」の認定を取得している状態です。
4. 「DX推進指標を用いて、経営幹部、事業部門、IT部門などの関係する者で自己診断を行い、IPAにこの指標を提出するとともに、この自己診断を踏まえた『事業内職業能力開発計画』を作成していること」
★IT企業以外で最も活用しやすい選択肢です。
特別な認定を受けていなくても、以下の手順を踏めば要件を満たせます。
1. IPA(情報処理推進機構)が公開している「DX推進指標」のシートをダウンロードし、自社の状況を自己診断する。
2. 診断結果をIPAのWebサイト(DX推進ポータル)から提出する(Web申請)。
3. 提出した診断結果の内容を踏まえて、社内の人材育成計画(事業内職業能力開発計画)を作成または更新する。
労働者の要件
訓練を受ける労働者は、次の要件を満たす必要があります。
「対象となる労働者」に該当すること
「対象となる労働者」とは、具体的には、以下の条件をすべて満たした事業主のことです(パンフレットP32「対象となる労働者」より引用)
・雇用保険の被保険者であること:当然ですが、申請する会社の「雇用保険」に加入している従業員であることが必須です。正社員だけでなく、条件を満たして雇用保険に入っている契約社員やパートタイマーも対象になります。一方で、雇用保険に入れない「会社役員(取締役など)」や「個人事業主」は対象外です。
・訓練実施期間中において被保険者であること:訓練の途中で退職して雇用保険の資格を喪失した場合は、原則として支給対象外となります。
・「対象労働者一覧」(様式第3-1号)に記載されている被保険者であること:訓練を始める前に労働局へ提出する計画届(の添付書類)に、名前が載っている人だけが助成金の対象になります。 「急遽、参加できなくなったAさんの代わりにBさんを参加させた」という場合、Bさんが事前に計画届に追加変更されていなければ、Bさんの分は助成金が出ません(事後報告は認められません)
・受講要件(通学制・同時双方向型の通信訓練の場合) 「実訓練時間数の8割以上受講していること」
大学院への通学や、Zoom等を使ったライブ研修の場合、出席率が厳格に求められます。 例えば、全100時間のカリキュラムであれば、遅刻や早退、欠席を除いて「80時間以上」出席していなければなりません。仕事が忙しくて欠席した場合でも、8割を下回るとその社員分の助成金は全額不支給(0円)となります。
・受講要件(eラーニング・通信制による訓練、海外の大学院の場合) 「訓練実施期間中に訓練を修了した者であること」 解説 オンデマンド型のeラーニングや海外大学院への留学など、出席時間の管理が難しい形式の場合、「期間内に最後まで終わらせたか(卒業・修了したか)」が基準になります。 eラーニングであれば「修了証の発行」、大学院であれば「学位の取得」や「単位修得の証明」など、客観的に修了が証明できる状態になることが必須です。途中で投げ出したり、期間内に終わらなかった場合は対象外です
訓練の要件
以下の①~⑤のすべてに該当する訓練である必要があります。(パンフレットP8より引用)
① 「職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練『職務関連訓練』であること」
② 「OFF-JTであること」
③ 「訓練の実施方法が、『通学制』、『同時双方向型の通信訓練』、『eラーニング』又は『通信制』のいずれかであり、次の1又は2のいずれかに該当すること」 (パンフレットP8より引用)
1. 「1コースあたりの実訓練時間数が職業訓練実施計画届の届け出時及び支給申請時において10時間以上であること(通学制・同時双方向型の通信訓練の場合)」
2. 「1コースあたりの標準学習時間が10時間以上であること又は1コースあたりの標準学習期間が1か月以上であること(eラーニング・通信制による訓練等の場合)」
④ 「『事業外訓練』であること(※一部『事業内訓練』も可)」
⑤ 「高度デジタル人材訓練の場合、次のいずれかの訓練であること」
1. 「高度情報通信技術資格(ITスキル標準(ITSS)・DX推進スキル標準(DSS-P)レベル4または3)の取得を目標とする課程」 【解説】 基本情報技術者試験(レベル2)の上位にあたる、応用情報技術者試験(レベル3)や高度試験(レベル4)の合格を目指す講座です。 ★最重要条件: この訓練を選んだ場合、訓練終了後(原則6ヶ月以内)に**「目標とされている資格試験を受験すること」が支給の必須条件**になります。合否は問われませんが、未受験の場合は助成金が一切出ません。 【具体例】 情報処理技術者試験の「データベーススペシャリスト試験(レベル4)」の合格を目指す、専門学校の対策講座(※訓練終了後に試験を受けることが条件)。
2. 「第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)」 【解説】 経済産業大臣が認定した、AI、クラウド、データサイエンスなどの高度な専門講座です。 教育訓練給付(専門実践教育訓練)の対象講座と多くが重複しており、専門性が担保されています。 【具体例】 経済産業大臣認定の「Reスキル講座」に指定されている、AIエンジニア育成コース(受講料50万円)。
3. 「マナビDX(デラックス)掲載講座のうち、講座レベルが、『ITスキル標準(ITSS)』、『ITSS+』又は『DX推進スキル標準』のレベル4または3に区分される講座」 【解説】 経済産業省とIPAが開設したポータルサイト「マナビDX」に掲載されている講座の中で、レベル3または4と明記されているものが対象です。 【具体例】 「マナビDX」サイト内で検索し、「レベル3」と表示されているクラウドセキュリティに関するオンライン講座。
4. 「大学(大学院を除く)の正規課程、科目履修制度、履修証明制度による訓練」 【解説】 情報科学・情報工学およびそれに関連する分野の学問を、大学で履修する場合が対象です。 【具体例】 社会人入学制度を利用して、大学の情報工学部でAIやプログラミングに関する科目を履修する場合。
5.「成長分野等人材訓練」の支給要件
大学院(国内・海外)での訓練を通じて、高度な知識・技能を習得させるこのコースを受給するためには、以下の「事業主」「労働者」「訓練」のすべての要件を、順序通りに満たす必要があります。(パンフレットP8、P58より)
事業主の要件
申請する会社は、以下の①と②の両方を満たす必要があります。
① 「対象となる事業主」に該当すること
前述の「高度デジタル人材訓練」の事業主の要件と同じです。
② 「個人訓練計画及び要件確認書」(様式第17号)を作成すること
大学院での訓練は長期間に及ぶため、対象となる社員一人ひとりについて、「どのような目的で、いつ、どの大学院に通い、どのような効果を期待するか」を詳細に記した個別の計画書を作成する必要があります。
労働者の要件
訓練を受ける社員は、以下の要件を満たす必要があります。
① 「対象となる労働者」に該当すること
前述の「高度デジタル人材訓練」の労働者の要件と同じです。
② 「成長分野等人材訓練(海外の大学院により実施される訓練)の場合、次の1~3のいずれにも該当すること」 (パンフレットP8、P59より)
1. 「日本の大学等を卒業し、学士以上の学位を取得した者または海外の高等教育機関において日本の学士以上に相当する学位を取得した者」
海外留学の場合は、大卒以上(またはそれと同等の学位を持つ者)に限られます。
2. 「入学先大学院での主たる使用言語の能力が、一定水準以上である者」
授業についていけるだけの語学力が必須です。
英語の場合: TOEFL iBT 100点以上、または IELTS 7.0以上。
英語以外の場合: ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)C1レベル以上。
3. 「大学学部以降の成績について、総在籍期間における累積GPA(Grade Point Average)が3.00(最高値を4.00とした場合)以上である者」
大学時代の成績が優秀であること(GPA 3.00以上)が求められます。
訓練の要件
実施する研修は、以下の①~⑤のすべてを満たす必要があります。
① 「職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練『職務関連訓練』であること」
今の仕事、または将来就く予定の仕事に関連する内容でなければなりません。
② 「OFF-JT(座学・実習)であること」
現場で働きながら仕事を覚えるOJTではなく、業務を離れて行う訓練である必要があります。
③ 「1コースあたりの実訓練時間数が10時間以上であること」
大学院のカリキュラムとして、10時間以上の授業時間が必要です(通常、大学院の単位取得にはこれ以上の時間を要するため、要件は満たしやすいです)。
④ 「事業外訓練(社外研修)であること
外部の機関(大学院)に通わせる訓練である必要があります。
⑤ 「成長分野等人材訓練」として、次の1または2のいずれかの訓練であること
1. 「大学院の正規課程、科目等履修制度、履修証明制度による訓練」
国内の大学院に通う場合です。修士課程・博士課程を問いません。
重要: 国内大学院の場合、分野の指定はありません(経営学、法学、工学など広く対象になります)。
【具体例】
・経営幹部候補が、国内のビジネススクール(大学院)でMBA(経営学修士)を取得する。
・技術者が、国内大学院の科目等履修生として、最新のAI技術に関する科目を履修する。
2. 「海外の大学院により実施される訓練」
海外の大学院に留学させる場合です。国内とは異なり、以下のいずれかの分野に関連するものに限定されます。
「デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革に関連する分野(情報科学・情報工学およびそれに関連する分野)」
「クリーンエネルギー、バイオ、宇宙等の先端技術やイノベーションに関わる分野(理工学)」
「経営の分野であって支給要領の別紙に定めるもの」(MBAなど、世界ランキング上位校などが指定されています)
【具体例】
・研究開発職の社員を、アメリカの大学院(理工学部)へ2年間留学させ、バイオテクノロジーの最先端研究を行わせる。
【NG例】
海外の大学院で「美術史」や「文学」を学ばせる(指定された成長分野ではないため)。
6.よくある質問(Q&A)
Q1. UdemyやSchooなどの「定額制(サブスクリプション型)研修サービス」も対象になりますか?
A. はい、対象になりますが「定額制訓練」として申請が必要です。
本記事で解説している「高度デジタル人材訓練」や「成長分野等人材訓練」とは別に、「人への投資促進コース」の中には ”定額制訓練” というメニューが用意されています。サブスクリプション型の研修を利用したい場合は、こちらのメニューでの申請をご検討ください
Q2. 「高度デジタル人材訓練」では、訓練後の資格試験に合格しないと助成金はもらえませんか?
A. いいえ、合否は問われません。
「高度情報通信技術資格の取得を目標とする課程」の場合、訓練終了後に ”目標とされている資格試験を受験すること” が支給の必須要件(義務)ですが、試験の結果が不合格であっても、受験した事実があれば助成金は支給されます。 逆に、どんなに真面目に受講しても、”試験を受けなかった場合(未受験)” は、経費助成も賃金助成も一切支給されませんので、必ず受験させてください(パンフレットP58)。
Q3. 会社役員や、雇用保険に入っていないアルバイトも対象になりますか?
A. いいえ、対象になりません。
本助成金は「雇用保険料」を財源としているため、対象となるのは ”雇用保険の被保険者” に限られます。 したがって、雇用保険に加入できない「会社役員(取締役など)」や「個人事業主」、週の労働時間が短く雇用保険に入っていない「アルバイト・パート」の方は対象外です。 申請前に、対象となる社員が雇用保険に加入しているか必ずご確認ください(パンフレットP32)。
7.まとめ
「人への投資促進コース」は、最大75%の経費助成に加え、受講時間に応じた賃金助成(1人1時間あたり1,000円※)まで受けられる、国が最も力を入れている制度の一つです。しかし、要件が複雑で「何から手を付けて良いかわからない」という企業様も多いかと思います。
まずは、いきなり講座を探すのではなく、IPA(情報処理推進機構)のサイトで「DX推進指標」の自己診断を行い、自社のDX推進状況とやるべきことを明らかにしましょう。
・DX推進ポータル(IPA): DX推進指標の自己診断や提出はこちらから行います。
https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/about.html#section15
要件が複雑で自社が対象になるか判断が難しい場合は、お近くの都道府県労働局、または助成金に詳しい社会保険労務士へご相談されることをおすすめします。

ご質問・ご相談がございましたら
お気軽にお問い合わせください
※本記事は2026年2月時点の法令・情報に基づき作成しています。
助成金の支給要件は頻繁に変更されるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。
【参照資料】
厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内(令和7年4月1日版)」
「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)支給要領(令和7年4月1日版)」
👉 厚生労働省:人材開発支援助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)
・マナビDX(デラックス): 経済産業省・IPAが推進するデジタル人材育成プラットフォーム。対象講座の検索に便利です。
https://manabi-dx.ipa.go.jp/