【人材開発支援助成金(人への投資促進コース/②情報技術分野認定実習併用職業訓練)】とは?IT未経験者を即戦力に!OJT+OFF-JT訓練で最大75%


IT業界未経験者を採用したものの、「コードが全く書けない」「システムの基礎知識がない」状態から即戦力に育てるには、通常のOJT(現場での実務指導)だけでは限界があります。
かといって外部の専門学校やプログラミングスクールに数か月通わせると、その間は業務が完全にストップしてしまい、受講料も数十万円から数百万円かかり、スクールで学んだ知識が自社の開発環境や業務内容とマッチしないこともあります。

そんな状況で、OJT(職場での実習)と外部研修を組み合わせた体系的な訓練を実施した場合に、訓練費用・研修中の賃金・OJT実施費を国がまとめて支援する制度があります。
それが人材開発支援助成金の「情報技術分野認定実習併用職業訓練」です。

人材育成支援コースの「認定実習併用職業訓練」が職種・業種を問わず幅広く対象とする制度であるのに対し、情報技術分野認定実習併用職業訓練はIT分野に特化したメニューとして、より高い助成率が設定されています。

こんな企業におすすめ!

・営業職や事務職として採用した従業員を、社内のシステム担当やエンジニアに育てたい
・IT業界未経験の新卒者を採用したが、基礎から体系的に教える余裕がない
・製造業や小売業など異業種から、自社アプリやWebサービスの開発に乗り出したい
・外注していたシステム保守を内製化するため、社内にエンジニアを育てたい
・パソコン操作はできるが、プログラミング経験ゼロの従業員をIT人材に転換したい

1. 情報技術分野認定実習併用職業訓練とは?

情報技術分野認定実習併用職業訓練は、IT分野の未経験者を即戦力として育成するために、企業内でのOJT(職場の業務を通じて行う実習)と教育訓練機関でのOFF-JT(業務の場を離れて行う座学・外部研修)を組み合わせた訓練を実施した事業主に対して、訓練経費・訓練期間中の賃金・OJT実施費を助成する制度です。

例えば、未経験で採用したエンジニア志望の従業員に、午前中は社外のプログラミングスクールで座学を受けてもらい、午後は社内で先輩エンジニアの指導のもと実際のシステム開発業務に取り組んでもらう、といった訓練がイメージに近いです。人材開発支援助成金「人への投資促進コース」のメニューのひとつで、令和4年度から令和8年度末までの期間限定で設けられています。

同じ人への投資促進コースの中に、すでにIT知識を持つ従業員をさらに高度化させるための「高度デジタル人材訓練」や、大学院で専門人材を育成する「成長分野等人材訓練」がありますが、これらが外部研修のみを対象とするのに対し、情報技術分野認定実習併用職業訓練はOJTとOFF-JTの組み合わせが必須で、IT未経験者を”一から育てる”ことを目的とした制度です。

高度デジタル人材訓練成長分野等人材訓練情報技術分野認定実習併用職業訓練
一言イメージすでにIT部門にいる従業員に高度な資格取得を目指す外部講座を受けてもらう。座学中心で訓練期間の縛りも比較的緩やか国内外の大学院に通わせて高度な専門人材を育てる。修士・博士課程が対象で1年あたりの助成上限が大きく設定されているIT未経験者を採用・転換し、外部研修と職場実習をセットで6か月以上かけて育てる。OJTが必須で大臣認定も必要なぶん手続きは重くなるが、OJT実施助成も受けられる
対象者制限なし制限なし15歳以上45歳未満
訓練形態OFF-JTのみOFF-JTのみOJT+OFF-JTの組み合わせ必須
訓練内容ITSSレベル3・4の講座、Reスキル講座など国内外の大学院IT分野の実習訓練(大臣認定必須)
経費助成率(中小)75%75%60%(賃上げ要件で75%)
賃金助成ありあり(国内大学院のみ)あり
OJT実施助成なしなしあり(20万円)
資格受験料対象(レベル3・4のみ)対象対象(レベル2・3・4)

制度の3つの特徴

特徴1:厚生労働大臣の認定を受けた体系的な訓練

「実習併用職業訓練」とは、企業内での実習(OJT)と教育訓練機関などでの座学(OFF-JT)を組み合わせた実践的訓練で、訓練によって修得された技能および知識についての評価を行うものです。

訓練を実施する前に、訓練計画を立てて申請し、厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。
認定を受けることで、ハローワークの求人票に「採用後に大臣認定を受けた訓練を受けられる」ことを表示でき、採用活動にも活用できます。

特徴2:6か月以上2年以内の計画的な育成プログラム

訓練期間は6か月以上2年以内、総訓練時間数は年間850時間以上と定められています。
短期間の詰め込み研修ではなく、基礎から実践まで段階的に学べる中長期の育成プログラムとして設計されています。

特徴3:OFF-JTとOJTを組み合わせた実践的な内容

総訓練時間に占めるOJTの割合は2割以上8割以下と定められており、座学で学んだ知識を実務で活かしながら、実践力を身につけることができます。
例えば、午前中は外部のプログラミングスクールでJavaの基礎文法を学び、午後は社内で実際のコード修正やテストを行う、といった形で、理論と実践を同時並行で進めることが可能です。

訓練の対象者

この訓練の対象となるのは、45歳未満かつIT分野の実務経験がない従業員です。※詳細な要件については支給要件の章で解説します。
例えば以下のようなケースが想定されます。

・新卒で営業職として入社した従業員を、社内SEに配置転換する
・事務職として働いていた従業員を、システム開発部門に異動させる
・製造業から初めてIT業界に転職してきた中途採用者を育成する

なお、訓練開始前の時点で、既に同種の職務に従事している場合や、IT分野での実務経験がある場合は対象外となります。

2. いくらもらえる?

情報技術分野認定実習併用職業訓練では、経費助成・賃金助成・OJT実施助成の3種類の助成が受けられます。

経費助成(訓練にかかった費用への助成)

区分通常賃上げ等要件を満たす場合
中小企業60%75%

経費助成の上限額は、1人あたりの実訓練時間数に応じて次のとおりです。

実訓練時間数上限額(中小企業)
100時間未満15万円
100時間以上200時間未満30万円
200時間以上50万円

なお、訓練に付加的にeラーニングや通信制による訓練を組み合わせて実施する場合、その部分については上記とは別枠で一律15万円が上限となります。

また、訓練修了後に所定の資格・試験を受験する場合、受験料も助成対象となります。対象となる資格・試験はITスキル標準(ITSS)またはDX推進スキル標準(DSS-P)のレベル3・4の資格試験、およびレベル2の実践的情報通信技術資格の試験に限ります。

賃金助成(訓練期間中の賃金への助成)

訓練期間中の所定労働時間内に実施したOFF-JTの時間数に応じて、1人1時間あたり次の額が助成されます。eラーニングや通信制による訓練の時間は賃金助成の対象外です。

区分通常賃上げ等要件を満たす場合
中小企業800円1,000円

賃金助成の上限時間は、1人あたり1,200時間です。

OJT実施助成(職場での実習にかかる費用への助成)

OJTの実施に対して、1人1訓練あたり次の額が定額で支給されます。

区分通常賃上げ等要件を満たす場合
中小企業20万円25万円

1事業所あたりの年度上限額

人への投資促進コース全体(成長分野等人材訓練を除く)で、1事業所1年度あたり2,500万円が上限です。

3. 活用事例

助成を受けられたケース

ケース1:製造業から社内SEへの配置転換(従業員30名の製造業A社)

背景:
製造ラインで働いていた28歳の社員を、社内の基幹システム管理担当に配置転換したいが、プログラミング経験がゼロ。外注していたシステム保守を内製化するため、Javaプログラミングとデータベース管理のスキルを身につけさせたい。

訓練内容:
・訓練期間:12か月
・OFF-JT:外部プログラミングスクールでJava基礎、データベース基礎、システム開発演習を受講(400時間)
・OJT:社内システムの保守業務、簡単な機能追加の実装(500時間)
・合計訓練時間:900時間

訓練経費:
・外部スクール受講料:80万円
・教材費:5万円
・資格試験受験料(基本情報技術者試験):7,500円
・合計:85万7,500円

受け取った助成金:
・経費助成:85万7,500円×60% = 51万4,500円
・賃金助成:400時間×800円 = 32万円
・OJT実施助成:20万円
・合計:103万4,500円

結果:
訓練修了後、基本情報技術者試験に合格し、社内システムの保守業務を一人で担当できるようになった。外注費用が年間約200万円削減でき、助成金により訓練費用の実質負担は約34万円で済んだ。

ケース2:営業職から開発職への転換(従業員15名のIT企業B社)

背景:
営業として入社した25歳の社員が、開発業務に興味を持ち配置転換を希望。未経験からWebアプリケーション開発のスキルを習得させ、開発チームの一員として活躍してもらいたい。訓練修了後は月給を5%引き上げる予定。

訓練内容:
・訓練期間:18か月
・OFF-JT:外部スクールでHTML/CSS、JavaScript、React、サーバーサイド開発を受講(600時間)
・OJT:実案件でのコーディング、テスト、デバッグ業務(1,000時間)
・合計訓練時間:1,600時間

訓練経費:
・外部スクール受講料:120万円
・オンライン学習プラットフォーム利用料:3万円
・合計:123万円

受け取った助成金:
・経費助成:123万円×75%(賃金要件達成)= 92万2,500円
・賃金助成:600時間×1,000円(賃金要件達成)= 60万円
・OJT実施助成:25万円(賃金要件達成)
・合計:177万2,500円

結果:
訓練修了後、月給を5%引き上げ、開発チームに配属。実案件でのコーディングを担当できるレベルに成長した。助成金により訓練費用を大幅に上回る助成を受けることができ、さらに賃上げによる人材定着効果も得られた。

ケース3:新卒未経験者の育成(従業員8名のWeb制作会社C社)

背景:
文系大学卒業の新卒社員(22歳)をWebエンジニアとして採用したが、プログラミング経験なし。6か月間の体系的な訓練を通じて、自社のWebサイト制作業務を担当できるレベルまで育成したい。

訓練内容:
・訓練期間:6か月
・OFF-JT:外部スクールでフロントエンド開発、WordPress開発を受講(180時間)
・OJT:実案件でのコーディング補助、テストサイト構築(300時間)
・合計訓練時間:480時間

訓練経費:
・外部スクール受講料:40万円
・教材費・ソフトウェアライセンス:5万円
・合計:45万円

受け取った助成金:
・経費助成:45万円×60% = 27万円
・賃金助成:180時間×800円 = 14万4,000円
・OJT実施助成:20万円
・合計:61万4,000円

結果:
訓練修了後、基本的なWebサイト制作を一人で担当できるようになった。訓練費用45万円に対して61万4,000円の助成を受けた。

助成対象外となったケース

ケース1:IT実務経験者を対象にした訓練

背景:
前職でシステムエンジニアとして3年間勤務していた中途採用者(32歳)に、自社で使用している新しいフレームワークの訓練を実施しようとした。

なぜ対象外か:
情報技術分野認定実習併用職業訓練は、”IT分野未経験者”を対象とした制度です。前職でIT関連の実務経験がある場合、たとえ技術スタックが異なっていても、この訓練の対象外となります。

代替案:
この場合は、人材開発支援助成金の「人材育成支援コース」や「事業展開等リスキリング支援コース」を活用することで、10時間以上のOFF-JT訓練に対して助成を受けることができます。

ケース2:訓練期間が短すぎる訓練

背景:
営業事務として働いていた従業員を、3か月間の集中プログラミング研修でシステム担当に育成しようとした。

なぜ対象外か:
情報技術分野認定実習併用職業訓練は、訓練期間が6か月以上2年以内と定められています。3か月では期間要件を満たしません。

代替案:
訓練期間を6か月以上に延長し、OFF-JTとOJTを組み合わせた計画に変更すれば、情報技術分野認定実習併用職業訓練として申請できます。または、短期間の訓練であれば「人材育成支援コース」での申請を検討しましょう。

ケース3:大臣認定を受けずに訓練を開始した

背景:
従業員の訓練を先に開始してから、後日「助成金が使えることを知った」ため、訓練途中で申請しようとした。

なぜ対象外か:
情報技術分野認定実習併用職業訓練では、訓練開始の30日前までに厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。訓練開始後の事後申請は認められません。

代替案:
すでに開始してしまった訓練については助成対象外となります。次回の訓練実施時には、必ず訓練開始前に大臣認定申請と助成金の計画届を提出するようにしましょう。

ケース4:46歳の従業員を対象にした訓練

背景:
長年製造部門で働いていた46歳の従業員を、IT部門に配置転換するため訓練を実施しようとした。

なぜ対象外か:
訓練対象者は15歳以上45歳未満と定められています。46歳以上の方は、この訓練の対象外となります。

代替案:
年齢制限のない「人材育成支援コース」や「事業展開等リスキリング支援コース」を活用すれば、助成を受けることができます。ただし、助成率や助成額は情報技術分野認定実習併用職業訓練よりも低くなります。

4. 支給要件(複雑なルールを整理!)

情報技術分野認定実習併用職業訓練の助成を受けるには、訓練内容、訓練対象者、事業主のそれぞれについて、複数の要件を満たす必要があります。

訓練の要件

  1. 職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練であること
    情報処理・通信技術者の職種に関連する業務に必要となる訓練が対象です。
    趣味教養型の講座や職務と関連のない内容は対象外です。
    なお、共通スキル訓練(ビジネスマナーなど)はOFF-JT実訓練時間数の半分未満であれば含めることができます。
  2. 厚生労働大臣の認定(大臣認定)を受けた認定実習併用職業訓練であること
    訓練開始日の30日前までに認定申請を行い、認定を受けることが必要です。認定申請には実施計画認定申請書・教育訓練カリキュラム・ジョブカード様式などの書類が必要です。
  3. 訓練実施期間が6か月以上2年以下であること
    6か月未満や2年を超える訓練は対象外です。なお、1か月以上連続して訓練を実施しない期間が生じた場合、その期間は訓練実施期間に含まれません。
  4. 総訓練時間数が1年あたり850時間以上であること
    OJTとOFF-JTを合わせた訓練時間数が、1年換算で850時間以上必要です。
  5. 総訓練時間数に占めるOJTの割合が2割以上8割以下であること
    OJTが少なすぎても多すぎても対象外となります。OFF-JTとOJTのバランスが重要です。
  6. OFF-JTは通学制または同時双方向型の通信訓練であること
    eラーニングや通信制のみによるOFF-JTは原則として対象外です。ただし、大臣認定を受けた訓練と内容に連続性がある場合に限り、付加的にeラーニング・通信制を組み合わせることができます。
  7. OJTは原則として対面で行うこと
      ただし、書類作成業務・プログラム関連業務・システム開発業務・各種設計業務に関するOJTについては、テレワーク等オンラインでの実施が認められます。
  8. OJT実施日ごとに、対象労働者が「OJT実施状況報告書(OJT訓練日誌)」を作成すること
    日々の訓練内容・習得した技能を記録することが必要です。記録が確認できない場合はOJTを実施したと認められません。

労働者の要件

  • 「対象となる労働者」に該当すること
  • 訓練開始日時点で15歳以上45歳未満であること
    訓練開始日を基準に年齢を判断します。45歳の誕生日を迎えていない従業員が対象です。
  • 次のいずれかに該当すること
    ・新たに雇い入れた従業員で、雇い入れ日から訓練開始日までが3か月以内であること
    ・すでに雇用している短時間等労働者(パートや契約社員など)を通常の労働者に転換した従業員で、転換日から訓練開始日までが3か月以内であること
    ・すでに雇用している被保険者であること
  • 実訓練時間数の8割以上受講していること(OJTも同様)
    やむを得ない事情(病気・怪我・天災など)による欠席分は、その時間数を加えた上で8割以上であれば対象となります。
  • 新規学卒予定者以外の場合、訓練開始前にキャリアコンサルタントによるジョブカードを活用したキャリアコンサルティングを受け、IT分野(情報処理・通信技術者の職種)の業務に従事した経験がないと確認された者であること
    新卒採用の場合はキャリアコンサルティングは不要ですが、中途採用や社内異動の場合は訓練開始前にキャリアコンサルタントによる確認が必要です。
    なお、キャリアコンサルティングの実施や訓練カリキュラムの作成については、全国に設置している「キャリア形成・リスキリング支援センター」で無料で相談・支援を受けられます。

事業主の要件

  • 「対象となる事業主」に該当すること
  • 次のいずれかに該当する事業主であること
    ・主たる事業が日本標準産業分類の大分類「情報通信業」であること
    ・IT関連業務を主に担う組織(部・課・グループ・プロジェクトチームなど)またはDXを推進する組織を社内に有していること
    情報通信業以外の業種でも、社内にIT部門やDX推進部門があれば対象となります。つまり、製造業・小売業・サービス業など幅広い業種の会社が活用できます。
  • 訓練修了後に、対象労働者のジョブカード(職業能力証明シート)による職業能力の評価を実施すること
    訓練を通じてどのような能力が身についたかを、「ジョブカード様式3-3-1-1職業能力証明」を用いて評価することが必要です。
    このジョブ・カードにより、訓練期間中に身につけた具体的なスキルや能力が客観的に証明されるため、従業員本人のキャリア形成にも役立ちます。

5. 申請の流れ

STEP1:大臣認定の申請

訓練開始日の30日前までに、都道府県労働局またはハローワークに大臣認定の申請を行います。申請には以下の書類が必要です。

  • 実施計画認定申請書(様式第7号第1面〜第3面)
  • 実践型人材養成システム実施計画
  • 教育訓練カリキュラム
  • ジョブカード様式3-3-1-1 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート
  • 提出書類の確認シート

カリキュラムの作成や書類の準備については、「キャリア形成・リスキリング支援センター」で無料で相談・支援を受けられます。申請が集中する1〜3月は審査に時間がかかるため、早めの申請が推奨されています。

STEP2:職業訓練実施計画届の提出

訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に、管轄の都道府県労働局またはハローワークに職業訓練実施計画届を提出します。この期限は厳守で、期限を過ぎると原則として助成対象となりません。

主な提出書類は以下のとおりです。

  • 職業訓練実施計画届(様式第1-1号)
  • 対象労働者一覧(様式第3-1号)
  • 事前確認書(様式第11号)
  • 訓練カリキュラム・受講案内等
  • OJTのカリキュラム
  • 訓練に係る教育訓練機関との契約書または受講案内・申込書の写し等

STEP3:訓練の実施

提出した職業訓練実施計画届の内容に沿って訓練を実施します。OJT実施日ごとに対象労働者がOJT実施状況報告書(OJT訓練日誌)を作成することが必要です。訓練内容や実施日程に変更が生じた場合は、変更前日までに変更届を提出してください。変更届を提出せずに内容と異なる訓練を実施した場合、その部分は助成対象外となります。

STEP4:支給申請

訓練終了日の翌日から2か月以内に、管轄の都道府県労働局に支給申請書と必要書類を提出します。この期限も厳守です。なお、訓練修了後に資格試験を受験し受験料を申請する場合は、受験日の翌日から2か月以内が申請期限となります。

主な提出書類は以下のとおりです。

  • 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
  • 支給申請書(様式第4-2号)
  • 賃金助成・OJT実施助成の内訳(様式第5号)
  • 経費助成の内訳(様式第6-2号)
  • 対象労働者のOFF-JT実施状況報告書(様式第8-1号)
  • 対象労働者のOJT実施状況報告書(OJT訓練日誌)(様式第9号)
  • OJT訓練指導者の出勤簿またはタイムカードの写し
  • 対象労働者のジョブカード様式3-3-1-1(企業実習・OJT用)の写し
  • 入学料・受講料・教科書代等に係る請求書および領収書の写し等
  • 支給申請承諾書(訓練実施者)(様式第12号)

STEP5:審査・支給決定・振込

書類提出後、都道府県労働局で審査が行われます。支給決定後、指定の金融機関口座へ振り込まれます。なお、この助成金は確認項目が多いため、他の助成金より支給可否の決定までに時間がかかる場合があります。

6. よくある質問(Q&A)

Q1. IT未経験者とは、どの程度の経験までが対象になりますか?

A. この訓練は「IT分野未経験者の即戦力化」を目的としているため、訓練開始前の時点で、既にIT分野での実務経験がある場合は対象外となります。

例えば、前職でプログラマーやシステムエンジニアとして働いていた方は、たとえ使用する言語やフレームワークが異なっていても対象外です。
一方で、事務職や営業職として働いていた方で、業務でExcelやWordを使っていた程度であれば「IT未経験者」として認められます。

判断に迷う場合は、管轄の都道府県労働局または社会保険労務士に事前に相談することをおすすめします。

Q2. 情報通信業以外の会社でも申請できますか?

はい、可能です。主たる事業が情報通信業でなくても、社内にIT関連業務を主に担う部門やDXを推進する部門があれば申請できます。部・課・グループだけでなく、プロジェクトチームも組織として認められます。職務分掌規程や組織規程などで社内に該当する組織があることを確認しておきましょう。

Q3. 訓練中に従業員が退職した場合、助成金はどうなりますか?

A. 訓練期間中に対象労働者が退職した場合、その労働者分の助成金は支給されません。

訓練を修了し、支給申請時点で在籍していることが支給要件の一つとなっています。そのため、訓練中は従業員の定着を意識した育成やフォローが重要です。

Q4. 複数の従業員を同時に訓練することはできますか?

A. 可能です。複数名を対象に同じ訓練計画で実施することもできますし、それぞれ異なる訓練計画で実施することもできます。
ただし、1事業所が1年度に受給できる助成金の限度額は、人への投資促進コース全体で2,500万円となっていますので、その範囲内での申請となります。

Q5. すでに雇用している従業員を訓練対象にできますか?

はい、可能です。新たに採用した従業員だけでなく、すでに雇用している被保険者も対象となります。ただし、IT分野の業務に従事した経験がないことをキャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングで確認することが必要です。なお、新規学卒予定者についてはキャリアコンサルティングは不要です。

Q6. 訓練開始後に訓練計画を変更することはできますか?

A. やむを得ない事情がある場合、訓練計画の変更は可能です。ただし、事前に変更届を提出し、承認を受ける必要があります。

変更できる内容には制限があり、訓練期間の大幅な短縮や、訓練内容の根本的な変更などは認められない場合があります。変更が必要な場合は、早めに管轄の都道府県労働局に相談しましょう。

Q7. 親会社や関連会社の従業員にOJT指導をしてもらうことはできますか?

A. 親会社や子会社の従業員は「適格な指導者」に該当しないため、OJT指導者として認められません。

OJT訓練指導者は、申請事業主の役員等または申請事業主に雇用されている者であって、訓練等実施日における出勤状況・出退勤時刻を確認できる者である必要があります。

ただし、OJTの実施場所が親会社や子会社、請負先である場合は、適格な指導者を対象労働者と同様に配置し、訓練等の実施体制が確立されていれば可能です。

Q8. 資格試験に不合格だった場合、受験料の助成は受けられませんか?

A. 受験料の助成は、合格・不合格にかかわらず支給対象となります。

ただし、訓練カリキュラムにおいて取得目標とされている資格・試験であることが前提で、訓練終了日の翌日から起算して6か月以内に受験する必要があります。また、対象となる資格は、ITスキル標準(ITSS)・DX推進スキル標準(DSS-P)レベル2以上の資格試験に限られます。

7. まとめ

情報技術分野認定実習併用職業訓練は、IT未経験者を6か月以上かけて体系的に育成するための助成金制度です。

この制度を使えば、営業職や事務職として働いていた従業員を、社内のシステム担当やエンジニアに育てる際、訓練費用の60〜75%が助成されます。さらに、訓練期間中の賃金に対しても1時間あたり800〜1,000円の助成があり、OJTを実施すれば20〜25万円の定額助成も受けられます。

プログラミングスクールの受講料や教材費はもちろん、基本情報技術者試験などの資格試験の受験料も助成対象です。外部の研修に通わせながら社内でも実務訓練を行い、座学と実践を組み合わせて即戦力に育てることができます。

活用にあたって最初のハードルとなるのが大臣認定の申請ですが、キャリア形成・リスキリング支援センターで無料の支援が受けられるため、書類作成の経験がなくても取り組みやすい環境が整っています。

まずは、自社で育成したい従業員がこの制度の対象になるかを確認し、どのような訓練内容にするかを検討することから始めましょう。

要件が複雑で判断が難しい場合や、就業規則の作成に不安がある場合は、お近くの都道府県労働局や、助成金に詳しい社会保険労務士へご相談されることをおすすめします。

お気軽にお問い合わせください

※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。
助成金の支給要件は頻繁に変更されるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。
【参照資料】
厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内(令和8年4月8日版)」
     「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)支給要領(令和8年4月8日版)」

👉 厚生労働省:人材開発支援助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)


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