IT未経験者を即戦力に!【人材開発支援助成金(人への投資促進コース/情報技術分野認定実習併用職業訓練)】

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IT業界で働いてみたいという未経験者を採用したものの、「コードが全く書けない」「システムの基礎知識がない」状態から即戦力に育てるには、通常のOJT(現場での実務指導)だけでは限界があります。

かといって外部の専門学校やプログラミングスクールに数か月通わせると、その間は業務が完全にストップしてしまい、受講料も数十万円から数百万円かかります。さらに、スクールで学んだ知識が自社の開発環境や業務内容とマッチしないこともあります。

一方で、社内でのOJTだけで育成しようとすると、次のような壁にぶつかります。

・体系的な知識がないまま実務に入るため、エラーの原因が理解できず、毎回先輩に質問することになる
・プログラミングの基礎文法やデータベースの仕組みなど、一から教える時間が取れない
・現場で必要な知識を場当たり的に教えるだけになり、応用が利かない

【こんな企業におすすめ】

・営業職や事務職として採用した従業員を、社内のシステム担当やエンジニアに育てたい
・IT業界未経験の新卒者を採用したが、基礎から体系的に教える余裕がない
・製造業や小売業など異業種から、自社アプリやWebサービスの開発に乗り出したい
・外注していたシステム保守を内製化するため、社内にエンジニアを育てたい
・パソコン操作はできるが、プログラミング経験ゼロの従業員をIT人材に転換したい

実は、こうした”IT未経験者”を対象に、座学での基礎学習と実務での実践訓練を計画的に組み合わせ、6か月以上かけて育成する場合、国の助成金で訓練費用の60〜75%と、訓練中の賃金の一部、さらにOJT実施への定額助成を受け取ることができます。

この記事では、IT未経験者を即戦力に育てるための「情報技術分野認定実習併用職業訓練」について、要件と活用方法を整理していきます。

1. そもそも「情報技術分野認定実習併用職業訓練」とは?

(以下、人への投資促進コースのご案内P11、P14より引用)

「情報技術分野認定実習併用職業訓練」は、IT分野未経験者の即戦力化を目的とした、OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練制度です。
この制度は「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)」の一部として位置づけられており、IT分野の人材育成に特化した高率助成が受けられます。

制度の3つの特徴

特徴1:厚生労働大臣の認定を受けた体系的な訓練

「実習併用職業訓練」とは、企業内での実習(OJT)と教育訓練機関などでの座学(OFF-JT)を組み合わせた実践的訓練で、訓練によって修得された技能および知識についての評価を行うものです。

訓練を実施する前に、訓練計画を立てて申請し、厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。認定を受けることで、ハローワークの求人票に「採用後に大臣認定を受けた訓練を受けられる」ことを表示でき、採用活動にも活用できます。

特徴2:6か月以上2年以内の計画的な育成プログラム

訓練期間は6か月以上2年以内、総訓練時間数は年間850時間以上と定められています。
短期間の詰め込み研修ではなく、基礎から実践まで段階的に学べる中長期の育成プログラムとして設計されています。

特徴3:OFF-JTとOJTを組み合わせた実践的な内容

総訓練時間に占めるOJTの割合は2割以上8割以下と定められており、座学で学んだ知識を実務で活かしながら、実践力を身につけることができます。
例えば、午前中は外部のプログラミングスクールでJavaの基礎文法を学び、午後は社内で実際のコード修正やテストを行う、といった形で、理論と実践を同時並行で進めることが可能です。

訓練の対象者

この訓練の対象となるのは、45歳未満かつIT分野の実務経験がない従業員です。
例えば以下のようなケースが想定されます。

・新卒で営業職として入社した従業員を、社内SEに配置転換する
・事務職として働いていた従業員を、システム開発部門に異動させる
・製造業から初めてIT業界に転職してきた中途採用者を育成する

なお、訓練開始前の時点で、既に同種の職務に従事している場合や、IT分野での実務経験がある場合は対象外となります。

訓練修了後の職業能力評価

訓練修了後には、「ジョブ・カード様式3-3-1-1 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)」により職業能力の評価を実施します。
このジョブ・カードにより、訓練期間中に身につけた具体的なスキルや能力が客観的に証明されるため、従業員本人のキャリア形成にも役立ちます。

このように、情報技術分野認定実習併用職業訓練は、IT未経験者を体系的かつ実践的に育成するための国が認定する制度であり、助成金により企業の費用負担を大きく軽減できる仕組みです。次の章では、具体的にどれくらいの助成額が見込めるのかを見ていきます。

2. いくらもらえる?【助成額と助成率】

(以下、人への投資促進コースのご案内P3、P4、P9、P12より引用)

情報技術分野認定実習併用職業訓練では、OFF-JT(座学)とOJT(実務訓練)のそれぞれに対して助成が受けられます。さらに、訓練修了後に一定の賃金要件を満たすと、助成率・助成額が加算されます。

経費助成

訓練にかかった経費(受講料、教材費など)に対して、以下の助成率で支給されます。

中小企業:60%(賃金要件等を満たす場合:75%)

例えば、プログラミングスクールの受講料が50万円だった場合、30万円の助成が受けられます。賃金要件を満たせば37万5千円が助成されます。

賃金助成

訓練期間中に支払った賃金に対して、以下の額が1人1時間当たりで支給されます。

中小企業:800円(賃金要件等を満たす場合:1,000円)

例えば、1日8時間、週5日、3か月間(約12週間)の座学訓練を実施した場合、約38万4千円(800円×8時間×60日)の助成が受けられます。賃金要件を満たせば約48万円が助成されます。

ただし、eラーニングおよび通信制による訓練の場合、賃金助成はありません。

OJT部分の助成

OJT部分については、実際にかかった費用ではなく、定額での助成となります。

中小企業:20万円(賃金要件等を満たす場合:25万円)

これは1人1訓練当たりの額です。つまり、OJTにどれだけ時間をかけても、支給される金額は定額です。

資格取得経費の助成

情報技術分野認定実習併用職業訓練では、資格取得経費(受験料)も助成対象になります。

訓練終了日の翌日から起算して6か月以内に、訓練カリキュラムにおいて取得目標とされている資格・試験を受験する場合、その受験料等が支給対象経費として助成されます。

ただし、次の資格・試験に限ります。

高度情報通信技術資格(ITスキル標準(ITSS)・DX推進スキル標準(DSS-P)レベル3又は4)の資格試験
実践的情報通信技術資格(ITスキル標準(ITSS)・DX推進スキル標準(DSS-P)レベル2)の資格試験

具体的には、以下のような資格・試験が該当します。

・基本情報技術者試験(ITSSレベル2)
・情報セキュリティマネジメント試験(ITSSレベル2)
・応用情報技術者試験(ITSSレベル3)
・情報処理安全確保支援士試験(ITSSレベル4)
・ネットワークスペシャリスト試験(ITSSレベル4)
・データベーススペシャリスト試験(ITSSレベル4)
・プロジェクトマネージャ試験(ITSSレベル4)

レベル2の資格は「実践的情報通信技術資格」、レベル3・4の資格は「高度情報通信技術資格」に分類されます。いずれも訓練カリキュラムの中で取得目標として設定されている場合に、受験料が助成対象となります。

賃金要件・資格等手当要件とは

助成率・助成額が加算される「賃金要件等を満たす場合」とは、以下のいずれかを満たした場合です。

・訓練を修了した従業員の賃金を5%以上引き上げる
・資格手当を新設して3%以上賃金を引き上げる

助成金の限度額

1事業所が1年度に受給できる助成金の限度額は、人への投資促進コース全体で2,500万円です。

また、受講者1人当たりの経費助成には、訓練時間数に応じた限度額が設定されています。

・訓練時間数100時間未満:15万円
・訓練時間数100時間以上200時間未満:30万円
・訓練時間数200時間以上:50万円

たとえば、6か月間・合計400時間の訓練を実施した場合、1人あたり50万円が経費助成の上限となります。

3. 金額入り事例【助成を受けられたケースと助成対象外となったケース】

ここでは、実際の事例を元にした中小企業の具体的な活用モデルを、助成を受けられたケースと助成対象外となったケースに分けてご紹介します。

助成を受けられたケース

ケース1:製造業から社内SEへの配置転換(従業員30名の製造業A社)

背景:
製造ラインで働いていた28歳の社員を、社内の基幹システム管理担当に配置転換したいが、プログラミング経験がゼロ。外注していたシステム保守を内製化するため、Javaプログラミングとデータベース管理のスキルを身につけさせたい。

訓練内容:
・訓練期間:12か月
・OFF-JT:外部プログラミングスクールでJava基礎、データベース基礎、システム開発演習を受講(400時間)
・OJT:社内システムの保守業務、簡単な機能追加の実装(500時間)
・合計訓練時間:900時間

訓練経費:
・外部スクール受講料:80万円
・教材費:5万円
・資格試験受験料(基本情報技術者試験):7,500円
・合計:85万7,500円

受け取った助成金:
・経費助成:85万7,500円×60% = 51万4,500円
・賃金助成:400時間×800円 = 32万円
・OJT実施助成:20万円
・合計:103万4,500円

結果:
訓練修了後、基本情報技術者試験に合格し、社内システムの保守業務を一人で担当できるようになった。外注費用が年間約200万円削減でき、助成金により訓練費用の実質負担は約34万円で済んだ。

ケース2:営業職から開発職への転換(従業員15名のIT企業B社)

背景:
営業として入社した25歳の社員が、開発業務に興味を持ち配置転換を希望。未経験からWebアプリケーション開発のスキルを習得させ、開発チームの一員として活躍してもらいたい。訓練修了後は月給を5%引き上げる予定。

訓練内容:
・訓練期間:18か月
・OFF-JT:外部スクールでHTML/CSS、JavaScript、React、サーバーサイド開発を受講(600時間)
・OJT:実案件でのコーディング、テスト、デバッグ業務(1,000時間)
・合計訓練時間:1,600時間

訓練経費:
・外部スクール受講料:120万円
・オンライン学習プラットフォーム利用料:3万円
・合計:123万円

受け取った助成金:
・経費助成:123万円×75%(賃金要件達成)= 92万2,500円
・賃金助成:600時間×1,000円(賃金要件達成)= 60万円
・OJT実施助成:25万円(賃金要件達成)
・合計:177万2,500円

結果:
訓練修了後、月給を5%引き上げ、開発チームに配属。実案件でのコーディングを担当できるレベルに成長した。助成金により訓練費用を大幅に上回る助成を受けることができ、さらに賃上げによる人材定着効果も得られた。

ケース3:新卒未経験者の育成(従業員8名のWeb制作会社C社)

背景:
文系大学卒業の新卒社員(22歳)をWebエンジニアとして採用したが、プログラミング経験なし。6か月間の体系的な訓練を通じて、自社のWebサイト制作業務を担当できるレベルまで育成したい。

訓練内容:
・訓練期間:6か月
・OFF-JT:外部スクールでフロントエンド開発、WordPress開発を受講(180時間)
・OJT:実案件でのコーディング補助、テストサイト構築(300時間)
・合計訓練時間:480時間

訓練経費:
・外部スクール受講料:40万円
・教材費・ソフトウェアライセンス:5万円
・合計:45万円

受け取った助成金:
・経費助成:45万円×60% = 27万円
・賃金助成:180時間×800円 = 14万4,000円
・OJT実施助成:20万円
・合計:61万4,000円

結果:
訓練修了後、基本的なWebサイト制作を一人で担当できるようになった。訓練費用45万円に対して61万4,000円の助成を受け、実質的にプラスの収支となった。

助成対象外となったケース

ケース1:IT実務経験者を対象にした訓練

背景:
前職でシステムエンジニアとして3年間勤務していた中途採用者(32歳)に、自社で使用している新しいフレームワークの訓練を実施しようとした。

なぜ対象外か:
情報技術分野認定実習併用職業訓練は、”IT分野未経験者”を対象とした制度です。前職でIT関連の実務経験がある場合、たとえ技術スタックが異なっていても、この訓練の対象外となります。

代替案:
この場合は、人材開発支援助成金の「人材育成支援コース」や「事業展開等リスキリング支援コース」を活用することで、10時間以上のOFF-JT訓練に対して助成を受けることができます。

ケース2:訓練期間が短すぎる訓練

背景:
営業事務として働いていた従業員を、3か月間の集中プログラミング研修でシステム担当に育成しようとした。

なぜ対象外か:
情報技術分野認定実習併用職業訓練は、訓練期間が6か月以上2年以内と定められています。3か月では期間要件を満たしません。

代替案:
訓練期間を6か月以上に延長し、OFF-JTとOJTを組み合わせた計画に変更すれば、情報技術分野認定実習併用職業訓練として申請できます。または、短期間の訓練であれば「人材育成支援コース」での申請を検討しましょう。

ケース3:大臣認定を受けずに訓練を開始した

背景:
従業員の訓練を先に開始してから、後日「助成金が使えることを知った」ため、訓練途中で申請しようとした。

なぜ対象外か:
情報技術分野認定実習併用職業訓練では、訓練開始の30日前までに厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。訓練開始後の事後申請は認められません。

代替案:
すでに開始してしまった訓練については助成対象外となります。次回の訓練実施時には、必ず訓練開始前に大臣認定申請と助成金の計画届を提出するようにしましょう。

ケース4:46歳の従業員を対象にした訓練

背景:
長年製造部門で働いていた46歳の従業員を、IT部門に配置転換するため訓練を実施しようとした。

なぜ対象外か:
訓練対象者は15歳以上45歳未満と定められています。46歳以上の方は、この訓練の対象外となります。

代替案:
年齢制限のない「人材育成支援コース」や「事業展開等リスキリング支援コース」を活用すれば、助成を受けることができます。ただし、助成率や助成額は情報技術分野認定実習併用職業訓練よりも低くなります。

4. 支給要件(複雑なルールを整理!)

(以下、人への投資促進コースのご案内P11、P12、P14、P36より引用)

情報技術分野認定実習併用職業訓練の助成を受けるには、訓練内容、訓練対象者、事業主のそれぞれについて、複数の要件を満たす必要があります。

訓練内容の要件

1. IT分野に関連する訓練であること

情報処理・通信技術者の職種に関連する業務に必要となる訓練であること

プログラミング、システム開発、データベース管理、ネットワーク構築など、IT分野の実務に直結する訓練が対象となります。

なお、ビジネスマナーやコミュニケーション研修などの共通スキル訓練については、OFF-JT実訓練時間数に占める割合が半分未満であれば認められます。

2. 厚生労働大臣の認定を受けた訓練であること

大臣認定(職業能力開発促進法第26条の3)を受けた訓練であること

訓練開始の30日前までに、都道府県労働局またはハローワークに認定申請書を提出し、認定を受ける必要があります。

3. 訓練期間が6か月以上2年以内であること

訓練実施期間が6か月以上2年以下であること

短期間の詰め込み研修では対象外となります。なお、訓練実施日の変更等により、1か月以上連続して訓練を実施しない期間が生じた場合、その期間については訓練実施期間に含まれません。

4. 総訓練時間数が年間850時間以上であること

総訓練時間数が1年当たりの時間数に換算して850時間以上であること

例えば、6か月間の訓練であれば425時間以上、12か月間の訓練であれば850時間以上が必要です。

5. OJTの割合が2割以上8割以下であること

総訓練時間数に占めるOJTの割合が2割以上8割以下であること

OFF-JTとOJTをバランスよく組み合わせることが求められます。例えば、総訓練時間が1,000時間の場合、OJTは200時間以上800時間以下である必要があります。

6. OFF-JTは通学制または同時双方向型の通信訓練であること

OFF-JTについては、「通学制」又は「同時双方向型の通信訓練」であり、1コースの実訓練時間数が職業訓練実施計画届の届け出時及び支給申請時において10時間以上であること

原則、対面による訓練が必要です。ただし、大臣認定を受けた訓練と内容に連続性があり一連のものである場合には、付加的にeラーニングによる訓練や通信制による訓練も助成対象となります。

7. OJTは適格な指導者のもとで実施されること

OJTについては、大臣認定を受けた実習併用職業訓練の計画に沿って、適格な指導者の指導のもとで、計画的に行われるものであること

適格な指導者(OJT訓練指導者)とは、申請事業主の役員等または申請事業主に雇用されている者であって、訓練等実施日における出勤状況・出退勤時刻を確認できる者を指します。親会社や子会社の従業員は適格な指導者に該当しません。

8. OJTは原則対面で実施すること

OJTについては、原則、対面で行うこと

ただし、次の業務にかかるOJTについては、テレワーク等オンラインで実施することが可能です。

・書類作成業務(パーソナルコンピュータ操作員など)
・プログラム関連業務(ソフトウェア開発技術者など)
・システム開発業務(システム設計技術者など)
・各種設計業務(CADオペレーターなど)

9. OJT実施日ごとにOJT訓練日誌を作成すること

OJTについては、OJT実施日ごとに、訓練受講者が「OJT実施状況報告書(OJT訓練日誌)(様式第9号)」を作成すること

訓練受講者本人が、毎日の訓練内容を記録する必要があります。

10. 訓練終了後に職業能力の評価を実施すること

訓練終了後にジョブ・カード様式3-3-1-1「職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)」により職業能力の評価を実施すること

訓練で身につけたスキルを、ジョブ・カードを使って客観的に評価します。

訓練対象者の要件

1. 雇用保険の被保険者であること

助成金を受けようとする事業所において、被保険者であること
訓練実施期間中において、被保険者であること

雇用保険に加入していることが前提となります。

2. 15歳以上45歳未満であること

訓練対象者が15歳以上45歳未満の者であること

46歳以上の方は、この訓練の対象外となります。

3. IT分野未経験者であること

この訓練は「IT分野未経験者の即戦力化」を目的としているため、訓練開始前の時点で、既にIT分野での実務経験がある場合は対象外となります。

事業主の要件

1. 雇用保険適用事業所であること

雇用保険の適用事業所の事業主であることが前提となります。

2. 訓練実施計画届を提出していること

訓練開始日の1か月前までに、管轄の都道府県労働局に「職業訓練実施計画届(様式第1-1号)」を提出し、受理されていることが必要です。

3. 会社都合で従業員を辞めさせていないこと

訓練開始日の前日から起算して6か月前の日から支給申請書の提出日までの間に、雇用する被保険者を事業主都合により離職させていないことが必要です。

4. 過去に訓練を受けた者が大量に離職していないこと

過去に当該助成金を受給したことがある事業主の場合、以前の訓練修了者の50%以上が離職していると、新たな申請ができなくなる場合があります。

主な不支給要件

以下のような場合、助成金は支給されません。

・訓練開始前に大臣認定または助成金の計画届を提出していない
・訓練を途中で中止した、または修了できなかった
・訓練期間中に対象労働者が退職した
・訓練期間中の賃金台帳や出勤簿、訓練日誌などの書類が不備
・不正受給を行った事業主(過去5年以内)

これらの要件をすべて満たすことで、初めて助成金の支給対象となります。次の章では、実際の申請から受給までの流れを見ていきます。

5. 全体フロー(申請から受給までの流れ)

(以下、人への投資促進コースのご案内P14、P15より引用)

申請から受給までは、大きく5つのステップに分かれます。特に重要なのは、訓練開始前に2つの申請(大臣認定申請と助成金の計画届)を完了させることです。

Step 1:訓練計画の作成と大臣認定申請(訓練開始の30日前まで)

実習併用職業訓練の認定を受けるため、以下の書類を作成し、都道府県労働局またはハローワークに提出します。

・実施計画認定申請書(様式第7号第1面〜第3面)
・実践型人材養成システム実施計画
・教育訓練カリキュラム
・ジョブ・カード様式3-3-1-1職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート
・提出書類の確認シート

提出期限:訓練開始日の30日前まで

ただし、助成金の提出書類の確認等に時間がかかることもあることから、早期の認定申請が推奨されています。特に申請の集中する1〜3月の時期については、早めの申請が必要です。

ポイント:
この段階で訓練の全体像(訓練期間、訓練時間、OFF-JTとOJTの内容、評価方法など)を具体的に計画します。計画が不十分だと認定が下りないため、丁寧に作成することが重要です。

Step 2:助成金の計画届提出(訓練開始の1か月前まで)

大臣認定を受けた後、管轄の都道府県労働局に以下の書類を提出します。

・職業訓練実施計画届(様式第1-1号)
・訓練カリキュラム
・対象労働者一覧
・事業所確認票
・その他必要書類

提出期限:訓練開始日の1か月前まで

ポイント:
大臣認定申請と助成金の計画届は別々の手続きです。大臣認定が下りてから助成金の計画届を提出する流れになりますので、余裕を持ったスケジュールが必要です。

Step 3:訓練の実施

計画届に基づいて、OFF-JTとOJTを実施します。訓練期間中は以下の書類を作成・保管します。

・出勤簿・賃金台帳
・OFF-JTの受講証明書(外部機関を利用する場合)
・OJT実施状況報告書(OJT訓練日誌)(様式第9号)
・訓練経費の領収書・請求書
・訓練カリキュラムに沿った実施記録

ポイント:
OJT訓練日誌は、訓練受講者本人がOJT実施日ごとに作成する必要があります。毎日の訓練内容、指導者、訓練時間などを記録し、指導者の確認印をもらいます。この日誌がないとOJT部分の助成が受けられません。

また、訓練期間中に対象労働者が退職した場合、その労働者分の助成金は支給されませんので、定着を意識した育成が重要です。

Step 4:訓練修了後の評価とジョブ・カード作成

訓練修了後、ジョブ・カード様式3-3-1-1「職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)」により職業能力の評価を実施します。

ポイント:
ジョブ・カードには、訓練で身につけた具体的なスキルや能力を記載します。評価基準は大臣認定申請時に提出した内容に基づいて行います。

Step 5:支給申請(訓練修了日の翌日から2か月以内)

訓練修了後、以下の書類を管轄の都道府県労働局に提出します。

・支給申請書(様式第4号)
・訓練実施結果報告書
・経費助成の支給対象となる経費の領収書・請求書
・賃金助成の支給対象となる賃金台帳・出勤簿
・OJT実施状況報告書(OJT訓練日誌)
・ジョブ・カード様式3-3-1-1職業能力証明シート
・その他必要書類

提出期限:訓練修了日の翌日から2か月以内

ポイント:
支給申請の期限は厳格です。2か月を過ぎると原則として支給されませんので、訓練修了後は速やかに書類を準備しましょう。

また、賃金要件を満たして加算を受ける場合は、訓練修了後に賃金改定を行い、その証拠書類(就業規則の改定、賃金台帳など)も提出します。

6. よくある質問(Q&A)

Q1. IT未経験者とは、どの程度の経験までが対象になりますか?

A. この訓練は「IT分野未経験者の即戦力化」を目的としているため、訓練開始前の時点で、既にIT分野での実務経験がある場合は対象外となります。

例えば、前職でプログラマーやシステムエンジニアとして働いていた方は、たとえ使用する言語やフレームワークが異なっていても対象外です。一方で、事務職や営業職として働いていた方で、業務でExcelやWordを使っていた程度であれば「IT未経験者」として認められます。

判断に迷う場合は、管轄の都道府県労働局または社会保険労務士に事前に相談することをおすすめします。

Q2. eラーニングやオンライン研修でも助成対象になりますか?

A. 原則、OFF-JTは対面による訓練(通学制または同時双方向型の通信訓練)が必要です。

ただし、大臣認定を受けた訓練と内容に連続性があり一連のものである場合には、付加的にeラーニングによる訓練や通信制による訓練も助成対象となります。つまり、メインの訓練は対面で行い、補足的にeラーニングを追加する形であれば認められます。
なお、eラーニングおよび通信制による訓練の場合、賃金助成はありません。

Q3. 訓練中に従業員が退職した場合、助成金はどうなりますか?

A. 訓練期間中に対象労働者が退職した場合、その労働者分の助成金は支給されません。

訓練を修了し、支給申請時点で在籍していることが支給要件の一つとなっています。そのため、訓練中は従業員の定着を意識した育成やフォローが重要です。

Q4. 複数の従業員を同時に訓練することはできますか?

A. 可能です。複数名を対象に同じ訓練計画で実施することもできますし、それぞれ異なる訓練計画で実施することもできます。
ただし、1事業所が1年度に受給できる助成金の限度額は、人への投資促進コース全体で2,500万円となっていますので、その範囲内での申請となります。

Q5. 訓練修了後、必ず賃金を引き上げなければなりませんか?

A. 賃金引き上げは必須ではありません。賃金要件を満たさない場合でも、基本の助成率・助成額で支給を受けることができます。

ただし、訓練修了後に賃金を5%以上引き上げるか、または資格手当を新設して3%以上賃金を引き上げれば、より高い助成率・助成額(加算)を受けることができます。例えば、中小企業の場合、経費助成率が60%から75%に、賃金助成額が800円から1,000円に、OJT実施助成額が20万円から25万円に増額されます。

Q6. 訓練開始後に訓練計画を変更することはできますか?

A. やむを得ない事情がある場合、訓練計画の変更は可能です。ただし、事前に変更届を提出し、承認を受ける必要があります。

変更できる内容には制限があり、訓練期間の大幅な短縮や、訓練内容の根本的な変更などは認められない場合があります。変更が必要な場合は、早めに管轄の都道府県労働局に相談しましょう。

Q7. 親会社や関連会社の従業員にOJT指導をしてもらうことはできますか?

A. 親会社や子会社の従業員は「適格な指導者」に該当しないため、OJT指導者として認められません。

OJT訓練指導者は、申請事業主の役員等または申請事業主に雇用されている者であって、訓練等実施日における出勤状況・出退勤時刻を確認できる者である必要があります。

ただし、OJTの実施場所が親会社や子会社、請負先である場合は、適格な指導者を対象労働者と同様に配置し、訓練等の実施体制が確立されていれば可能です。

Q8. 資格試験に不合格だった場合、受験料の助成は受けられませんか?

A. 受験料の助成は、合格・不合格にかかわらず支給対象となります。

ただし、訓練カリキュラムにおいて取得目標とされている資格・試験であることが前提で、訓練終了日の翌日から起算して6か月以内に受験する必要があります。また、対象となる資格は、ITスキル標準(ITSS)・DX推進スキル標準(DSS-P)レベル2以上の資格試験に限られます。

次の章では、記事全体をまとめます。

7. まとめ

情報技術分野認定実習併用職業訓練は、IT未経験者を6か月以上かけて体系的に育成するための助成金制度です。

この制度を使えば、営業職や事務職として働いていた従業員を、社内のシステム担当やエンジニアに育てる際、訓練費用の60〜75%が助成されます。さらに、訓練期間中の賃金に対しても1時間あたり800〜1,000円の助成があり、OJTを実施すれば20〜25万円の定額助成も受けられます。

プログラミングスクールの受講料や教材費はもちろん、基本情報技術者試験などの資格試験の受験料も助成対象です。外部の研修に通わせながら社内でも実務訓練を行い、座学と実践を組み合わせて即戦力に育てることができます。

ただし、対象となるのは45歳未満のIT分野未経験者のみで、訓練期間は6か月以上2年以内と定められています。訓練開始の30日前までに厚生労働大臣の認定を受ける必要があるため、計画的な準備が欠かせません。

まずは、自社で育成したい従業員がこの制度の対象になるかを確認し、どのような訓練内容にするかを検討することから始めましょう。

要件が複雑で自社が対象になるか判断が難しい場合や、申請書類の作成に不安がある場合は、助成金に詳しい社会保険労務士へご相談されることをおすすめします。

IT人材の育成は、企業の競争力を高める重要な投資です。この助成金を活用することで、費用負担を大きく軽減しながら、未経験者を即戦力に育てることができます。

8. 参考

厚生労働省 人材開発支援助成金ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

ジョブ・カード制度総合サイト
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000122460.html

最寄りの都道府県労働局
厚生労働省ホームページから検索できます。


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