「社内のDX(デジタル技術による業務変革)を進めたいが、専門的な研修は費用が高額で躊躇している」
「従業員が自由に学べる『定額制(サブスク)研修』を導入したいが、コストが気になる」
「社員が自発的に資格を取りたいと言ってきたが、会社としてどう支援すべきか悩んでいる」
中小企業の現場では、このように「新しいスキルを習得させたいが、従来の研修制度では枠組みが合わない」「費用が高額で躊躇する」という壁にぶつかることがよくあります。
こうした「人への投資」に特化して、国が費用を助成してくれる制度があります。
それが、人材開発支援助成金の 「人への投資促進コース」 です!
このコースは、デジタル人材の育成や、従業員の自発的なスキルアップを強力に支援する期間限定(令和8年度まで)の制度です。令和7年(2025年)4月からは賃金助成額が引き上げられるなど、企業にとってさらに使い勝手の良い制度へと進化しています。
この記事では、本コースの全体像とメリット、そして自社に最適なメニューがひと目でわかるようにポイントを絞って解説します。
【こんな企業におすすめ】
・高度なITスキルやデジタル技術(DX)を社員に習得させたい
・「Udemy」や「Schoo」などの定額制(サブスク)動画研修を導入したい
・IT未経験者を雇用して、働きながら即戦力のエンジニアに育てたい
・社員が自ら「学びたい」と希望した時の支援制度を作りたい
1.人材開発支援助成金「人への投資促進コース」とは?
人材開発支援助成金「人への投資促進コース」は、国民からの提案をもとに作られた”人への投資”を加速化するための助成金コースです。
具体的には、デジタル人材・高度人材の育成や、労働者の自発的な能力開発を促進するために、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成します。
このコースの最大の特徴は、「デジタル分野への手厚い支援」 と 「多様な学習スタイルへの対応」 です。従来の集合研修だけでなく、サブスクリプション型の学習サービスや、大学院での学び直しなども対象となります。
2.5つのメニューと選び方のポイント
「人への投資促進コース」には、目的に応じて5つのメニューが用意されています。自社の課題に合うメニューを確認し、詳細記事で要件をチェックしてください。
【高度デジタル人材訓練】/【成長分野等人材訓練】
高度なデジタルスキルを習得させたい、または大学院等で高度な専門知識を学ばせたい場合に活用します。
| 対象 | 高度デジタル人材の育成訓練、大学院での訓練など |
| 特徴 | 経費助成率が 最大75% |
| 活用例 | ・AI、データサイエンス、セキュリティ技術などの高度IT研修を受けさせる。 ・社会人大学院(国内・海外)に通学し、MBAや修士号を取得してもらう。 |
👉 詳細はこちら:【高度デジタル・成長分野】高率助成でDX人材を育成する方法
【情報技術分野認定実習併用職業訓練】
IT未経験者を即戦力化するために、実務(OJT)と座学(OFF-JT)を組み合わせて行う訓練です。
| 対象 | IT分野未経験者(15歳以上45歳未満など年齢要件あり) |
| 特徴 | 外部研修費用の助成に加え、OJTも対象 |
| 活用例 | 未経験で採用した若手社員に対し、システム開発の実務指導とプログラミングスクールへの通学をセットで行う |
👉 詳細はこちら:【情報技術分野】IT未経験者を即戦力エンジニアに育てるOJT活用術(準備中)
【定額制訓練】
いわゆる「サブスクリプション型」の研修サービスを利用して行う訓練です。
| 対象 | サブスクリプション型の研修サービス(eラーニング等) |
| 特徴 | 複数の従業員が、定額で好きな講座を選んで受講できます。 |
| 活用例 | 従業員のデジタルリテラシー向上のため「Udemy Business」や「Schoo」などを導入し、業務時間内に学習してもらう。 |
👉 詳細はこちら:【定額制訓練】サブスク研修サービスを助成金で賢く導入する方法(準備中)
【自発的職業能力開発訓練】
従業員が「自ら希望して」受講する訓練費用を、会社が負担した場合に助成されます。
| 対象 | 労働者が自発的に受講した訓練費用 |
| 特徴 | 会社からの業務命令ではなく、本人の意思によるスキルアップを支援します。 |
| 活用例 | 社員から「このセミナーに行きたい」と申請があり、会社が費用を補助する制度を運用する。 |
👉 詳細はこちら:【自発的訓練】社員の「学びたい」を会社が応援する仕組みづくり(準備中)
【長期教育訓練休暇等制度】
働きながら訓練を受けるための休暇制度などを導入し、社員が実際にそれを利用した場合に助成されます。
| 対象 | 30日以上の長期休暇、または短時間勤務制度など |
| 特徴 | 研修費用ではなく、制度導入時の経費(20万円)や、休暇中の賃金などが助成されます。 |
| 活用例 | 社員が資格取得のために1ヶ月休職して勉強に専念できる制度を作り、実際に取得してもらう。 |
👉 詳細はこちら:【長期教育訓練休暇】学びのための「休み」を支援する制度の作り方(準備中)
3.助成内容(金額・助成率)
各メニュー共通の助成率・助成額の目安は以下の通りです(中小企業の例)。 メニューによって異なりますので、必ず詳細記事で確認してください。
経費助成率(研修費用の補助)
| 助成率 | 賃金要件等加算 | |
| 高度デジタル人材 | 75% | なし |
| 成長分野等人材 | 75% | なし |
| 情報技術分野認定 | 60% | 75%(+15%) |
| 定額制 | 60% | 75%(+15%) |
| 自発的職業能力開発 | 45% | 60%(+15%) |
| 長期教育訓練休暇 | 20万円(制度導入経費として) | 24万円(+4万円) |
研修にかかった入学料や受講料などが戻ってきます。
正規・非正規雇用に関わらず支給されます。
長期教育訓練休暇等制度については、制度導入に対して20万円(24万円)が支給されます。
賃金助成(訓練期間中の賃金補助)
| 助成額 | 賃金要件等加算 | |
| 高度デジタル人材 | 1,000円 | なし |
| 成長分野等人材 | 1,000円 | なし |
| 情報技術分野認定 | 800円 | 1,000円(+200円) |
| 定額制 | なし | なし |
| 自発的職業能力開発 | なし | なし |
| 長期教育訓練休暇 | 1,000円 | なし |
従業員が研修を受けている間も、会社は給料を払う必要があります。その負担を軽減するための助成です。
基本: 1人1時間あたり 800円~1,000円(★令和7年4月から増額されました!)
賃上げ等をすれば: 1人1時間あたり 1,000円(+200円)にアップ!
OJT実施助成(現場実習に対する定額ボーナス)
| 助成額(1人1コースあたり) | 賃金要件等加算 | |
| 情報技術分野認定のみ | 20万円 | 25万円(+5万円) |
1人1コースあたり20万円 (※訓練終了後に賃上げ等をすれば25万円)
★OJT(実習)の時間数に関わらず、実施すればコースごとに定額が支給されます。
助成限度額:(1事業所・1年度あたり)
無制限にもらえるわけではなく、以下の通り「2つの枠(財布)」で上限が決まっています。
【枠①:2,500万円】以下のメニューの合計額
以下の4つのメニューは、すべて合わせて1事業所・1年度あたり2,500万円が上限です。
・高度デジタル人材訓練
・定額制訓練
・情報技術分野認定実習併用職業訓練
・長期教育訓練休暇等制度
・自発的職業能力開発訓練(※このメニュー単独では300万円が上限です!)
【枠②:1,000万円】以下のメニュー単独
・成長分野等人材訓練(大学院での訓練など)
1事業所・1年度あたり1,000万円が上限となります。
具体的な計算例(同じ年度内に行う場合)
ケースA:枠内で収まる場合(全額支給)
内容:同じ年度内で「高度デジタル(1,000万円)」+「定額制(500万円)」を実施した。合計金額:1,500万円
計算:どちらも「枠①2,500万円」の枠なので、この枠内に収まるかどうか計算する。
2,500万円 > 1,500万円 →○
――――――――――――――――――――
【判定】 2,500万円以内なので、全額支給されます。
ケースB:枠をオーバーする場合(カットされる)
内容:同じ年度内で「高度デジタル(2,000万円)」+「定額制(1,000万円)」を実施した。合計金額:3,000万円
計算:どちらも「枠①2,500万円」の枠なので、この枠内に収まるかどうか計算する。
2,500万円 < 3,000万円 →×
――――――――――――――――――――
【判定】 2,500万円を超えているため、超過分の500万円分は支給されません(支給額は2,500万円まで)
ケースC:別枠を利用する場合(合算して多くもらえる)
内容:同じ年度内で「高度デジタル(2,000万円)」+「成長分野(大学院)(800万円)」を実施した。合計金額:2,800万円
計算:高度デジタルは【枠①】、大学院は【枠②】で計算します。
2,500万円 > 2,000万円 →○
1,000万円 > 800万円 →○
――――――――――――――――――――
【判定】 それぞれの枠内に収まっているため、合計2,800万円が全額支給対象となります。
このように、基本的には「人への投資促進コース全体で2,500万円」ですが、「大学院に通う訓練(成長分野)」だけは別枠でカウントされると覚えておくと間違いありません。
4.申請の流れ
どのメニューを利用する場合でも、基本的な申請の流れは共通しています。特に「計画届」の提出タイミングには注意が必要です。
Step 1: 社内体制の整備
まずは社内体制を整えます。
「職業能力開発推進者」を選任し、「事業内職業能力開発計画」を策定して社員に周知します。
「職業能力開発推進者」の選任と「事業内職業能力開発計画」の策定についてはこちら】
Step 2.計画届の提出(訓練開始の1か月前まで)
• 提出期限
原則として、訓練開始日から起算して1か月前までに、管轄の労働局へ提出します。 (例:4月1日から訓練開始したい場合、2月末日までに提出が必要です)
※もし期限に遅れてしまったら?
1日でも遅れると、予定していた開始日での申請は一切受け付けてもらえません。この場合は「訓練開始日を後ろにずらす(1か月以上先の日程に変更する)」ことで、期限内提出の要件を満たすように計画を修正し提出しましょう。
Step 3.訓練の実施
認定された計画通りに訓練を行います。受講を証明する修了証などは必ず保管してください。
Step 4.支給申請(訓練終了後2か月以内)
最後に、助成金をもらうための申請を行います。
• 提出期限
訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に提出します(例:6月30日に訓練が終了した場合、8月31日が提出期限です)
• 審査と支給
労働局による審査(数か月から半年程度かかります)を経て、問題がなければ「支給決定通知書」が届き、指定口座に助成金が振り込まれます。
【注意】審査でよく見られるポイント
審査の際、労働局の職員が事業所を訪問する「実地調査」が入ることがあります。
また、この調査への協力は助成金受給の必須要件です。調査を拒否したり、協力しなかったりした場合、助成金は不支給となります(案内P57より)
日々の訓練日誌や出勤簿(タイムカード)の記録を正確に行い、いつ調査が入っても対応できるように準備しておきましょう
5.よくある質問
Q.複数のメニューを同時に利用することはできますか?
A.可能です。例えば、一部のエンジニアには「高度デジタル人材訓練」で専門的なAI研修を受けさせつつ、全社員向けには「定額制訓練」で動画学習サービスを導入するといった併用が可能です。ただし、1事業所あたりの支給限度額(2,500万円等)の範囲内に収める必要があります
6.まとめ
人材開発支援助成金「人への投資促進コース」は、企業のDX対応や社員の自律的なキャリア形成を強力にバックアップする制度です。令和7年度からは賃金助成額もアップし、より活用しやすくなりました。
最後に、5つのメニューそれぞれについて「どんな会社やケースに当てはまるか」を整理しました。自社の状況に近いものをクリックして、詳細な要件を確認してください。
【次に読むべき詳細記事】
• [1. 高度デジタル・成長分野]
◦ こんな時: 「AIやデータサイエンスの専門研修(受講料50万円〜)をエンジニアに受けさせたいが、高額なので負担を減らしたい」
◦ 👉 詳細:【高度デジタル・成長分野】高率助成(75%)でDX人材を育成する方法(準備中)
• [2. 情報技術分野]
◦ こんな時: 「IT未経験の若手を採用した。現場の先輩による指導(OJT)と外部スクール(OFF-JT)を組み合わせて、イチからエンジニアに育てたい」
◦ 👉 詳細:【情報技術分野】IT未経験者を即戦力エンジニアに育てるOJT活用術(準備中)
• [3. 定額制訓練]
◦ こんな時: 「全社員に『Udemy』や『Schoo』のアカウントを配り、空き時間にデジタルスキルを学ばせたい」
◦ 👉 詳細:【定額制訓練】サブスク研修サービスを助成金で賢く導入する方法(準備中)
• [4. 長期教育訓練休暇]
◦ こんな時: 「社員から『社会人大学院に通うために3ヶ月間休職したい』と相談された。会社として応援する制度を作りたい」
◦ 👉 詳細:【長期教育訓練休暇】学びのための「休み」を支援する制度の作り方(準備中)
• [5. 自発的訓練]
◦ こんな時: 「社員が自分で探してきたセミナーや講座の費用を、会社が負担してあげたい(業務命令ではなく、本人の希望を支援したい)」
◦ 👉 詳細:【自発的訓練】社員の「学びたい」を会社が応援する仕組みづくり(準備中)
