全従業員のITスキルを底上げしたいと考えたとき、1人ずつ外部の研修会場に通わせるとなると、受講料だけで数十万円、さらに移動時間や業務の穴埋めを考えると、現実的ではありません。
一方で、UdemyやSchooのような「月額定額で何講座でも学べる」サブスク型の研修サービスなら、1つの契約で複数の従業員が同時に学べるため、コストを抑えながら幅広いスキルアップが可能です。
しかし、こうしたサービスを導入しても、次のような壁にぶつかることがあります。
・会社で契約したものの「自分の時間で見ておいて」と伝えたら、誰も使わず形骸化してしまった
・せっかく月額料金を払っているのに、業務が忙しくて受講する時間が確保できない
・「これは会社の研修なのか、それとも個人の自己啓発なのか」という線引きが曖昧で、従業員も会社も中途半端な扱いになっている
実は、サブスク型の研修サービスを「業務時間内に受講する制度」として明確に位置づけ、会社が費用を全額負担すれば、国の助成金で契約料の60~75%を取り戻すことができます。
この記事では、定額制の研修サービスを活用しながら、費用負担を大きく減らせる「定額制訓練」について、要件と活用方法を整理していきます。
こんな企業におすすめ!
・従業員のスキルアップに取り組みたいが、1人ずつ外部研修に通わせる予算がない
・UdemyやSchooなどのオンライン研修サービスに興味はあるが、費用対効果が不安
・サブスク研修を契約したが「自分の時間で見て」と伝えたら形骸化してしまった
・部門ごとに必要なスキルが違うため、全員一律の研修では効果が薄いと感じている
・ITスキルやDXの基礎を全従業員に底上げしたいが、どこから手を付けていいかわからない
1. そもそも「定額制訓練」とは?
(以下、人への投資促進コースのご案内P3、P18より引用)
人材開発支援助成金には、企業の人材育成を支援するためのさまざまなメニューが用意されていますが、その中でも「サブスクリプション型の研修サービス」に特化して助成を行うのが「定額制訓練」です。
この制度は、「人への投資促進コース」という大きな枠組みの中に位置づけられており、正式には次のように定義されています。
「労働者の多様な訓練の選択・実施を可能とする『定額制訓練(サブスクリプション型の研修サービス)』を利用する事業主に対する助成」
「定額制サービスによる訓練」とは、事業主が定額の料金を支払うことで、被保険者が期間中に複数の訓練を受講することができるサービスをいいます。
月額や年額で一定の金額を支払えば、その期間中に何講座でも受講できる形式が該当します。
具体的には、以下のようなサービスが対象となります。
・Udemy Business(ビジネス向けオンライン学習プラットフォーム)
・Schoo for Business(生放送授業とアーカイブが見放題の研修サービス)
・グロービス学び放題(経営やマーケティングの動画講座)
従来の「1講座ごとに申し込み、その都度受講料を支払う」形式の研修とは異なり、定額制であれば、従業員それぞれが必要な講座を選んで学べるため、多様なニーズに対応しやすいという特徴があります。
たとえば、営業部門の従業員には商談スキルやマーケティングの講座を、経理部門の従業員には会計ソフトの使い方や税務の講座を、それぞれ自分で選んで受講してもらうことができます。
また、新入従業員には基礎的なビジネスマナーやPC操作の講座を、中堅従業員には管理職向けのマネジメント講座を受講してもらうといった、階層別の育成にも対応できます。
1つの契約で複数の従業員が、それぞれ必要なタイミングで必要な講座を選べるため、「せっかく高いお金を払って研修を申し込んだのに、その日は急な商談が入って参加できなかった」といった無駄が生じにくいのも特徴です。
このように、定額制訓練は「従業員一人ひとりのニーズに合わせた、柔軟な学びの環境」を作りたい企業に向いている制度です。次の章では、具体的にどれくらいの助成額が見込めるのかを見ていきます。
2. いくらもらえる?【助成額と助成率】
定額制訓練を活用した場合、どれくらいの金額が助成されるのかを具体的に見ていきます。
(以下、人への投資促進コースのご案内P5、P20より引用)
経費助成
訓練にかかった経費(受講料、教材費など、会社が負担した金額)に対して、以下の助成率で支給されます。
中小企業の助成率:60%(基本)→ 75%(賃金要件等を満たした場合は+15%)
限度額:受講者1人1月あたり2万円
たとえば、月額10万円のサービスを30名で6か月間利用した場合、
・契約料の総額:10万円×6か月=60万円
・助成額の上限:2万円×30名×6か月=360万円
→ 契約料60万円のほうが小さいため、60万円×60%(または75%)が助成額となります。
賃金助成【なし】
定額制訓練には賃金助成はありません。経費助成のみです。
理由としては、定額制訓練が「いつでも好きなときに受講できる」という柔軟性を持つサービスであるため、受講時間の管理や確認が難しいことが背景にあります。
また、前提として、定額制訓練では「業務上義務付けられ、労働時間に実施される訓練であること」が必須要件となっているため、従業員が研修を受けている時間は労働時間として扱われます。
つまり、労働時間として扱われる以上、会社は研修を受けている時間についても通常通りの賃金を支払う義務があります。
助成限度額(1事業所・1年度あたり)
無制限にもらえるわけではなく、以下の上限が設定されています。
2,500万円(他の人への投資促進コースメニューとの合算枠)
以下のメニューは、すべて合わせて1事業所・1年度あたり2,500万円が上限です。
・高度デジタル人材訓練
・定額制訓練(★この記事で紹介している訓練)
・情報技術分野認定実習併用職業訓練
・長期教育訓練休暇等制度
・自発的職業能力開発訓練(※このメニュー単独では300万円が上限)
ただし、「成長分野等人材訓練(大学院での訓練)」は別枠で1,000万円の上限があり、上記の2,500万円とは別に計算されます。
【重要】対象となる経費の範囲
すべての契約料が助成対象になるわけではありません。以下の点に注意が必要です。
職務関連教育訓練部分のみが対象
趣味・教養系の講座(料理、ヨガなど)は助成対象外です。契約サービスの中に趣味教養型の講座が含まれている場合、それらを区別して契約できるなら、職務関連部分のみが助成対象となります。
受講者数に応じた契約の場合
「対象労働者一覧(様式第3-2号)」に記載した人数分の契約料のみが対象です。
たとえば、助成対象者が30名なのに、被保険者以外も含めて50名プランで契約した場合、30名プランの契約料のみが助成対象となります。
より安価な契約方法がある場合
「より安価な契約方法が可能にもかかわらず、合理的な理由なく当該契約方法による契約額を超えた額により契約をしている場合の当該差額部分」は対象外です。
たとえば、
・1ID 10,000円
・10ID 90,000円
という料金プランがある場合、助成対象者10人に対して「1ID×10人=100,000円」で契約しても、より安価な「10ID 90,000円」の額が助成対象となります。
3. 金額入り事例
(以下、人への投資促進コースのご案内P18、P21より引用)
助成率や限度額の説明だけでは、実際にどれくらいの金額が戻ってくるのかイメージしづらいかもしれません。ここでは、実際の事例を元にした中小企業の具体的な活用モデルを、助成を受けられたケースと助成対象外となったケースに分けてご紹介します。
助成を受けられたケース
ケース1:製造業(全従業員のデジタルリテラシー向上)
状況
従業員30名の製造業。DX推進のため、全従業員にデジタルスキル(Excel活用、クラウドツールの使い方、データ分析の基礎など)を身につけてもらいたい。
活用した訓練
・メニュー:定額制訓練
・サービス:Udemy Business(月額契約)
・契約料:月額10万円×6か月=60万円
・受講ルール:業務時間内に週1回・1時間ずつ受講義務化(就業規則に明記)
・実績:30名全員が職務関連講座を受講し、合計受講時間が120時間に到達
助成額シミュレーション
・経費助成:60万円×75%(賃上げ要件達成)=45万円
・賃金助成:なし
――――――――――――――――――――
合計受給額:45万円
会社の実質負担:15万円(契約料)+ 研修時間の賃金
結果
契約料60万円のうち45万円が助成され、実質的な負担は15万円で済みました。全従業員がそれぞれ必要なスキルを選んで学べたため、「この研修は自分には関係ない」という無駄がなく、受講率も高く維持できました。
ケース2:IT企業(エンジニアのスキルアップ)
状況
従業員10名のシステム開発会社。エンジニアに最新技術(クラウド、セキュリティ、AIなど)を学ばせたい。
活用した訓練
・メニュー:定額制訓練
・サービス:Schoo for Business(年間契約)
・契約料:年額30万円
・受講ルール:業務時間内に月2回・2時間ずつ受講義務化
助成額シミュレーション
・経費助成:30万円×60%=18万円
・賃金助成:なし
――――――――――――――――――――
合計受給額:18万円
会社の実質負担:12万円(契約料)+ 研修時間の賃金
結果
年間契約30万円のうち18万円が助成され、実質12万円の負担で最新技術の学習環境を整備できました。エンジニアそれぞれが関心のある分野を選んで学べるため、モチベーションも高く、業務にも活かせる知識が増えました。
助成対象外となったケース
ケース1:「自主的に見てね」方式
状況
Udemy Businessを契約したが、「業務時間外に自分で見てください」と伝え、自己啓発として扱った。
判定:対象外
理由
「業務上義務付けられ、労働時間に実施される訓練であること」(ご案内P18より引用)が要件のため、自己啓発扱いは対象外となります。
「申請事業主が業務命令として労働時間に実施する意図がなく、専ら労働者が自発的に訓練を受講している場合は、助成対象となりません」(ご案内P21より引用)
【代替案】
- 「自発的職業能力開発訓練」コースへ切り替える
このコースは、労働者が自発的に受講した訓練費用を会社が負担した場合に助成されるメニューです。助成率は45%(賃上げで60%)と定額制訓練より低くなりますが、業務時間外の受講でも対象となります。 - 業務時間内の受講を義務化する
就業規則や研修規程で「業務時間内に月○時間受講すること」を明記し、受講時間を労働時間として扱い、賃金を支払う形に変更すれば、定額制訓練として申請できます。
ケース2:趣味講座が多いサービスを契約
状況
全講座の6割が趣味・教養系(ヨガ、料理、写真撮影など)のサービスを契約した。
判定:対象外
理由
「定額制サービスの中に趣味教養型講習など支給対象外訓練が含まれている場合、定額制サービスの全講座数のうち、5割以上が趣味教養型講習など支給対象外訓練である場合には、当該定額制サービスは助成対象外となります」(ご案内P21より引用)
全講座の半分以上が仕事に関連する専門的な内容である必要があります(5割要件)。
代替案
職務関連講座が5割以上のサービスを選びなおす
Udemy Business、Schoo for Business、グロービス学び放題など、ビジネススキルやIT技術に特化したサービスを選べば、5割要件をクリアしやすくなります。契約前に、全講座数のうち職務関連講座がどれくらいの割合を占めるか確認しておきましょう。
4. 支給要件(複雑なルールを整理!)
(以下、人への投資促進コースのご案内P18、P19、P20、P21、P30、P31より引用)
定額制訓練を申請するためには、「事業主(会社)」「労働者(従業員)」「訓練(研修内容)」のすべてにおいて、要件を満たす必要があります。ひとつでも要件から外れると不支給となりますのでご注意ください。
【事業主の要件】
定額制訓練を申請する事業主は、以下の要件を満たす必要があります。
① 雇用保険適用事業所の事業主であること
会社として雇用保険に加入しており、被保険者が存在することが前提です。
② 事業内職業能力開発計画の策定と周知
「労働組合等の意見を聴いて事業内職業能力開発計画およびこれに基づく職業訓練実施計画届を作成し、その計画の内容を労働者に周知していること」
「我が社はどのような人材を育てたいか」という方針をまとめた計画書を作成し、従業員代表の意見を聞いた上で、従業員全員に知らせておく必要があります。
③ 職業能力開発推進者の選任
「職業能力開発推進者を選任していること」
社内で人材育成の責任者(役員や人事担当者など)を1名選任しておく必要があります。
④ 賃金の適正な支払い
従業員に職業訓練等を受けさせる期間中も、当該従業員に対して賃金を適正に支払っていること
訓練を受けている時間も労働時間として、所定の給与(残業代含む)を支払っていることが必要です。
⑤ 書類の整備と保管
「助成金の支給または不支給の決定に係る審査に必要な書類等を整備、5年間保存している事業主であること」
出勤簿や賃金台帳、訓練の実施状況がわかる書類などを整理し、支給決定後も5年間は保管する義務があります。
⑥ 会社都合で従業員を辞めさせていないこと
基準期間(職業訓練実施計画届の提出日の前日から起算して6か月前の日から支給申請書の提出日までの間)に、当該計画を実施した事業所において、雇用する被保険者を解雇等事業主都合により離職させた事業主以外の事業主であること
基準期間に、当該計画を実施した事業所において、特定受給資格者となる離職理由の被保険者数が、当該事業所の雇用保険被保険者数の6%を超えていないこと(特定受給資格者となる離職者が3人以下の場合を除く)
計画届を提出する日の「6か月前」から申請日までの間に、会社都合で従業員を辞めさせていないこと、また、上記の期間に会社都合などで離職した人の数が、全従業員の6%を超えていないことが必要です(ただし、離職者が3人以下の場合は問題ありません)。
⑦ 過去に訓練を受けた者が大量に離職していないこと
当該職業訓練実施計画を実施した事業所において、計画届の提出日の前日から起算して1年前の日から計画届の提出日までの間に人材開発支援助成金の支給決定日があり、かつ一の支給決定の支給対象労働者のうち、訓練期間中、訓練終了日の翌日から起算して6か月以内又は支給申請書の提出日までに理由の如何を問わず離職した支給対象労働者の割合が50%以上であったことが2回以上行われた事業主以外の者であること
もし過去にこの助成金を使ったことがある場合、その研修を受けた人の「半数以上」が訓練終了後6か月以内に辞めてしまっているような状況が2回以上あると、今回は申請できません。
⑧ 審査への協力
助成金の支給または不支給の決定に係る審査に必要であると管轄労働局長が認める書類等を管轄労働局長の求めに応じ提出または提示する、管轄労働局長の実地調査に協力する等、審査に協力する事業主であること
労働局からの書類提出の求めや、実地調査に応じること。協力しないと不支給になります。
⑨ 訓練経費を全額負担していること
受講料を従業員に一部でも負担してもらった場合は、助成金の対象になりません。会社が全額負担する必要があります。
【労働者の要件】
訓練を受ける労働者は、次の要件を満たす必要があります。
① 雇用保険の被保険者であること
「助成金を受けようとする事業主の事業所において、被保険者であり、訓練実施期間中において、被保険者であること」
正社員だけでなく、雇用保険に入っているパート・契約従業員も対象になります。一方で、雇用保険に入れない会社役員や個人事業主は対象外です。
② 計画届に記載された者であること
職業訓練実施計画届時に提出した「定額制サービスによる訓練に関する対象労働者一覧(様式第3-2号)」に記載のある被保険者であること
事前に届け出た従業員以外が受講しても、助成金の対象にはなりません。
③ 受講時間数の要件
支給対象労働者が修了した訓練の標準学習時間の合計時間数が1時間以上の者のこと
1人あたり最低1時間以上の職務関連講座を修了していることが必要です。
【訓練の要件】(★最重要)
定額制訓練として認められるには、以下の①~⑦のすべてを満たす必要があります。
① 定額制サービスによる訓練であること
「定額制サービスによる訓練」とは、事業主が定額の料金を支払うことで、被保険者が期間中に複数の訓練を受講することができるサービスをいいます。
月額・年額など、受講者数や受講講座数に関わらず一定額を支払う契約形態が該当します。
② 業務上義務付けられ、労働時間に実施される訓練であること(★絶対条件)
業務上義務付けられ、労働時間に実施される訓練であること
申請事業主が業務命令として労働時間に実施する意図がなく、専ら労働者が自発的に訓練を受講している場合は、助成対象となりません。
業務時間外の自己啓発では対象外です。必ず就業規則や研修規程で「業務時間内に受講すること」を明記し、賃金を支払う必要があります。
③ OFF-JTであること
OFF-JTであること
通常の業務を離れて行う訓練である必要があります。
④ 事業外訓練であること
「事業外訓練」であること。広く当該訓練等の受講者を募るために、計画届の提出日時点で、自社(教育訓練機関)のホームページに当該訓練等の情報を掲載していない民間の教育訓練機関である場合には支給対象としない(SNSやメールなどで募集している場合は、広く当該訓練等の受講者を募っていると認められません)
外部の研修機関(Udemy、Schooなど)が一般向けに販売しているサービスが対象です。自社専用のクローズドなサービスは対象外となる場合があります。
⑤ 職務関連教育訓練であること(5割要件)
職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練「職務関連教育訓練」であること。定額制サービスの中で受講が可能な教育訓練の中に支給対象外訓練(趣味教養型訓練等)が含まれている場合、全体の講座数に占める支給対象訓練の講座数の割合が5割以上であること(5割要件)
定額制サービスの中に趣味教養型講習など支給対象外訓練が含まれている場合、定額制サービスの全講座数のうち、5割以上が趣味教養型講習など支給対象外訓練である場合には、当該定額制サービスは助成対象外となります。
全講座の半分以上が、仕事に関連する専門的な内容である必要があります。
⑥ 10時間要件
各支給対象労働者の受講時間数を合計した時間数が、支給申請時において10時間以上であること(10時間要件)
「支給対象労働者」とは、定額制サービスに含まれる教育訓練(職務関連教育訓練に限る)を修了した者であり、その修了した訓練の標準学習時間の合計時間数が1時間以上の者のことをいいます。
「支給対象労働者の受講時間数」とは、支給対象労働者が修了した訓練の標準学習時間の合計時間数のことをいいます。
「標準学習時間」とは、実際に訓練を視聴した時間ではなく、訓練を修了するために通常必要な時間として、あらかじめ受講案内等によって定められているものをいいます。
支給対象労働者全員の受講時間(標準学習時間)の合計が10時間以上必要です。
【10時間要件の考え方】
・Aさんが3時間、Bさんが4時間、Cさんが5時間受講した場合 → 合計12時間で要件クリア
・趣味教養型講座の受講時間は計上できません
・1人あたり1時間未満の場合、その人は支給対象労働者になりません
⑦ 訓練の実施期間は1年以内であること
訓練の実施期間は1年以内であること。訓練の実施期間とは、原則として、定額制サービスの契約期間をいいます。
契約期間が1年を超える場合は、1年ごとに分けて申請することができます。
次の章では、これらの要件を踏まえた申請の流れを見ていきます。
5. 全体フロー(申請から受給までの流れ)
(以下、人への投資促進コースのご案内P18、P20、P21、P23より引用)
定額制訓練の助成金は、サブスク研修を契約してから後で申請しても1円ももらえません。必ず”事前届出”が必要です。計画作成から受給まで、スケジュール管理を徹底し、一つずつ確実に進めていきましょう。
1. 事前準備(社内体制の整備)
申請の前提として、以下を社内で決めておく必要があります。
事業内職業能力開発計画の策定
社内で”職業能力開発推進者”を選任し、”事業内職業能力開発計画”を作成して従業員に周知します。
「どのような人材を育てたいか」という自社の人材育成の基本方針をまとめた計画書を作成し、従業員(労働組合または労働者代表)の意見を聴いて、全従業員に周知します。
職業能力開発推進者の選任
社内で人材育成の責任者(役員、人事担当部課長など)を1名選びます。
サービスの選定
どのサブスク型研修サービスを使うか決めます。以下の点を必ず確認してください。
・5割要件を満たすか(全講座の半分以上が職務関連の内容か)
・事業外訓練要件を満たすか(ホームページで公開募集されているか)
受講ルールの策定
「業務上義務付けられ、労働時間に実施される訓練であること」という要件を満たすため、「業務時間内に受講すること」を社内ルールとして明確にします。
研修規程や社内通達などで、受講時間を労働時間として扱い、賃金を支払うことを文書化しておきましょう。
2. 計画届の提出(契約開始の1か月前まで・★重要期限)
具体的な契約日程が決まったら、「職業訓練実施計画届」を労働局へ提出します。
提出期限:契約期間の初日の1か月前まで(原則、訓練開始日の6か月前から1か月前の間)
※もし期限に遅れてしまったら?
1日でも遅れると、予定していた開始日での申請は一切受け付けてもらえません。この場合は「契約期間の開始日を後ろにずらす(1か月以上先の日程に変更する)」ことで、期限内提出の要件を満たすように調整しましょう。
ただし、計画届の提出期間を徒過した場合であっても、契約期間の初日が令和4年4月1日以降である定額制サービスは部分的に助成対象となり得ます。
既に契約済みのサービスでも、令和4年4月1日以降の契約であれば、計画届を出した日以降の部分について助成を受けられる場合があります。詳細は労働局へご相談ください。
提出書類
・職業訓練実施計画届(様式第1-1号)
・定額制サービスによる訓練に関する対象労働者一覧(様式第3-2号)
・定額制サービスによる訓練に関する事業所確認票(様式第14-1号)
・サービスの契約書・受講案内(講座一覧が分かるもの)
・その他、労働局が指定する書類
3. 訓練の実施
認定された計画通りに訓練を行います。
受講管理
誰が、いつ、どの講座を、何時間受講したかを記録し、出勤簿・賃金台帳と照合できるようにしておきます。「定額制サービスによる訓練実施結果報告書(様式第8-5号)」の作成に必要となります。
労働時間としての扱い
受講時間は労働時間として扱い、賃金を支払います。労働局から、出勤簿・賃金台帳の提出を求められたり、実地調査や労働者・関係者への聴取を実施されたりすることもあります。また、パソコンのログイン・ログアウトの記録などの提出を求められることもあります。
10時間要件の確認
支給対象労働者全員の受講時間(標準学習時間)の合計が10時間以上になるよう、定期的に進捗を確認します。
4. 支給申請(訓練終了後2か月以内)
最後に、助成金をもらうための申請を行います。
提出期限
訓練の実施期間の最終日の翌日から起算して2か月以内
(例:契約期間が4月1日~9月30日の場合、11月30日が提出期限です)
早期申請の特例
訓練の実施期間の最終日より前に、10時間要件等支給要件を満たした場合は、支給要件を満たした日の翌日から申請することが可能です。
契約期間の途中でも、10時間要件を満たせば早めに申請できます。
提出書類
・支給申請書(様式第4-2号)
・定額制サービスによる訓練実施結果報告書(様式第8-5号)
・出勤簿・賃金台帳
・訓練の修了を証明する書類(受講履歴、修了証など)
・その他、労働局が指定する書類
5. 審査・支給決定
労働局による審査(数か月から半年程度かかります)を経て、問題がなければ「支給決定通知書」が届き、指定口座に助成金が振り込まれます。
審査でよく見られるポイント
審査の際、労働局の職員が事業所を訪問する「実地調査」が入ることがあります。また、この調査への協力は助成金受給の必須要件です。調査を拒否したり、協力しなかったりした場合、助成金は不支給となります。
日々の受講記録や出勤簿(タイムカード)の記録を正確に行い、いつ調査が入っても対応できるように準備しておきましょう。
次の章では、申請時によくある質問をまとめています。
6. よくある質問(Q&A)
(以下、人への投資促進コースのご案内P21より引用)
Q1. 従業員が自主的に受講した時間も10時間要件に計上できますか?
A. いいえ、計上できません。
業務時間内の受講に加えて、自主的にも学んでいる分には問題ありませんが、業務命令として労働時間に実施した分のみが助成金の対象です。
Q2. 計画届に載っていない従業員が受講してもいいですか?
A. 受講自体は可能ですが、助成金の対象にはなりません。
ただし、所定期日までに変更届を提出すれば、その労働者も支給対象労働者となります。
Q3. 契約期間の途中で従業員が退職した場合はどうなりますか?
A. 自己都合退職なら、10時間要件を満たせば経費は対象になります。
会社の責任ではない退職であれば、その方の分も助成の対象に含まれ得ます。
Q4. 「Udemy」や「Schoo」などのサブスク研修は、すべて対象になりますか?
A. サービスそのものではなく、以下の要件を満たすかどうかで判断されます。
・全講座の5割以上が職務関連の内容か(5割要件)
・ホームページで一般向けに公開募集されているサービスか(事業外訓練要件)
・業務時間内に受講義務化されているか
これらを満たせば、Udemy、Schooなどの主要なサービスは対象になります。
Q5. 契約期間が1年を超える場合はどうなりますか?
A. 1年ごとに分けて申請できます。
たとえば、2年契約の場合、1年目と2年目でそれぞれ申請を行えば、両方とも助成を受けられます。
7. まとめ
定額制訓練は、UdemyやSchooなどのサブスク型研修サービスを、業務時間内に従業員へ受講してもらう場合に活用できる助成金コースです。契約料の60~75%が助成されるため、たとえば月額10万円のサービスを半年間利用しても、実質的な負担は数万円程度に抑えることができます。
この制度の特徴は、1つの契約で複数の従業員がそれぞれ必要な講座を選んで学べる点にあります。営業担当には交渉術やマーケティングを、経理担当には会計ソフトの操作を、というように、部門や役職に応じた柔軟な研修が実現できます。
ただし、サブスク型の研修であれば何でも対象になるわけではなく、”業務命令”として”労働時間内”に実施すること、全講座の5割以上が職務関連であること、受講時間の合計が10時間以上であることなど、いくつかの要件をクリアする必要があります。また、契約開始の1か月前までに計画届を提出しなければならないため、スケジュール管理も重要です。
もし業務時間外の自己啓発として活用したい場合は、「自発的職業能力開発訓練」など別のコースへの切り替えも選択肢になります。
まずは、自社で使いたいサービスが5割要件を満たすか確認し、契約開始日から逆算して計画届の提出スケジュールを組むところから始めましょう。要件が複雑で自社が対象になるか判断が難しい場合は、お近くの都道府県労働局、または助成金に詳しい社会保険労務士へご相談されることをおすすめします。
8. 参考
※本記事は2026年2月時点の法令・情報に基づき作成しています。
助成金の支給要件は頻繁に変更されるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。
【参照資料】
厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内(詳細版)(令和7年4月1日版)」
厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)支給要領(令和7年4月1日版)」
厚生労働省:人材開発支援助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html