「今の仕事を続けながら、半年間だけ集中して語学を身につけたい」
「大学院に入って専門性を高めたい。でも、休んだら収入がなくなる。そのリスクを考えると、なかなか踏み出せない」——そう感じている方に知ってほしい制度があります。
スキルアップのために休暇をとった方に、休暇中の生活費として国から給与の一定割合が支給される制度があります。
それが「教育訓練休暇給付金」です。仕事を辞めなくても受け取れるのが大きな特徴です。
ただし受け取るには、勤務先が就業規則でこの休暇制度を設けていること、自分自身が一定の加入要件を満たしていることなどが必要です。申請の手順も失業給付とは異なります。
この記事では、受け取れる金額や対象となる休暇の条件、手続きの流れ、受け取る前に必ず知っておきたい注意点まで順番に整理していきます。
【こんな方におすすめ!】
・語学留学や海外大学院への進学を検討しているが、その間収入がなくなるのが心配でなかなか動けずにいる
・大学院や専門学校に入って資格を取りたいが、有給休暇だけでは期間が足りない
・雇用保険に5年以上加入しているが、休暇中でも給付を受け取れるか確認したい
・退職せずに、まとまった期間学びに集中できる方法を探している
・会社との話し合いをスムーズに進めるために、制度の内容をあらかじめ把握しておきたい
1. 教育訓練休暇給付金とは?
「教育訓練休暇給付金のご案内」では、この制度を次のように説明しています。
「労働者が離職することなく、教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合、その訓練・休暇期間中の生活費を保障するため、失業給付(基本手当)に相当する給付金として、賃金の一定割合を支給する制度」
つまり、仕事を辞めずに休暇をとって学びに集中した期間、その間の生活費を国が一部カバーしてくれる制度ということです。
“離職しないと雇用保険の給付は受けられない”と思っている方も多いですが、この制度は在職中でも受け取れます。
支給額のイメージとして、月収25万円の方が半年間休暇をとった場合、毎月約17万円程度を受け取りながら学業に専念できます(支給額は休暇前の収入等によって変わります)
給付を受けるためには、“取得した休暇が対象の休暇かどうか”と、“自分自身が対象の労働者かどうか”、この2点を満たす必要があります。どちらか一方でも欠けると対象外になります。
それぞれの条件については、次の章で詳しく説明します。
なお、雇用保険には「一般被保険者」のほかに「高年齢被保険者」「短期雇用特例被保険者」「日雇労働被保険者」という区分があります。
これらの方々は失業給付の仕組みが一般被保険者とは異なるため、本制度の対象外となっています。
「教育訓練給付金」との違い
似た名前の制度に「教育訓練給付金」があります。どちらも学びを支援する雇用保険の制度ですが、補助する対象が異なります。
| 教育訓練給付金 | 教育訓練休暇給付金 | |
|---|---|---|
| 何を補助するか | 受講費用(授業料・入学料等) | 休暇中の生活費 |
| 休暇の取得 | 不要(働きながら受講できる) | 必要(30日以上の無給休暇) |
| 会社の就業規則 | 不要 | 必要(休暇制度の規定が前提) |
| 加入期間の要件 | 1〜2年以上 | 5年以上 |
| 給付のタイミング | 修了後に一括または定期的に支給 | 休暇中に30日ごとに支給 |
つまり、「講座の費用を抑えたい」なら教育訓練給付金、「休暇中の収入を確保したい」なら教育訓練休暇給付金が対応します。
対象の講座であれば両方を同時に活用することもできます。
2. 受け取るための要件を確認しよう
給付を受けるには、”自分自身が対象の労働者かどうか”と”取得した休暇が対象の休暇かどうか”の2つを満たす必要があります。それぞれの要件を詳しく見ていきます。
労働者の要件
- 休暇開始前の2年間に、12か月以上の被保険者期間があること
「被保険者期間」とは、雇用保険に加入して働いていた期間のことです。
原則として、1か月のうち11日以上働いた月が1か月としてカウントされます。転職経験がある場合は、前職の加入期間も通算できます。 - 休暇開始前に、雇用保険に5年以上加入していた期間があること
これまでの職歴を合計して5年以上雇用保険に加入していたかを確認するものです。
たとえば直近2年間フルで働いていても、社会人になってからの年数がまだ浅い場合は、この要件を満たせないことがあります。
また、過去に失業給付(基本手当)・教育訓練休暇給付金・出生時育児休業給付金を受け取ったことがある場合、その受給前の加入期間はカウントに含められません。
転職経験がある方や育休を取得したことがある方は、実際に使える加入期間が想定より短くなる可能性があるため、事前にハローワークで確認しておくことをおすすめします。
休暇の要件
- 就業規則や労働協約等に定められた休暇制度に基づく休暇であること
勤務先が就業規則でこの休暇制度を設けていることが前提です。労働協約(会社と労働組合が書面で締結した取り決め)でも代替できます。
「教育訓練休暇」という名称でなくても、「サバティカル休暇」など教育訓練を目的として使える休暇制度であれば対象になります。まずは就業規則を確認するか、人事担当者に問い合わせてみましょう。 - 自分から希望し、会社の承認を得て取得する30日以上の無給の休暇であること
“自分から取得する”という点が重要です。つまり、会社の指示で受ける研修は対象外です。
また、休暇は”完全に無給”であることが条件です。給与の一部でも支払われる場合は対象外となる可能性があります。
なお、休暇中に有給休暇を取得した日や収入を伴う就労を行った日については、給付金の支給対象外となります。
ただし、会社からの手当(受講費用や受験料の一部補助など)は就労の対価ではないため、これらの手当が支給されていた場合、支給対象外にはなりません。
取得にあたっては、休暇の期間・目的・学習内容などを会社と合意し、「教育訓練休暇取得確認票」に記録してもらう必要があります。 - 次のいずれかに当てはまる教育訓練を受けるための休暇であること
・大学・大学院・短大・高専・専修学校・各種学校が提供する教育訓練
・教育訓練給付(一般・特定一般・専門実践)の対象として厚生労働大臣が指定した講座を提供する機関の教育訓練
・語学留学・司法修習・海外大学院での修士号取得など、職業安定局長が定めるもの
趣味や教養目的の習い事は対象外です。
注意点
【受給後は加入期間がリセットされる】
教育訓練休暇給付金を受け取ると、それ以前の雇用保険の加入期間が通算されなくなります。将来また利用したい場合は、受給後に新たに5年以上の加入期間を積み上げ直す必要があります。
また、近いうちに転職や離職を考えている場合、受給によって失業給付に必要な加入期間もリセットされます。受け取る前に、ハローワークで今後への影響をしっかり確認しておきましょう。
【教育訓練給付金との併用について】
「教育訓練給付金」は受講費用を補助する制度、「教育訓練休暇給付金」は休暇中の生活費を補助する制度です。
目的が異なるため、対象の講座であれば同時に活用できる可能性があります。
たとえば、厚生労働大臣が指定する「専門実践教育訓練給付金」の対象講座を受講しながら教育訓練休暇を取得した場合、受講費用の補助と生活費の補助を合わせて受け取れるケースがあります。
3. 実際にどう使われる?活用事例
【事例1:語学スキルを身につけるために半年間留学したケース】
商社に勤める田中さん(35歳・月収約25万円)は、海外取引先との折衝を担当することになりましたが、英語力に自信が持てず、半年間集中して学びたいと考えていました。会社の就業規則には「サバティカル休暇制度」が設けられており、上司に相談したところ承認を得られました。
雇用保険の加入期間が8年あったため受給要件を満たしており、休暇期間中は毎月約17万円の給付金を受け取りながら語学留学に専念できました。帰国後は業務に復帰し、英語力を活かした商談を担当しています。
| 労働者の要件 | ○ |
| 休暇の要件 | ○ |
【事例2:就業規則に制度がなく、受け取れなかったケース】
ITエンジニアの鈴木さん(40歳)は、データサイエンスの修士号を取得するため1年間の休暇取得を希望しました。しかし、勤務先の就業規則には教育訓練のための長期休暇制度が設けられておらず、本制度を利用することができませんでした。
まずは会社に就業規則の整備を相談することが第一歩です。すぐに制度整備が難しい場合は、在職しながら講座を受講して費用の一部を受け取れる「専門実践教育訓練給付金」の活用も選択肢のひとつです。
| 労働者の要件 | ○ |
| 休暇の要件 | ×(就業規則に教育訓練のための休暇制度の定めがない) |
【事例3:受給後に転職を考えていたケース】
営業職の山田さん(38歳)は、資格取得のため3か月間の無給休暇を取得し、給付金を受け取りました。資格取得後は転職を考えていましたが、給付金を受け取ったことで休暇開始前の被保険者期間がリセットされており、離職後すぐには失業給付を受け取れない状況になっていました。
教育訓練休暇給付金を受け取ると、それ以前の雇用保険の加入期間が通算されなくなる仕組みです。近いうちに転職や離職を考えている場合は、受給前にハローワークで影響をしっかり確認しておくことが重要です。
| 労働者の要件 | ○(ただし受給後は被保険者期間がリセットされる点に注意) |
| 休暇の要件 | ○ |
4. 申請の流れ
給付を受けるためには、会社とハローワークの両方で手続きが必要です。大きく「休暇前の準備」「休暇開始時の申請」「休暇中の定期報告」の3つのステップに分かれます。
- 休暇前の準備(休暇開始前)
まず、会社の就業規則に教育訓練のための休暇制度が設けられているかを確認します。制度がある場合は、受けたい教育訓練の内容・期間・目的を会社に申し出て承認を得ます。このとき、「教育訓練休暇取得確認票」に必要事項を会社に記録してもらいます。
また、自分の雇用保険の加入期間が要件を満たしているかを事前にハローワークで確認しておくと安心です。 - 休暇開始時の申請(休暇開始後10日以内)
休暇が始まったら、まず会社がハローワークに「教育訓練休暇開始時賃金月額証明書」を提出します(会社側の手続きです)。その後、ハローワークから交付された申請書類に必要事項を記入し、ハローワークに提出して受給資格の決定を受けます。
このとき必要な書類は次のとおりです。
・教育訓練休暇給付金支給申請書(会社経由でハローワークから受け取るもの)
・賃金月額証明書(会社経由でハローワークから受け取るもの)
・教育訓練休暇取得確認票(会社に記録してもらったもの)
・本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証等)
・通帳またはキャッシュカード - 休暇中の定期報告(30日ごと)
受給資格が認められた後は、30日ごとにハローワークに「教育訓練休暇取得認定申告書」を提出します。初回は教育訓練を受けていることを証明する書類(受講証明書・領収書等)も必要ですが、2回目以降は誓約書の提出で代替できます。
この定期報告のたびに給付金が支給されます。
5. 給付日数・給付金額の目安
給付日数
給付を受けられる日数は、雇用保険の加入期間によって異なります。
| 加入期間 | 給付日数 |
| 5年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
ちなみに、失業給付(自己都合退職)と比較すると給付日数は同じですが、加入期間が5年未満の場合は教育訓練休暇給付金を受け取ることができません。
| 加入期間 | 教育訓練休暇給付金 | 失業給付(自己都合退職) |
| 1年以上5年未満 | ×(対象外) | 90日 |
| 5年以上10年未満 | 90日 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 | 150日 |
なお、給付を受けられるのは休暇開始日から1年以内に限られます。休暇が長引いても、1年を超えた分は支給されません。
給付金額
給付金の額は、失業給付(基本手当)と同じ計算方法で算出されます。
【賃金日額の計算】
まず、休暇前6か月の賃金総額をもとに「賃金日額」を算出します。
賃金日額 = 休暇前6か月の賃金総額 ÷ 180
賞与や臨時に支払われた賃金は含まれません。毎月の基本給・残業代・各種手当が対象です。
【給付率】
給付率は賃金日額によって異なり、賃金が低いほど高い率が適用されます。賃金日額が5,340円未満の場合は80%、13,140円を超えると50%となり、その間は段階的に変化します。
賃金日額には上限・下限があります(令和7年8月1日以降)。
| 賃金日額 | 基本手当日額
上限(29歳以下) | 14,510円 | 7,255円
上限(30〜44歳) | 16,110円 | 8,055円
上限(45〜59歳) | 17,740円 | 8,870円
上限(60〜64歳) | 16,940円 | 7,623円
下限(全年齢) | 3,014円 | 2,411円
【支給額の目安(30〜44歳の場合)】
休暇前の月収(額面)|賃金日額(目安)|1日あたりの給付金|月あたりの給付金(30日換算)
約15万円 |約5,000円 |約4,000円 |約12万円
約25万円 |約8,333円 |約5,700円 |約17万円
約35万円 |約11,667円 |約6,500円 |約19万5,000円
約45万円 |約15,000円 |約7,500円 |約22万5,000円
※賃金日額は月収÷30で算出した目安です。実際は直前6か月の賃金総額÷180で計算されます。
※年齢によって上限額が異なります。月収が高い方は上限額が適用されることがあります。
6. よくある質問
Q. 休暇中にアルバイトや副業をしてもいいですか?
収入を伴う就労を行った日は給付金の支給対象外になります。副業・アルバイト自体が禁止されているわけではありませんが、就労した日の分は給付されません。
Q. 休暇期間を途中で変更・延長したい場合はどうすればいいですか?
期間や内容を変更する場合は、改めて会社と合意し直し、「教育訓練休暇取得確認票」を更新してもらう必要があります。変更後の内容をもとにハローワークにも報告が必要です。
Q. 休暇を途中で切り上げて復職した場合はどうなりますか?
実際に取得した日数分の給付になります。残りの給付日数は消滅するため、受給前に学習内容・期間をしっかり計画したうえで休暇を取得することが大切です。
Q. 会社に就業規則の整備を相談したが断られた場合はどうすればいいですか?
就業規則に制度がない場合は本制度を利用することができません。
有給休暇や就業後の時間を組み合わせながら学習時間を確保し、在職しながら受講できる講座を選ぶことが現実的な選択肢になります。
受講費用の補助を受けたい場合は「専門実践教育訓練給付金」や「一般教育訓練給付金」の活用もあわせて検討してみてください。
Q. 教育訓練給付金と同時に受け取ることはできますか?
可能です。
教育訓練給付金は受講費用の補助、教育訓練休暇給付金は生活費の補助と目的が異なるため、厚生労働大臣が指定する対象講座を受講しながら教育訓練休暇を取得している場合は、両方を同時に受け取れます。詳細はハローワークにご確認ください。
7. まとめ
教育訓練休暇給付金は、在職したまま長期の学びに専念したい方にとって、生活費の不安を大きく和らげてくれる制度です。
ただし、使うためには会社の就業規則に制度が整っていること、自分自身が要件を満たしていることの両方が必要です。
まず確認すべきことを整理すると、次の3ステップになります。
- 会社の就業規則を確認する ── 教育訓練のために使える休暇制度が設けられているか。なければ人事担当者に相談する。
- 自分の雇用保険の加入期間を確認する ── 直近2年間で12か月以上、かつ通算5年以上あるか。ハローワークで事前に確認できます。
- 受けたい教育訓練が対象かを確認する ── 大学・大学院・語学留学・指定講座など、対象の教育訓練かどうかをあわせて確認しましょう。
近いうちに転職・離職を検討している場合は、受給によって加入期間がリセットされる点に注意が必要です。受給前にハローワークで影響を確認しておきましょう。

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※本記事は2026年3月時点の法令・情報に基づき作成しています。
【参照資料】
・教育訓練休暇給付金(厚生労働省)
