資格を取って仕事の幅を広げたい、転職で評価される専門性を身につけたい、受講料が高めでも将来につながる講座に挑戦したい。そんなときに検討したい制度が、特定一般教育訓練給付金です。
特定一般教育訓練給付金は、一般教育訓練給付金より支給率が高く、要件を満たすと受講費用の40%〜最大50%が支給されます。受講前に必要な手続きがあるため、申し込み前の準備がとても重要です。
この記事では、対象講座、受給要件、受講前手続き、支給額、申請期限を順番に整理し、実際に使うときに迷いやすいポイントを具体的に解説します。
・一般教育訓練より給付率が高い制度を使いたい
・受講前キャリアコンサルティングや受給資格確認の進め方を知りたい
・修了後の追加給付(資格取得・就職)まで含めて支給額を把握したい
・電子申請や代理申請も活用して、手続き漏れを防ぎたい
1. 特定一般教育訓練給付金とは?
教育訓練給付制度はもともと一般教育訓練(給付率20%)と専門実践教育訓練が中心でしたが、キャリアアップ効果の高い”特定”の一般教育訓練をより後押しするため「特定一般教育訓練給付金」の名で2019年10月に始まりました。
イメージとしては、一般教育訓練は「簿記や語学など幅広い講座をまず学びたい人向け」、特定一般教育訓練は「業務資格やIT資格など、仕事で評価される資格を短〜中期で取りたい人向け」、専門実践教育訓練は「看護師養成課程のように、より長期間で専門職を目指す人向け」という位置づけです。給付率だけでなく、手続きの重さも異なり、特定一般教育訓練は一般より手続きが増える一方で、専門実践よりは取り組みやすい中間の区分です。
対象講座を修了すると受講費用の40%が支給され、さらに資格取得と就職につながった場合は追加で10%が支給されます。つまり、「受講して終わり」ではなく、「資格を取って仕事につなげる」ところまで後押しする仕組みです。
活用イメージとしては、介護支援専門員実務研修、特定行為研修、喀痰吸引等研修、ITSSレベル2の資格対策講座など、業務に直結しやすい講座を受ける場面です。受講料が高めでも、給付金を前提に計画すると挑戦しやすくなります。
一般教育訓練給付金との大きな違いは、受講前に「訓練前キャリアコンサルティング」と「受給資格確認」が必要になる点です。これは、受講目的と就業目標を事前に整理し、受給要件を満たした状態で講座に入ることで、ミスマッチ受講や手続き漏れを防ぐためです。準備をせずに受講を開始すると、給付対象外になる可能性があるため注意が必要です。
2. どんな講座・資格が対象になる?
(以下、特定一般教育訓練「教育訓練給付金」のご案内より)
特定一般教育訓練の対象講座は、次の3区分です。イメージしやすいように、代表的な講座名・資格名を挙げると次のとおりです。
- 業務独占資格・名称独占資格・必置資格に関する養成課程、または資格取得を目標とする課程
・介護支援専門員実務研修
・介護職員初任者研修
・生活援助従事者研修
・特定行為研修
・喀痰吸引等研修 - ITSSレベル2の情報通信技術関係資格の取得を目標とする課程
・基本情報技術者試験対策講座
・情報セキュリティマネジメント試験対策講座
※上記は例であり、実際に給付対象になるかは「特定一般教育訓練」として指定されている講座かどうかで決まります。 - 短時間の職業実践力育成プログラム・キャリア形成促進プログラム
・大学等の職業実践力育成プログラム(60時間以上120時間未満)
・専修学校のキャリア形成促進プログラム(60時間以上120時間未満)
同じ資格名でも、講座ごとに指定の有無が異なります。申し込み前に、教育訓練給付対象講座検索システムで対象講座かどうかを必ず確認してください。
3. 対象になる人(受給要件)
職中でも離職中でも対象になる
| 支給要件期間 | 受講可能なタイミング | |
| 在職中 | 3年(初回は1年) | (支給要件期間を満たせば)いつでも |
| 離職中 | 3年(初回は1年) | 退職後1年以内(育児などの事情があれば最大20年まで延長可能) |
在職中か離職中かにかかわらず、受給には「支給要件期間」が3年以上であることが前提です(初めて教育訓練給付金を使う方は、当面の間1年以上で対象となります)
※「支給要件期間」とは、受講開始日までの雇用保険の被保険者期間(雇用保険に加入していた期間)です。
支給要件期間は、1つの職場での継続加入に限りません。転職で職場が変わった場合でも、前の職場での加入期間と合算できます。ただし、退職から次の就職までの空白期間が1年以上あると、前の加入期間は通算されません。
また、過去に教育訓練給付金を受けたことがある方は、その受講開始日より前(前回の講座の開始日より前)の加入期間はカウントされません。つまり一度受講するとそれまでの雇用保険の加入期間はリセットされるということです。したがって、前回の受講開始日以降に新たに通算3年以上が必要です。
ただし、あくまで、受講”開始日”にリセットされるので(受講”終了日”にリセットではない)、受講中も雇用保険に加入していれば(次回の講座に利用できる)新たな加入期間はスタートします。
なお、いずれかの区分の給付金を受けた場合、その受講開始日から3年以内は同じ区分・他の区分を問わず給付金を受け取れません。つまり、前回受講した講座が「一般」で、今回受講する講座が「専門」であろうと、加入期間がリセットされる事には変わりません。
自分が対象者かどうかわからない場合
ハローワークの窓口またはネットから「支給要件照会」をしておくと、自分が受給要件を満たしているかを事前に確認できます。
特に、転職を短期間で繰り返した、離職から受講開始まで1年を超えそう、過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合などは、先に照会してから申し込むことをおすすめします。
照会は、本人来所以外にも、郵送、電子申請、代理人による提出も可能です。
4. 対象になる経費・ならない経費
対象になる経費
- 入学料
- 受講料(最大1年分)
- キャリアコンサルティングの費用(上限2万円まで)
教育訓練経費として認められるのは、申請者本人が支払ったもののみです。
たとえば、会社や家族がそのまま支払った分、後で全額キャッシュバックされる予定の分は、本人負担とはいえないため対象外になります。会社が立替払いする場合でも、本人負担の事実を証明できる形で精算されていないと教育訓練経費として認められません(一般教育訓練給付金Q&A~ Q9、Q13より)
受講開始日前1年以内に、国家資格キャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングを受けた場合は、その費用も教育訓練経費に上限2万円まで加算できます。
※「キャリアコンサルティング」とは、これまでの職務経験や今後の働き方の希望を整理しながら、自分に合う学び直しの方向性を明確にする面談のことです。講座選びのミスマッチを減らし、修了後に資格やスキルをどう仕事につなげるかまで考えられる点がメリットです。
キャリアコンサルティングの受け方や相談先、準備しておくとよい内容は「キャリアコンサルティング活用ガイド(仮)」で詳しく解説しています。
また、次の場合は差し引きが必要です。
・自治体などの割引制度を利用した場合:割引後の実負担額が支給されます。
・事業主などから受講費補助を受けた場合:補助額のうち入学料・受講料に充てられる分を差し引いた額が支給されます。
対象にならない経費
次の費用は教育訓練経費に含まれません。
・検定試験の受験料
・受講に必ずしも必要でない補助教材費
・交通費
・パソコンなどの器材費
・クレジット会社に対する手数料
・支給申請時点で未納の額
これらは、受講料とは違い講座そのものの受講対価ではない費用だからです。
注意点
領収書は必ず指定教育訓練実施者(講座を実施する学校・スクール本体)が発行したものを使用してください。
販売代理店が発行した領収書は、支給申請の確認書類として認められません(一般教育訓練給付金Q&A~ Q12より)
※ここでいう「販売代理店」とは、講座を実施する学校・スクール本体とは別に、申込受付や受講料の決済だけを代行している仲介会社や販売会社のことです。たとえば、資格講座の比較サイト経由の申込窓口会社、講座運営会社とは別法人の営業会社、受講料の収納を代行する決済代行会社などが該当します。
5. いくらもらえる?支給額と計算例
(以下、特定一般教育訓練「教育訓練給付金」のご案内より)
特定一般教育訓練給付金の支給額は、受講開始日によって扱いが変わります。
支給額:教育訓練経費(入学料と受講料)の40% ※支給額が4,000円以下の場合は支給されません。
さらに、資格を取得して就職(※)した場合は10%を追加され、合計で最大50%となります。
支給額の上限:20万円(資格取得&就職時25万円)
※訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合を指します。したがって、正社員として就職した場合だけでなく、パートやアルバイトとして就職した場合も対象となります。
計算例
・入学料 50,000円+受講料 250,000円=300,000円
修了時:300,000円×40%=120,000円
資格取得・就職後:300,000円×10%=30,000円
合計支給額:150,000円
・入学料 80,000円+受講料 520,000円=600,000円
修了時:600,000円×40%=240,000円 → 上限20万円
資格取得・就職後:600,000円×10%=60,000円 → 上限5万円
合計支給額:250,000円
なお、受講開始日が令和6年9月30日以前の場合、教育訓練経費の40%(上限20万円)のみとなります。
6. 申請の流れ
全体スケジュール
特定一般教育訓練給付金は、受講前手続きと修了後手続きの2段階で進みます。
- 受講前に受給資格の確認(支給要件照会)を行う
受講する前に、そもそも自分に受給資格があるかの確認をしましょう。受給資格がないと、講座を受講しても給付金を受けることができません。
ハローワークの窓口またはネットから「支給要件照会」をしておくと、自分が受給要件を満たしているかを事前に確認できます。 - 指定講座の候補を探して選ぶ
候補の探し方は、厚労省の「教育訓練講座検索システム」での絞り込み、学校・スクールへの直接問い合わせ、ハローワークでの確認など複数あります。
講座名が似ていても、指定講座と非指定講座があるため、最終的に「特定一般教育訓練として指定されているか」を確認してから申し込むことが重要です。
あわせて、講座の実施期間が指定期間内か、受講開始日がいつになるかも確認しておくと後の手続きがスムーズです。 - 受講前にキャリアコンサルティングを受ける
訓練対応キャリアコンサルタントとの面談で、受講目的と就業目標を整理し、ジョブ・カードの交付を受けます。
面談では「なぜその資格を取りたいのか」「資格取得後にどの職種・業務で活かしたいか」「現在の経験やスキルとの差はどこか」といった点を確認されるのが一般的です。あわせて、受講期間中の学習時間の確保方法や、修了後の就職・在職見込みについても具体的に整理します。
事前に、これまでの職務経歴、資格取得の目的、受講後に目指す働き方をメモして持参すると、面談がスムーズに進みやすくなります。 - 受講前に受給資格確認を行う
受講開始日の2週間前までに、受給資格確認票とジョブ・カードをハローワークへ提出します。郵送の場合も、2週間前までの消印が必要です。 - 講座を受講開始する
受給資格確認を終えたあとに講座を開始します。通学制は所定の開講日、通信制は教材発送日が受講開始日になるため、受講開始日を記録しておきます。 - 講座を修了して必要書類を受け取る
修了後は、教育訓練修了証明書と領収書を必ず受け取り、記載内容を確認します。領収書の宛名、金額、発行者名(指定教育訓練実施者)が申請条件に合っているかをここでチェックしておくと、差し戻しを防げます。 - 訓練修了後に本体給付を申請する
訓練修了日の翌日から1か月以内に、ハローワークへ本体給付の申請を行います。 - 資格取得・就職後に追加給付を申請する
資格取得・就職した翌日から1か月以内に、追加給付の申請を行います。
期限を過ぎると支給対象外になるため、受講開始日・修了日・資格取得日ごとにカレンダー管理しておくことが重要です。
申請に必要な書類
(以下、特定一般教育訓練「教育訓練給付金」のご案内より)
主な書類は、受講開始前と修了後で分かれます。提出段階ごとに「何を確認する書類か」を理解しておくと、差し戻しを防ぎやすくなります。
受講開始前(受給資格確認)
・教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票
受講開始前の受給資格を確認するための基本書類です。受講予定講座や受講開始予定日、本人情報を記入します。任意で行う「支給要件照会」とは別の手続きで、特定一般教育訓練給付金ではこの受給資格確認票の提出が必須です。
・ジョブ・カード
訓練前キャリアコンサルティングの結果を反映した書類です。受講目的と就業目標が整理されているかを確認するために提出します。
・本人・住居所確認書類
申請者本人であることと、住所地管轄のハローワークで手続きしていることを確認するために必要です。
・個人番号確認書類
マイナンバー確認のために提出します。記載内容の不一致があると手続きが止まるため、番号の読み取りができる状態で用意します。
・教育訓練給付金適用対象期間延長申請書(必要な方)
離職後1年を超えて受講開始する場合に、延長理由と期間を確認するための書類です。延長を使う方は提出漏れに注意してください。
修了後(本体給付)
・教育訓練給付金支給申請書
修了後に本体給付を受けるための申請書です。振込先口座情報を含めて記入します。
・教育訓練修了証明書
指定講座を修了した事実を確認する書類です。修了日が申請期限の基準になるため、日付を必ず確認します。
・領収書(指定教育訓練実施者発行)
本人が実際に負担した入学料・受講料を確認する書類です。発行者名、金額、宛名を確認して保管します。
・受給資格確認通知書
受講開始前に受給資格確認を完了していることを示す書類です。受講前手続きと修了後手続きをつなぐ重要書類です。
・教育訓練経費等確認書
教育訓練経費の内訳、還付金の有無、事業主補助の有無を申告する書類です。領収書の金額と一致しているか確認して記入します。
・本人確認関連書類
修了後申請時に本人確認・個人番号確認を行うために提出します。受講開始前と同様に、必要書類の組み合わせを事前確認しておくとスムーズです。
・払渡希望金融機関の通帳またはキャッシュカード
支給額の振込先口座を確認するために必要です。金融機関名、支店名、口座番号、口座名義(カナ)が読める状態で準備します。
資格取得・就職後(追加給付)
・追加給付の支給申請書
追加給付(10%)を申請するための専用書類です。
・資格取得・就職を証明する書類
資格取得の事実と、就職・在職の事実を確認するために提出します。提出期限が短いため、資格登録日や就職日が確定した時点で早めに準備します。
7. よくある質問
Q. 一般教育訓練給付金とどちらを使うべきですか?
A. まずは受けたい講座がどちらの指定を受けているかで決まります。特定一般教育訓練に指定されている講座なら、受講前手続きは増えますが、支給率が高い点がメリットです。
Q. 受講前手続きを忘れた場合はどうなりますか?
A. 訓練前キャリアコンサルティングや受給資格確認を行わずに受講開始した場合、給付対象にならない可能性があります。受講開始日の2週間前という期限を必ず意識してください。
Q. 申請は電子申請でも大丈夫ですか?
A. 対応しています。来所、郵送、電子申請、代理人提出のいずれでも可能です。日程が厳しい場合は、郵送や電子申請、社会保険労務士への依頼も検討すると手続きが進めやすくなります。
8. まとめ
特定一般教育訓練給付金は、資格取得に直結しやすい講座を受ける方にとって、費用負担を大きく下げられる制度です。特に、令和6年10月1日以降に受講を開始する場合は、資格取得・就職までつながると追加給付が受けられるため、計画的に活用する価値があります。
一方で、一般教育訓練給付金と違って、受講前の準備が必須です。講座を決めたら、申し込みの前に訓練前キャリアコンサルティングと受給資格確認のスケジュールを先に確保するところから始めましょう。手続きに不安がある場合は、ハローワークまたは社会保険労務士(社労士)に早めに相談するのが安心です。
申請手続きのサポートは社労士にご相談ください
特定一般教育訓練給付金は、受講前手続きと修了後手続きで提出書類が分かれます。期限管理が不安な場合は、社労士への相談・代理申請依頼も有効です。
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