「今の仕事に活かせる資格を取りたい」
「転職の選択肢を広げるためにスキルを身につけたい」
「ずっと気になっていた簿記やITの資格に本腰を入れてみたい」
そんな気持ちで動き出そうとしている方に知っておいてほしい制度があります。
雇用保険の一般教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定する講座を修了した場合に、受講費用の20%(上限10万円)がハローワークから支給される制度です。在職中でも離職中でも、加入期間などの要件を満たせば利用できます。
ただし、支給を受けるには「指定講座かどうかの確認」「修了後1か月以内の申請」「正しい領収書の取得」といった実務上のポイントを押さえておく必要があります。この記事ではそれらを順番に整理していきます。
こんな方におすすめ!
・簿記、宅建、ITパスポート、介護職員初任者研修など資格取得のための講座を検討している
・一般教育訓練給付金の対象になるかどうかを先に確認したい
・支給額の計算方法と実際の自己負担額の目安を知りたい
・申請期限や必要書類を事前に把握して手続きミスを防ぎたい
・窓口に行く時間が取りにくく、電子申請や代理申請の方法も知りたい
1. 一般教育訓練給付金とは?
一般教育訓練給付金は、雇用保険の被保険者または被保険者であった方が、厚生労働大臣の指定を受けた一般教育訓練を修了した場合に、受講費用の一部がハローワークから支給される制度です。
たとえば、経理担当の従業員が日商簿記2級講座を受ける、営業職の従業員がITパスポート講座でデジタル知識を身につける、介護職を目指す方が介護職員初任者研修を受ける、といった場面で活用しやすい制度です。受講を修了して要件を満たせば、支払った受講費用の20%(上限10万円)が後から支給されます。
対象になる講座は幅広くありますが、比較的取り組みやすく、業種を問わず仕事で活かしやすい講座が中心です。
あくまで個人に対する給付金ですので、会社の研修制度などとは別の仕組みです。つまり、会社に支援制度がない場合でも、個人で申請して受け取ることができます。
ただし、どの講座でも対象になるわけではありません。受けたい講座が指定を受けているかどうかは、厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システムで確認できます。受講を申し込む前に必ず確認しておきましょう。
2. どんな講座・資格が対象になる?
一般教育訓練給付金の対象講座は、3区分の中で最も数が多く、ジャンルも幅広いのが特徴です。通信講座から通学制のスクールまで、さまざまな形式の講座が含まれます。
IT・情報処理分野
・ITパスポート試験対策講座
・基本情報技術者試験・応用情報技術者試験対策講座
・マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)講座
・情報処理安全確保支援士試験対策講座
ビジネス・会計分野
・日商簿記検定2級・3級講座
・ファイナンシャルプランナー(FP)2級・3級講座
・中小企業診断士試験対策講座
法律・士業分野
・行政書士試験対策講座
・社会保険労務士(社労士)試験対策講座
・マンション管理士・管理業務主任者試験対策講座
語学分野
・TOEIC対策講座
・英語検定(英検)対策講座
・その他語学系の検定対策講座
医療・福祉・介護分野
・介護職員初任者研修
・医療事務・調剤薬局事務の資格講座
その他
・カラーコーディネーター・ファッションビジネス能力検定などのデザイン系資格
・一部のビジネスマナー・コミュニケーション系資格講座
ただし、同じ名称の講座でも、指定を受けているものとそうでないものが混在しています。また、上記の例はあくまで一般的な傾向であり、同じ資格の対策講座でも一般教育訓練と特定一般教育訓練のどちらに指定されているかは講座ごとに異なります。
受けたい講座が一般教育訓練の指定を受けているかどうかは、講座検索システムで確認することが必要です。ジャンルや地域、通学・通信などの条件を絞り込んで検索できます。
3. 対象になる人(受給要件)
在職中でも離職中でも対象になる
| 支給要件期間 | 受講可能なタイミング | |
| 在職中 | 3年(初回は1年) | (支給要件期間を満たせば)いつでも |
| 離職中 | 3年(初回は1年) | 退職後1年以内(育児などの事情があれば最大20年まで延長可能) |
在職中か離職中かにかかわらず、受給には「支給要件期間」が3年以上であることが前提です(初めて教育訓練給付金を使う方は、当面の間1年以上で対象となります)
※「支給要件期間」とは、受講開始日までの雇用保険の被保険者期間(雇用保険に加入していた期間)です。
支給要件期間は、1つの職場での継続加入に限りません。転職で職場が変わった場合でも、前の職場での加入期間と合算できます。ただし、退職から次の就職までの空白期間が1年以上あると、前の加入期間は通算されません。
また、過去に教育訓練給付金を受けたことがある方は、その受講開始日より前(前回の講座の開始日より前)の加入期間はカウントされません。つまり一度受講するとそれまでの雇用保険の加入期間はリセットされるということです。したがって、前回の受講開始日以降に新たに通算3年以上が必要です。
ただし、あくまで、受講”開始日”にリセットされるので(受講”終了日”にリセットではない)、受講中も雇用保険に加入していれば(次回の講座に利用できる)新たな加入期間はスタートします。
なお、いずれかの区分の給付金を受けた場合、その受講開始日から3年以内は同じ区分・他の区分を問わず給付金を受け取れません。つまり、前回受講した講座が「一般」で、今回受講する講座が「専門」であろうと、加入期間がリセットされる事には変わりません。
自分が対象者かどうかわからない場合
ハローワークの窓口またはネットから「支給要件照会」をしておくと、自分が受給要件を満たしているかを事前に確認できます。
特に、転職を短期間で繰り返した、離職から受講開始まで1年を超えそう、過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合などは、先に照会してから申し込むことをおすすめします。
照会は、本人来所以外にも、郵送、電子申請、代理人による提出も可能です。
4. 対象になる経費・ならない経費
対象になる経費
- 入学料
- 受講料(最大1年分)
- キャリアコンサルティングの費用(上限2万円まで)
教育訓練経費として認められるのは、申請者本人が支払ったもののみです。
たとえば、会社や家族がそのまま支払った分、後で全額キャッシュバックされる予定の分は、本人負担とはいえないため対象外になります。会社が立替払いする場合でも、本人負担の事実を証明できる形で精算されていないと教育訓練経費として認められません(一般教育訓練給付金Q&A~ Q9、Q13より)
受講開始日前1年以内に、国家資格キャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングを受けた場合は、その費用も教育訓練経費に上限2万円まで加算できます。
※「キャリアコンサルティング」とは、これまでの職務経験や今後の働き方の希望を整理しながら、自分に合う学び直しの方向性を明確にする面談のことです。講座選びのミスマッチを減らし、修了後に資格やスキルをどう仕事につなげるかまで考えられる点がメリットです。
キャリアコンサルティングの受け方や相談先、準備しておくとよい内容は「キャリアコンサルティング活用ガイド(仮)」で詳しく解説しています。
また、次の場合は差し引きが必要です。
・自治体などの割引制度を利用した場合:割引後の実負担額が支給されます。
・事業主などから受講費補助を受けた場合:補助額のうち入学料・受講料に充てられる分を差し引いた額が支給されます。
対象にならない経費
次の費用は教育訓練経費に含まれません(一般教育訓練給付金Q&A~ Q12より)
・検定試験の受験料
・受講に必ずしも必要でない補助教材費
・交通費
・パソコンなどの器材費
・クレジット会社に対する手数料
・支給申請時点で未納の額
これらは、受講料とは違い講座そのものの受講対価ではない費用だからです。
注意点
領収書は必ず指定教育訓練実施者(講座を実施する学校・スクール本体)が発行したものを使用してください。
販売代理店が発行した領収書は、支給申請の確認書類として認められません(一般教育訓練給付金Q&A~ Q12より)
※ここでいう「販売代理店」とは、講座を実施する学校・スクール本体とは別に、申込受付や受講料の決済だけを代行している仲介会社や販売会社のことです。たとえば、資格講座の比較サイト経由の申込窓口会社、講座運営会社とは別法人の営業会社、受講料の収納を代行する決済代行会社などが該当します。
5. いくらもらえる?支給額と計算例
支給額:教育訓練経費(入学料と受講料)の20% ※支給額が4,000円以下の場合は支給されません。
支給額の上限:10万円
なお、キャリアコンサルティング費用(上限2万円)を加算した場合でも、最終的な支給額の上限は10万円です。
計算例
・80,000円(入学料・受講料)→ 16,000円の支給
・150,000円(入学料・受講料)+10,000円(キャリコン費用)=160,000円 → 32,000円の支給
・600,000円(入学料・受講料) → 上限のため100,000円の支給
支給はあとから振り込まれる仕組みです。受講料は一度自分で全額支払い、修了後に申請して支給額を受け取ります。
6. 申請までの流れ
全体スケジュール
一般教育訓練給付金の場合、受講前の特別な手続きは不要です。指定講座を修了してから申請する流れです。
- 受給資格の確認(支給要件照会)を行う
受講する前に、そもそも自分に受給資格があるかの確認をしましょう。受給資格がないと、講座を受講しても給付金を受けることができません。
ハローワークの窓口またはネットから「支給要件照会」をしておくと、自分が受給要件を満たしているかを事前に確認できます。 - 指定講座の候補を探して選ぶ
候補の探し方は、厚労省の「教育訓練講座検索システム」での絞り込み、学校・スクールへの直接問い合わせ、ハローワークでの確認など複数あります。
講座名が似ていても、指定講座と非指定講座があるため、最終的に「一般教育訓練として指定されているか」を確認してから申し込むことが重要です。
あわせて、講座の実施期間が指定期間内か、受講開始日がいつになるかも確認しておくと後の手続きがスムーズです。 - 講座を申し込み、受講を開始する
通学制は「所定の開講日」、通信制は「教材発送日」が受講開始日として扱われます。受講開始日は受給要件の判定基準になるため、申込控えや案内メールを保管しておきましょう。 - 講座を修了し、教育訓練修了証明書と領収書を受け取る
修了後は、教育訓練修了証明書と領収書を必ず受け取り、記載内容を確認します。領収書の宛名、金額、発行者名(指定教育訓練実施者)が申請条件に合っているかをここでチェックしておくと、差し戻しを防げます。 - 修了日の翌日から1か月以内に支給申請を行う
必要書類をそろえ、住所地を管轄するハローワークへ申請します。窓口提出のほか、郵送や電子申請も選べるため、締切から逆算して「いつまでに書類をそろえるか」を先に決めておくと安心です。
申請方法
- 本人がハローワークの窓口で申請する
- 郵送で申請する
- 電子申請する(マイナポータル経由)の3つから選べます。
- 代理人による申請(委任状と代理人の本人確認書類が必要)
たとえば、平日にハローワークへ行く時間が取れない場合に、家族へ依頼して窓口提出や郵送手続きを進めることができます。
代理申請の場合、申請者本人の書類不備があると差し戻しになるため、提出前に「修了証明書」「領収書」「本人確認書類」「口座情報」のそろいを一緒に確認しておくことが重要です。なお、社会保険労務士(社労士)による代理申請も可能です。
申請に必要な書類
主な必要書類は次のとおりです。提出前に「何を確認する書類か」を理解しておくと、準備が早く進みます。(一般教育訓練給付金Q&A~ Q11より)
- 教育訓練給付金支給申請書
ハローワークに「給付金を申請します」と届け出るための基本書類です。氏名、住所、受講講座、振込先などを記入します。 - 教育訓練修了証明書
「講座を修了した事実」を証明する書類です。指定教育訓練実施者が発行します。修了日の記載が申請期限の起算点になるため、日付を必ず確認してください。 - 領収書(指定教育訓練実施者が発行したもの)
「本人がいくら支払ったか」を確認するための書類です。宛名、金額、発行者名を確認し、販売代理店名義の領収書になっていないかを必ずチェックします。 - 本人・住居所確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
申請者本人であることと、住所地管轄のハローワークで手続きしていることを確認する書類です。郵送提出の場合は、必要に応じて写しを添付します。 - 個人番号確認書類
マイナンバーカード、通知カード、個人番号記載の住民票の写しなどが該当します。 - 教育訓練経費等確認書
入学料・受講料の内訳、還付金の有無、事業主補助の有無などを申告する書類です。領収書の金額と整合が取れているか確認して記入します。 - 払渡希望金融機関の通帳またはキャッシュカード
支給額の振込先口座を確認するための書類です。金融機関名、支店名、口座番号、口座名義(カナ)が読める状態で準備します。
該当する方のみ追加で必要な書類
- キャリアコンサルティング費用を申請する場合
費用に係る領収書、キャリアコンサルティングの記録、実施証明書が必要です。これらがそろっていないと加算対象として認められません。 - 適用対象期間の延長を受けていた場合
教育訓練給付金適用対象期間延長通知書が必要です。離職後1年超の受講開始で延長を使う場合は、特に提出漏れに注意してください。 - クレジット払いの場合
クレジット契約証明書など、支払事実と支払額を確認できる書類が必要です。 - 還付金がある場合
返還金明細書を提出し、還付後の実負担額で申請します。
7. よくある質問
Q. 受講前に自分が対象かどうか確認できますか?
A. 可能です。
「支給要件照会」という手続きをハローワークで行うと、受講開始予定日時点での受給資格の有無や、受けたい講座の指定有無を事前に確認できます。照会は本人来所・代理人・郵送・電子申請で行えます。
なお、支給要件照会を行っても、給付金を受け取るには改めて支給申請が必要です。
Q. 申請期限を過ぎてしまったらどうなりますか?
A. 原則、修了日の翌日から1か月以内に申請をする必要がありますが、申請期限を過ぎた場合でも、時効が完成するまでの期間(訓練終了日から2年間)について申請が可能です。
もし期限を過ぎてしまった場合、まずは管轄のハローワークや社労士に相談しましょう。
Q. パートタイムでも対象になりますか?
A. 雇用保険に加入していれば、パートタイムの方も対象です。雇用保険に加入しているかどうかは、給与明細や雇用契約書で確認できます。
8. まとめ
一般教育訓練給付金は、3区分の中で対象講座数が最も多く、申請の手続きも比較的シンプルな制度です。簿記、IT、介護、語学など身近な講座で活用しやすい点は大きなメリットです。
ただし、対象かどうかは”指定を受けた講座”に限られるため、受講申し込みの前に検索システムで確認することが第一歩です。その上で修了後1か月以内の申請期限、正しい領収書の取得という2つのポイントを外さなければ、手続き自体は難しくありません。
手続きに不安がある方や、電子申請・代理申請で進めたい場合は、ハローワークまたは社会保険労務士(社労士)に事前に相談しておくと安心です。

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※本記事は2026年2月時点の法令・情報に基づき作成しています。
【参照資料】
厚生労働省「一般教育訓練給付金のご案内」
「一般教育訓練給付金Q&A」