「転職に備えて簿記2級を取りたい」
「宅建の資格で仕事の幅を広げたい」
「看護師や介護福祉士を目指して学校に通い直したい」
こうした目標があっても、講座の受講料や学校の学費を全額自分で出すとなると、なかなか一歩を踏み出せないものです。
実は、雇用保険に一定期間加入していれば、対象の講座を受講・修了したあとに、支払った費用の20〜最大80%がハローワークから戻ってくる制度があります。それが「教育訓練給付金」です。
たとえば、受講料30万円の講座であれば、最大で24万円が支給され、自己負担は6万円で済む場合もあります。在職中でも離職中でも、条件を満たせば利用できます。
教育訓練給付金には一般教育訓練・特定一般教育訓練・専門実践教育訓練の3つの区分があり、それぞれ戻ってくる割合や上限額、申請の手順が異なります。自分が受けたい講座がどの区分に当たるのか、事前に確認しておくことが大切です。
この記事では、教育訓練給付金の全体像から、3つの区分の違い、支給額の考え方、申請の流れまでを順番に整理していきます。
・簿記、宅建、介護、看護、IT系などの資格取得やスキルアップに給付金を活用したい
・一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の違いを整理したい
・在職中でも申請できるのか、離職後でも間に合うのかを確認したい
・自分の場合にいくら支給されるのか、目安を把握したい
・申請期限や必要書類を先に確認して、手続きミスを防ぎたい
1. 教育訓練給付金とは?
教育訓練給付金は、雇用保険の加入者(または加入していた方)が、仕事に役立つ資格や講座を自費で受講したときに、費用の一部があとから戻ってくる制度です。
たとえば、簿記講座、宅建講座、介護職員初任者研修、看護師や社会福祉士の養成課程、プログラミングスクールなど、幅広い講座が対象になっています。受講を終えてハローワークに申請すると、自分が支払った受講料の一部が支給されます。
ポイントは、会社の研修制度とは別の仕組みだということです。会社に支援制度がなくても、雇用保険の加入期間などの条件を満たしていれば、自分で申請して受け取ることができます。
ただし、同じ「簿記講座」や「宅建講座」でも、厚生労働大臣の指定を受けている講座でなければ対象になりません。受講を申し込む前に、厚生労働省の「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」で、受けたい講座が指定されているかどうかを確認しておきましょう。
「厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」はこちら
2. 3つの給付金の違い(一般・特定一般・専門実践)
教育訓練給付金には「一般教育訓練給付金」「特定一般教育訓練給付金」「専門実践教育訓練給付金」の3つがあります。受けたい講座がどの区分に当たるかで、戻ってくる割合や上限額、申請の手順がそれぞれ変わります。
一般教育訓練給付金
受講費用の20%が支給され、上限は10万円です。
なお、支給額が4,000円以下(つまり2万円以下の講座)の場合は支給されません。
簿記・英語・ITパスポートの通信講座など、比較的短期で取得を目指せる講座が多く、3区分の中では最も選択肢が豊富です。申請も修了後に1回行うだけで完結するため、手続きの負担が少ないのが特徴です。
受給要件として、雇用保険に通算3年以上加入していることが必要ですが、初めて教育訓練給付金を使う方は当面の間1年以上で対象となります。
→ 詳細はこちら:一般教育訓練給付金について詳しく解説した記事へ
特定一般教育訓練給付金
受講費用の40%が支給され、上限は20万円です。
さらに修了後に資格を取得して就職・在職が確認された場合は、追加で10%(上限5万円)が加算されます。
対象となるのは、業務独占資格・名称独占資格の養成課程や、ITSSレベル2以上の情報通信技術関係資格を取得する講座などです。宅地建物取引士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、一定のITベンダー資格などが該当します。
なお、受講開始前に訓練対応キャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」を受けてジョブ・カードの交付を受けることが必要で、受講開始日の2週間前までにハローワークへの受給資格確認手続きを済ませておく必要があります。
受給要件は一般教育訓練と同様で、雇用保険に通算3年以上(初回は1年以上)の加入が必要です。
→ 詳細はこちら:特定一般教育訓練給付金について詳しく解説した記事へ
専門実践教育訓練給付金
3区分の中で最も給付率が高く、受講費用の50%が6か月ごとに支給されます。
修了後に資格を取得して就職・在職が確認された場合は20%が追加され、合計で最大70%の支給となります。
さらに、令和6年10月以降に受講を開始した方は、修了後に賃金が5%以上上昇した場合に10%が追加加算され、最大80%まで支給されます。年間の上限は40万円(追加加算を含む場合は最大64万円)です。
対象となるのは、看護師・介護福祉士・保育士・社会福祉士などの国家資格養成課程、専門学校の職業実践専門課程、専門職大学院、AIやIoT分野のスキル習得講座(第四次産業革命スキル習得講座)などです。
原則として訓練期間が1年以上3年以内の中長期の講座が対象です。
特定一般教育訓練と同様に、受講開始前に「訓練前キャリアコンサルティング」を受けて受給資格確認の手続きをとることが必要です。また、受講中は6か月ごとに支給申請が必要で、手続きが複数回発生します。
受給要件として、雇用保険に通算3年以上加入していることが必要です(初回は2年以上)。
→ 詳細はこちら:専門実践教育訓練給付金について詳しく解説した記事へ
どの区分に当たるかは講座によって決まる
同じ「介護の資格を取りたい」という目的でも、介護職員初任者研修は一般教育訓練、介護福祉士の養成課程は専門実践教育訓練になるなど、講座ごとに区分が異なります。自分が受けたい講座の区分を確認してから申し込むようにしましょう。講座検索は厚生労働省の「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」から行えます。
「厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」はこちら
3. 支給要件(だれが対象か)
在職中でも離職中でも対象になる
教育訓練給付金は、現在働いている方だけでなく、退職後に受講する方も対象です。
在職中の方は、受講開始日時点で雇用保険に加入していることが必要です。
離職中の方は、退職後1年以内に受講を開始することが原則です(育児・出産・疾病などの事情がある場合は最大20年まで延長できます)。
| 在職中 | いつでも |
| 離職中 | 退職後1年以内(育児などの事情があれば最大20年まで延長可能) |
必要な雇用保険の加入期間(支給要件期間)
支給を受けるには、受講開始日までに雇用保険に通算3年以上加入していることが必要です。
ただし、初めて教育訓練給付金を使う方は、当面の間1年以上(専門実践教育訓練は2年以上)で対象となります。
加入期間は、1つの職場での継続加入に限りません。転職で職場が変わった場合でも、前の職場での加入期間と合算できます。
ただし、退職から次の就職までの空白期間が1年以上あると、前の加入期間は通算されません。
また、過去に教育訓練給付金を受けたことがある方は、その受講開始日より前(前回の講座の開始日より前)の加入期間はカウントされません。つまり一度受講するとそれまでの雇用保険の加入期間はリセットされるということです。ですので、前回の受講開始日以降に新たに通算3年以上が必要です。
ただし、あくまで、受講”開始日”にリセットされるのであり、受講”終了日”にリセットではありません。つまり、受講中も雇用保険に加入していれば、(次回の講座に利用できる)新たな加入期間はスタートします。
なお、いずれかの区分の給付金を受けた場合、その受講開始日から3年以内は同じ区分・他の区分を問わず給付金を受け取れません。つまり、前回受講した講座が「一般」で、今回受講する講座が「専門」であっても加入期間がリセットされる事には変わりません。
自分が対象かわからない場合
受講を始める前に「支給要件照会」という手続きをハローワークで行えます。自分の加入期間が条件を満たしているか、受けたい講座が指定されているかどうかを事前に確認できるので、受講申し込みの前に利用しておくと安心です。
4. 支給額の計算方法
計算の基本:「教育訓練経費」に支給率をかける
支給額は、自分が教育訓練実施者(資格学校など)に支払った「教育訓練経費」に、各区分の支給率をかけて算出します。
「教育訓練経費」とは、主に入学料と受講料の合計です。ただし、検定試験の受験料、補助教材費、交通費などは対象外で、会社や事業主から補助が出た場合はその分を差し引いた実質負担額が対象になります。
区分別の計算例
一般教育訓練の場合
支給率は20%、上限は10万円です。
受講料が5万円の講座であれば1万円、受講料が50万円の講座であれば上限の10万円が支給されます。支給額が4,000円以下の場合は支給されません。
特定一般教育訓練の場合
支給率は40%、上限は20万円です。
受講料(入学料含む)が30万円の講座の場合、30万円×40%=12万円が支給されます。さらに修了後に資格を取得して就職・在職が確認された場合は30万円×10%=3万円が追加され、合計15万円となります(令和6年10月1日以降の受講開始が対象)。
専門実践教育訓練の場合
支給率は50%(年間上限40万円)を6か月ごとに受け取ります。
たとえば訓練期間が2年間で総受講料が170万円(入学料10万円+6か月ごとの受講料40万円×4期)の場合、受講中の支給額は年間上限40万円×2年=80万円が目安です。修了後に資格を取得して就職・在職が確認された場合は最大32万円(年間16万円×2年)が追加、さらに賃金が5%以上上昇した場合は最大16万円(年間8万円×2年)が加算されます。合計で最大128万円の支給となる場合があります。
支給はあとから振り込みで受け取る
どの区分でも、支給は「受講料を先に自分で払い、あとで戻ってくる」仕組みです。受講前に給付金が前払いされるわけではないので、受講料を一時的に自己負担できる準備が必要です。
5. 申請の流れ
一般教育訓練の場合
手続きの流れは比較的シンプルです。
・指定講座を確認して受講を申し込み
・受講・修了した後、
・修了日の翌日から1か月以内にハローワークへ支給申請をします。
特定一般教育訓練の場合
受講開始前に2つの手続きが必要です。
まず、訓練対応キャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」を受けてジョブ・カードの交付を受けます。
その後、受講開始日の2週間前までにハローワークへ受給資格確認票とジョブ・カードを提出して受給資格確認を行います。
受講・修了後は、修了日の翌日から1か月以内に支給申請をします。資格取得・就職の加算を受ける場合は、別途申請が必要です。
専門実践教育訓練の場合
手続きが複数回あるため、スケジュール管理が重要です。
受講開始前:訓練前キャリアコンサルティングを受けてジョブ・カードの交付を受ける
受講開始日の2週間前まで:ハローワークへ受給資格確認の手続き
受講中:6か月ごとの期間末日の翌日から1か月以内に支給申請
修了後:修了日の翌日から1か月以内に支給申請
資格取得・就職後:資格取得・就職日の翌日から1か月以内に加算分を申請
賃金上昇確認後:資格取得・就職日の翌日から6か月を経過した日から6か月以内に申請
申請期限を1日でも過ぎると、その期間分の給付金は受け取れなくなります。修了日や申請期限をあらかじめカレンダーに記入しておくなど、管理を徹底しましょう。
申請方法:電子申請・郵送・代理申請も対応
申請はハローワークへの本人来所に限らず、電子申請や郵送でも行えます。窓口に行く時間が取りにくい方は、これらの方法も活用できます。
また、代理人による申請も認められています。代理人が手続きする場合は委任状と代理人の本人確認書類が必要です。
社会保険労務士(社労士)も代理申請を行うことができるため、手続きが面倒・受講後すぐにリスタートしたい場合、社労士への依頼も選択肢のひとつです。
6. よくある質問
Q. パートやアルバイトでも利用できますか?
週20時間以上など一定の条件を満たして雇用保険に加入していれば、パート・アルバイトの方でも利用できます。雇用保険に加入しているかどうかは、給与明細や雇用契約書で確認できます。
Q. 在職中でも申請できますか?
できます。在職中でも、受講開始日時点で雇用保険に加入していて加入期間の要件を満たしていれば対象です。会社に申請を通す必要はなく、自分でハローワークに手続きします。
Q. 退職後でも間に合いますか?
退職後1年以内に受講を開始する場合は対象になります。離職から時間が経ってしまったと感じている方も、まずは加入期間と離職日を確認してみましょう。
Q. 失業給付(基本手当)と同時に受け取れますか?
一般教育訓練の場合、基本手当の受給中に給付金を受け取ること自体は可能ですが、受講日が求職活動として認定される扱いになるなど手続きが絡み合うことがあります。事前にハローワークで確認するのが確実です。
Q. 申請期限を過ぎてしまったらどうなりますか?
原則として、修了日の翌日から1か月以内(専門実践は6か月ごとの期間末日の翌日から1か月以内)に申請しなければ支給されません。やむを得ない事情がある場合はハローワークに相談する余地がありますが、基本的に期限は厳守です。
7. まとめ
教育訓練給付金は、自分の意思でスキルアップや資格取得に取り組む方を後押しする制度です。費用の20〜最大80%が戻ってくるため、金銭的なハードルを大きく下げてくれます。
また、対象講座は幅広く、その数はおよそ1.7万講座あると言われています。ただし、受けたい講座が3つの区分のどれに当たるかによって、支給率や申請の手順が大きく変わります。特に特定一般教育訓練と専門実践教育訓練は受講前から手続きが必要で、申請漏れや期限切れには注意が必要です。
まずは、受けたい講座が指定されているかどうかを「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」で確認することから始めましょう。不明な点はハローワークへ相談すると、自分の加入期間の確認や手続きの流れも合わせて案内してもらえます。
申請手続きのサポートは社労士にご相談ください
特定一般教育訓練・専門実践教育訓練は、受講前のキャリアコンサルティングや複数回の申請など、手続きが多岐にわたります。
「何から準備すればいいかわからない」「申請漏れが心配」という方は、社会保険労務士(社労士)に相談・依頼することもできます。社労士は代理申請にも対応しており、書類の準備から申請までワンストップでサポートを受けることが可能です。

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※本記事は2026年2月時点の法令・情報に基づき作成しています。
【参照資料】
厚生労働省「一般教育訓練給付金のご案内」
「特定一般教育訓練給付金のご案内」
「専門実践教育訓練給付金・教育訓練支援給付金のご案内」
「一般教育訓練給付金Q&A」
「専門実践教育訓練給付金Q&A」