「テレワークや時差出勤を導入したいけれど、何から手をつければいいかわからない」「育児中の従業員が働き続けられる仕組みを整えて、求人票に書けるようにしたい」
育児と仕事の両立支援に取り組みたいと考える会社に向けた助成金が、両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)です。
フレックスタイムや育児のためのテレワーク、短時間勤務など、育児中の従業員が働きやすくなる制度を3つ以上導入し、実際に従業員が利用した場合に助成金が支給されます。
制度を整えることで求人票に書けるアピールポイントが増え、在職中の従業員の定着にもつながります。
こんな企業におすすめ!
・フレックスタイムや在宅勤務を導入して求人票に記載できる制度を増やしたい
・子どもの体調不良で急な休みを取りやすくするため、子の看護等休暇を有給にしたい
・育休から復帰した従業員が時差出勤やテレワークを使いながら働ける環境を整えたい
1. 柔軟な働き方選択制度等支援コースとは?
柔軟な働き方選択制度等支援コースは、育児を行う従業員の柔軟な働き方を可能とする制度を複数導入し、実際に従業員が制度を利用した場合に助成金が支給される制度です。
つまり、育児中でも働き続けられる選択肢を会社として整えた事業主に国からお金が支給される制度です。
このコースの対象となる「柔軟な働き方選択制度」は、以下の5種類の制度を指します。
- フレックスタイム制度・時差出勤制度(2つで1種類とカウント)
- 育児のためのテレワーク等
- 柔軟な働き方を実現するための短時間勤務制度
- 保育サービスの手配及び費用補助
- 養育両立支援休暇制度(有給・年10日以上・時間単位で取得可能な育児目的の特別休暇)
例えば、時差出勤制度・育児のためのテレワーク・養育両立支援休暇制度の3つを就業規則に規定し、育児中の従業員がそのうち1つを6か月間一定日数以上利用した場合に20万円が支給されます。
この制度の中心にあるのが「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」です。制度を利用する予定の従業員と事前に面談を行い、利用する制度の内容・利用期間中の業務体制・利用後のキャリア形成方針を盛り込んだプランを会社が作成します。
もう1つの種別として、子の看護等休暇制度を有給化した場合に受給できる「子の看護等休暇制度有給化支援」があります。法定の子の看護等休暇は無給でも可とされていますが、これを年10日以上・時間単位・中抜け可能な有給休暇として整備し、従業員が10時間以上利用した場合に30万円が支給されます。
2. いくらもらえる?
柔軟な働き方選択制度
| 要件 | 支給額 |
|---|---|
| 制度を3つ導入し、対象の従業員が制度を利用した場合 | 20万円 |
| 制度を4つ以上導入し、対象の従業員が制度を利用した場合 | 25万円 |
1事業主5人まで支給対象です。
子の看護等休暇制度有給化支援
| 要件 | 支給額 |
|---|---|
| 有給の子の看護等休暇制度を導入し、従業員が10時間以上利用した場合 | 30万円 |
1事業主1回限りの支給です。
加算
| 種別 | 支給額 |
|---|---|
| 制度利用期間延長加算(障害のある子または医療的ケアを必要とする子を養育する従業員について、子が18歳になる年度末まで制度を利用できるよう延長した場合) | 20万円(1事業主1回限り) |
| 障害児等要配慮支援加算(同上の従業員が実際に延長した制度を利用した場合) | 20万円(1事業主1回限り) |
| 育児休業等に関する情報公表加算 | 2万円(1事業主1回限り) |
加算のみの申請はできません。
3. 活用事例
事例1:時差出勤・テレワーク・養育両立支援休暇の3制度を整備し、育休復帰後の働き方を整えた
育休から復帰した女性社員から、保育園の送迎のために始業時刻を1時間ずらしたいという申し出があった。就業規則に時差出勤制度・育児のためのテレワーク等・養育両立支援休暇制度の3つを規定し、対象の社員と面談を行い育児に係る柔軟な働き方支援プランを作成した。
対象の社員が制度利用開始から6か月間で所定の日数以上、時差出勤を利用した。
受給額:20万円(柔軟な働き方選択制度等支援コース・柔軟な働き方選択制度・3種類導入)
「制度を使いながら働ける」という安心感が生まれ、育休復帰後の離職防止につながった。求人票に記載できる制度が増えたことで、採用活動でも活用できるようになった。
事例2:子の看護等休暇を有給化し、急な休みを取りやすい職場づくりを実現した
これまで法定どおり無給で取得できる子の看護等休暇制度しか設けていなかったが、年10日・時間単位・中抜け可能な形で取得できる有給の子の看護等休暇制度を就業規則に新たに規定した。
整備後、子どもの発熱による通院の付き添いや予防接種などに有給の子の看護等休暇を合計10時間以上利用した従業員が出た。
受給額:30万円(柔軟な働き方選択制度等支援コース・子の看護等休暇制度有給化支援)
「無給だから使いにくい」という声がなくなり、急な早退や遅刻ではなく制度として取得できることで周囲との調整もしやすくなった。
4. 支給要件
柔軟な働き方選択制度
- 柔軟な働き方選択制度の内容と利用手続きを、就業規則等に規定していること
対象の5種類の制度のうち3つ以上を、対象従業員の制度利用開始日の前日までに就業規則に具体的に規定している必要があります。フレックスタイム制度と時差出勤制度の両方を導入した場合は1種類とカウントされます。制度は子が3歳以降小学校就学前までの従業員が利用できる制度として設ける必要があります。 - 育児に係る柔軟な働き方支援プランによる支援方針を全従業員に周知していること
「育児を行う従業員に対して、会社として支援プランを作成・実施する」という方針を就業規則または明文化した文書等により全従業員に周知します。周知は対象の従業員の制度利用開始日の前日までに完了していることが必要です。 - 対象の従業員と面談を行い「面談シート」に記録したうえで、育児に係る柔軟な働き方支援プランを作成していること
上司または人事労務担当者が面談を行います。対面が難しい場合は電話・メールでも構いません。プランには「制度利用期間中の業務体制の検討に関する取り組み」と「制度利用後のキャリア形成を円滑にするための措置」の両方を盛り込む必要があります。面談とプランの作成は制度利用開始日の前日までに完了している必要があります。 - 対象の従業員が、制度利用開始から6か月間で一定の基準以上、対象制度のいずれか1つを利用していること
・各制度の利用基準は以下のとおりです。
・フレックスタイム制度:6か月間の所定労働日のうち半数以上の日で利用
・時差出勤制度:6か月間の所定労働日のうち半数以上の日で利用
・育児のためのテレワーク等:6か月間の所定労働日のうち半数以上の日で利用
・柔軟な働き方を実現するための短時間勤務制度:6か月間すべての月で利用
・保育サービスの手配及び費用補助:6か月間で1回以上利用
・養育両立支援休暇制度:6か月間で8時間以上利用 - 対象の従業員を、制度利用期間中および支給申請日において雇用保険被保険者として雇用していること
制度利用中に退職・解雇となった場合や、申請日時点で雇用保険の被保険者でなくなっている場合は対象外となります。 - 育児休業制度などを就業規則に定めていること
育児・介護休業法に基づく育児休業と育児のための短時間勤務制度の両方を就業規則に具体的に書いておく必要があります。 - 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局へ届け出ていること
申請日時点で有効な計画が必要です。支給申請日までに策定・届出・公表・周知がすべて完了している必要があります。
子の看護等休暇制度有給化支援
- 令和8年4月8日以降に、所定の要件を満たす形で子の看護等休暇制度を有給化し、就業規則に規定していること
対象となる有給の子の看護等休暇制度は以下の要件をすべて満たす必要があります。
・有給の休暇(年次有給休暇を取得した場合と同等の賃金が支払われるもの)であること
・1年度あたり10労働日以上が付与されること
・時間単位(時間未満単位も可)かつ中抜け可能(始業・終業時刻と連続しない形)で取得できること
・1日の所定労働時間を変更することなく利用できること
・年次有給休暇とは別途取得できること - 有給化した子の看護等休暇制度を、雇用保険被保険者が10時間以上利用していること
支給申請日において、9歳に達する日以後の最初の3月31日までの子を養育する雇用保険被保険者が在籍し、当該制度を合計10時間以上利用していることが必要です。 - 育児休業制度などを就業規則に定めていること
柔軟な働き方選択制度と同様の要件です。 - 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局へ届け出ていること
柔軟な働き方選択制度と同様の要件です。
5. 申請の流れ
柔軟な働き方選択制度
STEP1. 就業規則への制度規定・社内周知
対象の5種類のうち3つ以上を就業規則に規定し、育児に係る柔軟な働き方支援プランによる支援方針を全従業員に周知します。いずれも対象従業員の制度利用開始日の前日までに完了していることが必要です。
STEP2. 面談・育児に係る柔軟な働き方支援プランの作成
対象の従業員と面談を行い「面談シート」に記録したうえで、プランを作成します。制度利用開始日の前日までに完了していることが必要です。
STEP3. 制度の利用
対象の従業員が、プランに基づき対象制度のいずれか1つを利用します。
STEP4. 6か月間の利用実績確認
制度利用開始から6か月が経過した時点で、一定基準以上の利用実績があるかを確認します。
STEP5. 支給申請
制度利用開始から6か月が経過した日の翌日から2か月以内に申請します。例えば7月1日に利用を開始した場合、1月2日から3月1日が申請期間です。
子の看護等休暇制度有給化支援
STEP1. 有給の子の看護等休暇制度の規定
所定の要件を満たす形で有給の子の看護等休暇制度を就業規則に規定します。
STEP2. 制度の利用
雇用保険被保険者が有給の子の看護等休暇制度を利用します。
STEP3. 支給申請
利用時間数が10時間に達した日の翌日から2か月以内に申請します。
申請先はいずれも、本社等の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。郵送の場合は消印ではなく労働局への到達日が期限内である必要があるため、余裕をもって発送してください。
6. よくある質問
Q. フレックスタイム制度と時差出勤制度を両方導入すれば、それだけで2種類とカウントされますか?
残念ながら、フレックスタイム制度と時差出勤制度の2つを導入した場合は1種類とカウントされます。3種類以上の要件を満たすには、これら2つに加えてテレワーク等・短時間勤務制度・保育サービスの手配及び費用補助・養育両立支援休暇制度のいずれか1つ以上を合わせて導入する必要があります。
Q. 柔軟な働き方選択制度は、すでに就業規則に規定している制度でも対象になりますか?
はい、対象になります。従前から制度を導入していた場合でも、対象の従業員との面談と育児に係る柔軟な働き方支援プランの作成を行い、実際に制度を利用した場合は申請できます。ただし、子の看護等休暇制度有給化支援については、令和8年4月8日以降に有給化した制度であることが必要です。
Q. 育児中の従業員が複数いる場合、それぞれについて申請できますか?
はい、申請できます。柔軟な働き方選択制度は1事業主5人まで支給対象です。それぞれの従業員について面談とプランの作成を行い、制度を6か月間一定基準以上利用した場合に、1人ずつ申請できます。
Q. 子の看護等休暇制度有給化支援を受給するためには、柔軟な働き方選択制度も同時に申請する必要がありますか?
残念ながら、加算措置のみの申請はできませんが、子の看護等休暇制度有給化支援は単独の種別として申請できます。柔軟な働き方選択制度と子の看護等休暇制度有給化支援はそれぞれ独立して申請可能で、両方を同時に申請することもできます。
7. まとめ
育児中の従業員が「時短勤務しか選べない」という状況は、本人にとっても会社にとっても望ましくありません。フレックスタイムや育児のためのテレワーク、養育両立支援休暇など、複数の選択肢を用意することで、従業員それぞれの状況に合った働き方ができるようになります。
柔軟な働き方選択制度等支援コースは、そうした制度を3つ以上整えた会社に対して国が助成する制度です。制度利用開始から6か月間の実績が確認された時点で申請できるため、まず制度を整備し、従業員が実際に利用することから始まります。
子の看護等休暇制度の有給化は、子どもの急な体調不良に対応しやすくなるだけでなく、「この会社は制度が整っている」という対外的なアピールにもなります。
まずは自社の就業規則に今回の対象となる制度が何種類規定されているかを確認し、追加で整備が必要な制度を洗い出すことから始めましょう。要件の詳細や自社の状況への当てはめ方については、管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)または社会保険労務士にご相談ください。

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【参照資料】
厚生労働省『両立支援等助成金 支給申請の手引き(2026年度版)』
厚生労働省『両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)支給要領(令和8年4月8日改正)』
厚生労働省『両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)Q&A(2026年度版)』
👉 厚生労働省:両立支援等助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)
※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。助成金の支給要件は変更されることがあるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。