不妊治療のために通院が必要な従業員が、「有給休暇を使い果たしてしまった」「職場に言い出せずに仕事を休んでいる」という状況は、本人にとっても会社にとっても解決したい課題です。月経による体調不良や更年期の症状を抱えながら、無理をして出勤し続けることで本来の力を発揮できていない従業員も少なくありません。
【両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)】は、こうした従業員が仕事を続けやすくなる制度を整備し、実際に利用された場合に助成金が支給される制度です。
不妊治療・月経・更年期という3つの場面それぞれについて、個別に申請できる仕組みになっています。
こんな企業におすすめ!
・不妊治療中の従業員から通院のために休みを取りやすくしてほしいと相談があった
・更年期症状を抱える女性従業員が多く、体調に合わせた働き方を整えたい
・特別休暇制度を就業規則に整備して、従業員が気兼ねなく休める環境をつくりたい
・女性が長く働き続けられる会社として、採用や定着に活かせる制度を整えたい
1. 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースとは?
不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースは、不妊治療や月経・更年期といった健康課題に対応するための両立支援制度を就業規則に整備し、従業員が実際に利用した場合に助成金が支給される制度です。
つまり、健康上の理由で仕事を続けにくい状況にある従業員を支援する仕組みをつくった会社に国からお金が支給される制度です。
このコースには3種別あり、それぞれ独立して申請できます。
A:不妊治療のための特別休暇・残業免除・時差出勤・短時間勤務・フレックスタイム・在宅勤務のいずれかを整備し、従業員が5日(回)以上利用した場合に30万円が支給されます。不妊治療は男女問わず対象です。
B:月経に起因する症状への対応のための支援制度を整備し、従業員が5日(回)以上利用した場合に30万円が支給されます。PMS(月経前症候群)も対象に含まれます。
C:更年期に起因する心身の不調への対応のための支援制度を整備し、従業員が5日(回)以上利用した場合に30万円が支給されます。
2. いくらもらえる?
| 種別 | 支給要件 | 支給額 |
|---|---|---|
| A:不妊治療 | 不妊治療のための両立支援制度を5日(回)利用 | 30万円 |
| B:月経 | 月経に起因する症状への対応のための支援制度を5日(回)利用 | 30万円 |
| C:更年期 | 更年期に起因する症状への対応のための支援制度を5日(回)利用 | 30万円 |
いずれも1事業主1回限りの支給です。
A・B・Cはそれぞれ独立しているため、3種別すべての要件を満たした場合は合計90万円を受給できます。
3. 活用事例
事例1:不妊治療のための特別休暇制度を整備し、治療と仕事の両立を支援した
不妊治療中の女性社員から、通院のたびに有給休暇を使い切ってしまうと相談があった。
就業規則に不妊治療のための特別休暇制度を規定し、不妊治療に関する相談に対応する両立支援担当者を選任した。
対象の社員が特別休暇を5日以上利用した。
受給額:30万円(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース・A:不妊治療)
「治療のために有給休暇を使い果たす心配がなくなった」という声があがり、治療を続けながら働き続けられる環境が整った。
事例2:月経・更年期の支援制度を整備し、2種別で受給した
月経による体調不良や更年期症状を抱える女性従業員が複数在籍していたが、制度が整備されておらず、無理をして出勤を続けている状況だった。
就業規則に月経・更年期それぞれの症状に対応できる時差出勤制度と特別休暇制度を規定し、両立支援担当者を選任した。
月経症状のある従業員が時差出勤を5日以上利用し、更年期症状のある別の従業員が特別休暇を5日以上利用した。
受給額:30万円×2種別=60万円(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース・B:月経、C:更年期)
体調に合わせて働き方を調整できるようになったことで、従業員の定着率が改善した。
4. 支給要件
A・B・C共通要件
- 各種別(A・B・C)の両立支援制度の内容・利用手続き・賃金の取扱いを就業規則等に規定していること
不妊治療・月経・更年期それぞれの症状に対応するための制度(休暇制度、残業免除、時差出勤、短時間勤務、フレックスタイム、在宅勤務等のいずれか)を就業規則に具体的に規定している必要があります。制度は雇用保険被保険者以外の従業員も含めて利用できる制度として設ける必要があります。ただし、助成金の支給対象となる従業員(制度利用者)は雇用保険被保険者である必要があります。 - 労働者からの相談に対応する両立支援担当者を選任していること
不妊治療・月経・更年期それぞれについて、従業員からの相談に応じる両立支援担当者を選任します。事業主自身や人事労務担当者が担当者となることができます。社会保険労務士や産業医などの外部専門家を選任することも可能です。担当者名と担当内容を就業規則や社内通知等で明示しておく必要があります。 - 対象の従業員を、制度利用開始日から支給申請日まで雇用保険被保険者として継続雇用していること
制度の利用開始から申請まで在籍して雇用保険に加入し続けていることが必要です。
A(不妊治療)の個別要件
- 不妊治療と仕事との両立支援制度を5日(回)以上利用していること
対象となる制度は、不妊治療のための休暇・残業免除・時差出勤・短時間勤務・フレックスタイム・在宅勤務のいずれかです。1日単位だけでなく、時間単位での取得も1回としてカウントできます。5日(回)のカウントは制度利用開始日から合計で判定します。 - 不妊治療と仕事との両立支援に関する環境整備に取り組んでいること
会社として不妊治療と仕事の両立を支援するための取り組みとして、周知・啓発活動の実施や専用相談窓口の設置などを行っていることが必要です。
B(月経)・C(更年期)の個別要件
- 月経に起因する症状への対応のための支援制度(B)または更年期に起因する症状への対応のための支援制度(C)を5日(回)以上利用していること
Aと同様に、対象となる制度は休暇・残業免除・時差出勤・短時間勤務・フレックスタイム・在宅勤務のいずれかです。月経(PMS含む)または更年期の症状に対応するための利用であることが必要です。
なお、月経の支援制度(B)は、無給で設定した場合、対象外となります。有給の制度または在宅勤務等の形で整備する必要があります。
5. 申請の流れ
A・B・Cいずれの種別も基本的な流れは共通です。
STEP1. 就業規則への制度規定
申請対象となる種別(A・B・Cのいずれか)の支援制度の内容・利用手続き・賃金の取扱いを就業規則に規定します。
制度は雇用保険被保険者以外を含む全従業員を対象とする必要があります。
STEP2. 両立支援担当者の選任・周知
各種別の両立支援担当者を選任し、担当者名と担当内容を全従業員に周知します。
STEP3. 制度の利用
対象の従業員が就業規則に規定された制度を利用します。
STEP4. 利用実績の確認
制度の利用日数(回数)が5日(回)に達した時点で申請要件を満たします。
STEP5. 支給申請
利用実績が5日(回)に達した日の翌日から2か月以内に申請します。
申請先は、本社等の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。郵送の場合は消印ではなく労働局への到達日が期限内である必要があるため、余裕をもって発送してください。
6. よくある質問
Q. 不妊治療中の従業員が男性の場合も申請できますか?
はい、申請できます。
このコースは男女問わず不妊治療を対象としているため、男性従業員が不妊治療のための支援制度を利用した場合も申請対象となります。
ただし、制度そのものを男女問わず利用できる制度として就業規則に規定しておく必要があります。女性従業員のみを対象とした制度では申請できません。
Q. A・B・Cのすべての制度を就業規則に整備しなければ申請できませんか?
いいえ。A・B・Cはそれぞれ独立して申請できるため、すべてを整備する必要はありません。
申請したい種別の制度だけを整備し、従業員が5日(回)以上利用すれば申請できます。A・B・Cの3種別すべてを整備・利用した場合は最大90万円を受給できます。
Q. 両立支援担当者は、社内の人間でなければなりませんか?
社内の人間だけでなく、産業医などの外部専門家を選任することも可能です。
ただし、選任した担当者名と担当内容を全従業員に周知していることが必要です。事業主自身が担当者となることも認められています。
7. まとめ
不妊治療・月経・更年期という3つの健康課題は、多くの女性従業員が職業人生のどこかで直面するものです。
こうした場面で「仕事を続けられない」と感じさせないための仕組みを会社として整えることが、このコースの目的です。
制度を整備することで、「相談できる担当者がいる」「休みを取りやすい制度がある」という職場環境が生まれます。女性従業員が長く活躍できる職場づくりにつながるとともに、採用の場での訴求力にもなります。
まずは自社の就業規則に不妊治療・月経・更年期の支援制度が規定されているかどうかを確認し、どの種別から着手するかを検討することから始めましょう。要件の詳細や自社の状況への当てはめ方については、管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)または社会保険労務士にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください
【参照資料】
厚生労働省『両立支援等助成金 支給申請の手引き(2026年度版)』
厚生労働省『両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)支給要領(令和8年4月1日)』
厚生労働省『両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)Q&A(2026年度版)』
👉 厚生労働省:両立支援等助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)
※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。助成金の支給要件は変更されることがあるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。