【両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)】とは? 業務カバーをしてくれる従業員に手当を!周囲の負担を正当に評価する仕組みに国が助成


育休を取ってもらいたい。でも、その間に残った従業員が業務を抱え込んでしまう——育休取得を推進したい会社にとって、周囲の従業員への負担をどう手当てするかは避けて通れない課題です。

「頑張ってくれてありがとう」の気持ちを、手当という形で正式に報いる仕組みをつくった会社に対して、国がその費用の一部を助成するのが両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)です。
育休取得者が出るたびに周囲の従業員が黙って業務を引き受けるのではなく、会社として正当に評価する体制を整えることが、このコースの核心にあります。

育児休業等支援コースが育休を取る従業員本人の取得・復帰の支援に助成するのに対し、育休中等業務代替支援コースは育休中の業務を代わりに担う周囲の従業員への支援に助成します。両コースを組み合わせて申請することもできます。

こんな企業におすすめ!

・育休を取りやすい職場づくりを進めるために、周囲の従業員が気兼ねなく協力できる環境を整えたい
・人手が少ない職場で育休取得者が出たため、代替要員を新たに雇い入れることを検討している
・育児のための短時間勤務を利用している従業員の業務を担ってくれている同僚に報いたい

1. 育休中等業務代替支援コースとは?

育休中等業務代替支援コースは、育児休業取得者や育児のための短時間勤務制度利用者の業務を代替する周囲の従業員に手当を支給する取り組みや、代替要員を新たに雇い入れた場合に助成金が支給される制度です。つまり、育休中の業務カバーを会社として正式な仕組みとして整えた会社に国からお金が支給される制度です。

例えば、育休に入った従業員の担当業務を引き継いだ同僚に対して、会社が月3万円の業務代替手当を支給した場合、その手当額の4分の3が助成されます。手当を出すことが助成の条件なので、「頑張ってくれた従業員への還元」と「会社のコスト軽減」を同時に実現できる仕組みです。

助成金が支給される場面は3つあります。1つ目は育休中の業務を周囲の従業員にカバーしてもらい手当を支給した場合(手当支給等(育児休業))、2つ目は短時間勤務中の業務を周囲の従業員にカバーしてもらい手当を支給した場合(手当支給等(短時間勤務))、3つ目は代替要員を新たに雇い入れて業務を担ってもらった場合(新規雇用(育児休業))です。

2. いくらもらえる?

手当支給等(育児休業)

育休中の業務を代替した周囲の従業員への手当支給に対して、以下の2つが支給されます。

業務体制整備費

要件支給額
育休期間が1か月以上の場合6万円(外部の社労士等に労務コンサルを委託した場合は20万円)
育休期間が1か月未満の場合2万円(同上)

業務体制整備費は1事業主につき1人目の育休取得者について1回限りの支給です。

業務代替手当

会社が業務代替者に支給した手当総額の4分の3(プラチナくるみん認定事業主は5分の4)を助成します。1か月あたりの上限は10万円、対象期間は最長24か月分です。

手当支給等(短時間勤務)

短時間勤務中の業務を代替した周囲の従業員への手当支給に対して、以下の2つが支給されます。

業務体制整備費

要件支給額
短時間勤務利用期間1か月以上の場合3万円(外部の社労士等に労務コンサルを委託した場合は20万円)

業務体制整備費は1事業主につき1人目の短時間勤務者について1回限りの支給です。

業務代替手当

会社が業務代替者に支給した手当総額の4分の3を助成します。1か月あたりの上限は3万円、対象期間は子が3歳になるまでです。

新規雇用(育児休業)

育休取得者の代替要員を新規雇用または派遣受入で確保し、業務を代替させた期間に応じて以下の額が支給されます。

業務代替期間支給額(通常)支給額(プラチナくるみん認定事業主)
7日以上14日未満9万円11万円
14日以上1か月未満13.5万円16.5万円
1か月以上3か月未満27万円33万円
3か月以上6か月未満45万円55万円
6か月以上1年未満67.5万円82.5万円
1年以上81万円99万円

加算

有期雇用労働者加算(対象の育休取得者・短時間勤務者が有期雇用の場合)として10万円、育児休業等に関する情報公表加算として2万円が加算されます。いずれも加算のみの申請はできません。

なお、支給上限は1年度あたり1事業主10人まで(手当支給等(育児休業)・手当支給等(短時間勤務)・新規雇用(育児休業)の合計)、初回から5年間が対象期間です。

3. 活用事例

事例1:業務代替手当制度を整備し、育休中の業務カバー体制を構築した

営業担当の女性社員が育休を取得することになった。従来は誰かが休むと他の社員が黙って業務を抱え込む状況が続いていたが、この機会に業務の見直しと効率化を行い、就業規則に業務代替手当の規定を整備した。育休中に業務を代替した2名の社員に対して月額2万円ずつ手当を支給した。

受給額:業務体制整備費6万円+業務代替手当(支給手当総額の3/4)(手当支給等(育児休業))

会社として業務カバーへの取り組みを正式な制度にしたことで、育休取得への職場全体の理解が深まった。

事例2:短時間勤務時の業務代替手当制度を導入し、職場の公平感を高めた

育休から復帰した女性社員が育児のための短時間勤務制度を利用することになった。フルタイムで働く同僚が業務を補ってくれていたが、長期化するにつれ不満の声も出てきた。就業規則に短時間勤務時の業務代替手当を規定し、代替している同僚に毎月1万5千円の手当を支給することにした。

受給額:業務体制整備費3万円+業務代替手当(支給手当総額の3/4)(手当支給等(短時間勤務))

制度として明文化したことで、「やって当たり前」ではなく「協力に対する正当な評価」という認識が職場に広まった。

事例3:代替スタッフを新規雇用し、育休取得者が安心して休める環境を整備した

製造ラインの主要メンバーが育休を取得することになったが、業務量から見て周囲での対応が困難だった。6か月間の育休期間に合わせて新たなスタッフを1名雇い入れ、育休取得者の業務を担ってもらった。

受給額:67.5万円(新規雇用(育児休業)・6か月以上1年未満)

現場の体制が整ったことで育休取得者も安心して休業期間を過ごすことができ、育休終了後はスタッフが戦力として定着した。

4. 支給要件

手当支給等(育児休業)

  • 業務代替者の業務の見直し・効率化に取り組んでいること
    育休取得者または業務代替者の業務について、業務の一部の休止・廃止、手順の見直しによる効率化、マニュアル作成による標準化のいずれかを実施していることが必要です。業務分担が確認できる資料を作成し、業務代替期間の開始日までに実施している必要があります。
  • 業務代替者への手当制度を就業規則等に規定していること
    「業務代替手当」「特別業務手当」など、業務を代替することに対して支払う手当の制度を就業規則や社内規程に規定しておく必要があります。労働時間に応じて支払われる残業代そのものは対象外で、業務内容を評価する手当であることが必要です。業務代替期間の開始日までに規定している必要があります。
  • 業務代替者への面談を実施していること
    業務代替者の上司または人事労務担当者が業務代替者に対して、代替業務の内容と賃金について面談で説明していることが必要です。
  • 業務代替者全員への手当が一定額以上支給されていること
    業務代替者全員に支払われた手当の総額が、1万円または業務代替期間1日あたり500円のいずれか低い額以上増額されていることが必要です。
  • 育休取得者が7日以上の育児休業を取得していること
    対象の従業員が令和6年1月1日以降に開始する7日以上(うち所定労働日3日以上)の育児休業を取得していることが必要です。産後休業の終了後に引き続き育児休業をする場合は、産後休業を含めて判定します。
  • 対象の育休取得者を育休開始日および職場復帰後、支給申請日まで雇用保険被保険者として継続雇用していること
    育休中に退職・解雇となった場合や、復帰後に雇用保険の被保険者でなくなった場合は対象外となります。

手当支給等(短時間勤務)

  • 手当支給等(育児休業)の業務見直し・効率化の取り組みおよび手当制度の就業規則等への規定と同様の要件を満たしていること
    育児休業の場合と同様の業務見直し・効率化の取り組みと手当制度の規定が必要です。
  • 対象の従業員が育児のための短時間勤務制度を1か月以上利用していること
    子が3歳になるまでの間、月ごとに所定労働日の5割以上就業し、かつ就労した日数の8割以上短時間勤務制度を利用していることが必要です。
  • 対象の従業員を制度利用開始日から支給申請日まで雇用保険被保険者として継続雇用していること
    制度の利用開始から申請まで在籍して雇用保険に加入し続けていることが必要です。

新規雇用(育児休業)

  • 育休取得者の代替要員を新規雇用または派遣受入で確保し、業務を代替させていること
    既存の従業員に代替させるのではなく、新たに雇い入れた人材または派遣で受け入れた人材に業務を代替させていることが必要です。
  • 育休取得者が7日以上の育児休業を取得していること
    手当支給等(育児休業)の要件と同様です。
  • 育休取得後に原職等に復帰させ、支給申請日まで雇用保険被保険者として継続雇用していること
    育休終了後に原職等に復帰させ、継続雇用が確認されていることが必要です。
  • 育休取得者を育休開始日において雇用保険被保険者として雇用していること
    育休開始日の時点で雇用保険に加入していることが必要です。

5. 申請の流れ

手当支給等(育児休業)

STEP1. 業務の見直し・効率化の実施

育休取得者の業務について棚卸しを行い、業務の一部の休止・廃止や手順の効率化、マニュアル作成などを業務代替期間の開始日までに実施します。

STEP2. 就業規則への手当制度の規定

業務代替手当の制度を就業規則に規定し、業務代替者への面談で代替業務の内容と賃金を説明します。いずれも業務代替期間の開始日までに完了していることが必要です。

STEP3. 育休取得・手当の支給

対象の従業員が7日以上の育休を取得します。業務を代替する従業員全員に対して手当を支給します。

STEP4. 支給申請(1か月後)

育休期間が1か月を経過した時点で1回目の申請ができます。その後は育休期間中1か月ごとに申請できます。職場復帰後の継続雇用が確認された後の申請が最終となります。

手当支給等(短時間勤務)

STEP1. 業務の見直し・効率化の実施および就業規則への手当制度の規定

手当支給等(育児休業)のSTEP1・STEP2と同様です。

STEP2. 短時間勤務制度の利用・手当の支給

対象の従業員が育児のための短時間勤務制度を利用します。業務を代替する従業員全員に手当を支給します。

STEP3. 支給申請(短時間勤務開始1か月後)

短時間勤務開始から1か月経過した時点で1回目の申請ができます。その後は子が3歳になるまで1年ごとに申請できます。

新規雇用(育児休業)

STEP1. 原職等復帰の規定を就業規則に整備

育休取得者を育休終了後に原職等に復帰させる旨を就業規則に規定します。育休開始日前日までに規定されていることが必要です。

STEP2. 代替スタッフの確保・育休取得

新たにスタッフを雇い入れるか派遣で受け入れ、対象の従業員が7日以上の育休を取得します。

STEP3. 支給申請

育休期間が1か月を経過した後に申請できます。育休終了後に職場復帰した場合は、復帰後に最終の申請を行います。

申請先はすべての種別共通で、本社等の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。郵送の場合は消印ではなく労働局への到達日が期限内である必要があるため、余裕をもって発送してください。

6. よくある質問

Q. 手当支給等(育児休業)と育児休業等支援コースは同時に申請できますか?

はい、申請できます。育児休業等支援コースが育休取得者本人の取得・復帰支援に助成するのに対し、育休中等業務代替支援コースは周囲の業務カバーへの支援に助成するため、対象が異なります。育休を取る従業員のプラン作成と支援(育業等支援コース)を行いながら、周囲の業務代替手当も整備する(育休中等業務代替支援コース)という組み合わせが可能です。

Q. 業務代替手当は、時間外労働に対する残業代として支払った場合も対象になりますか?

残念ながら、対象外です。対象となる手当は、業務代替者の業務内容を評価するものである必要があります。残業代そのものや、労働時間に応じて支払われる手当は対象外となります。「業務代替手当」「特別業務手当」「応援手当」など、業務を代替することに対する手当として就業規則に規定したうえで支給することが必要です。

Q. 支給の上限人数「1年度10人まで」は、育休取得者の人数ですか?

はい、育休取得者(または短時間勤務制度の利用者)の人数でカウントします。手当支給等(育児休業)・手当支給等(短時間勤務)・新規雇用(育児休業)の3種別を合計して1年度10人までが上限です。同一の従業員が複数回育休を取得した場合は、申請のたびに1名としてカウントします。

Q. 育休期間が7日未満の場合、手当支給等(育児休業)は申請できますか?

残念ながら申請できません。手当支給等(育児休業)の対象となる育休は7日以上である必要があります。ただし、産後パパ育休(出生時育児休業)と通常の育児休業を連続して取得した場合は、両者の期間を通算して7日以上かどうかを判定できます。

7. まとめ

育休を取りやすい職場をつくるためには、育休を取る従業員だけでなく、周囲で業務を支える従業員への配慮が欠かせません。育休中等業務代替支援コースは、その配慮を「手当」という形で正式な仕組みにした会社を国が後押しする制度です。

手当を就業規則に規定することで、「誰かが休んだときは会社として正当に評価する」という姿勢が社内に伝わります。育休取得者が気兼ねなく休めるようになり、周囲の従業員も納得感を持って協力できる環境が生まれます。

支給額は会社が実際に支給した手当額の4分の3が助成されるため、手当の額が大きいほど助成金も増えます。業務の見直し・効率化と手当制度の就業規則への規定が先行して必要になるため、育休の取得が決まったタイミングで早めに整備を進めることが重要です。

まずは自社の就業規則に業務代替手当の規定があるかどうかを確認し、業務の棚卸しと効率化の取り組みから始めましょう。要件の詳細や自社の状況への当てはめ方については、管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)または社会保険労務士にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください

【参照資料】
厚生労働省『両立支援等助成金 支給申請の手引き(2026年度版)』
厚生労働省『両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)支給要領(令和8年4月8日改正)』
厚生労働省『両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)Q&A(2026年度版)』

👉 厚生労働省:両立支援等助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)

※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。助成金の支給要件は変更されることがあるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。


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