新入社員が職場に馴染めないまま辞めてしまう。従業員が何を考えているかわからず、離職の予兆に気づけない。上司と部下の会話が業務連絡だけになっていて、キャリアの悩みを拾えていない。こうした職場のコミュニケーション不足が、離職の一因になっているケースは多くあります。
「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)職場活性化制度」は、メンター制度・従業員調査(エンゲージメントサーベイ)・1on1ミーティングのいずれかを新たに導入した事業主に対して、国が20万円を助成する制度です。
この記事では、職場活性化制度の要件・助成額・申請の流れを具体的に解説します。
こんな企業におすすめ!
・新入社員が職場に馴染めないまま早期離職するケースが続いている
・従業員のキャリアの悩みを拾えていない
・従業員のやりがいや職場への満足度を把握する仕組みがない
1. 職場活性化制度とは?
職場活性化制度とは、職場内のコミュニケーションの活性化を図るため、以下の3つのいずれかを新たに導入する取り組みです。
| メンター制度 | 直属の上司とは別の先輩(メンター)が後輩(メンティ)のキャリア形成上の課題や職場での悩みをサポートする仕組みです。外部の専門家を外部メンターとして活用することもできます。 |
| 従業員調査(エンゲージメントサーベイ) | 従業員の仕事へのやりがいや組織への貢献意欲を測定する調査を実施し、結果をもとに職場環境の改善につなげる取り組みです。 |
| 1on1ミーティング | 直属の上司と部下が1対1で行う定期的な面談です。 業務上の課題からキャリアの悩みまで、部下の希望に沿った幅広いテーマを扱います。 |
他の雇用管理制度が給与や評価の仕組みを整えるものであるのに対し、職場活性化制度は従業員の声を引き出し、職場のつながりを深めることで定着率を高めることを目的としています。
3つのうちいずれか1つを導入すれば申請できます。
2. いくらもらえる?
助成額は、メンター制度・従業員調査・1on1ミーティングのいずれか1つの導入で20万円です(賃金要件達成で25万円)
3つすべてを導入しても助成額は変わりません。
| メニュー | 内容 | 助成額 |
|---|---|---|
| 賃金規定制度 | 賃金規定と賃金表を整備し、定期昇給の仕組みを導入する(中小企業事業主のみ対象) | 40万円(賃金要件達成で50万円) |
| 諸手当等制度 | 資格手当・家族手当・退職金・賞与などを新設する | 40万円(賃金要件達成で50万円) |
| 人事評価制度 | 評価結果が賃金に反映される人事評価制度を導入する | 40万円(賃金要件達成で50万円) |
| 職場活性化制度 | メンター制度・従業員調査(エンゲージメントサーベイ)・1on1ミーティングのいずれかを導入する | 20万円(賃金要件達成で25万円) |
| 健康づくり制度 | 希望する従業員に人間ドックを受診させる制度を導入する | 20万円(賃金要件達成で25万円) |
| 業務負担軽減機器等 | 従業員の直接的な作業負担を軽減する機器・設備等を導入する | 導入費用の1/2(上限150万円)※賃金要件達成で上限187.5万円または225万円 |
職場活性化制度は、他の雇用管理制度(賃金規定制度・諸手当等制度・人事評価制度・健康づくり制度)や業務負担軽減機器等と組み合わせて申請することができます。
複数の制度を同時に導入した場合の雇用管理制度の助成額上限は80万円(賃金要件達成で100万円)
業務負担軽減機器等と組み合わせた場合は最大230万円(賃金要件達成で最大325万円)まで受け取ることができます。
3. 活用事例
事例1:メンター制度を導入して早期離職が減ったケース
新入社員が入社後半年以内に離職するケースが続いていた。直属の上司とは別の先輩社員をメンターとして選任し、月1回の面談を実施する仕組みを就業規則に新設。
新入社員が業務上の不安や職場での悩みを相談できる場ができたことで、早期離職が減少した。評価時離職率も目標を達成し、助成金を受給した。
事例2:エンゲージメントサーベイを導入して職場の課題が可視化されたケース
従業員の満足度を把握する仕組みがなく、退職の申し出が突然で驚くことが続いていた。外部機関の助言のもとエンゲージメントサーベイを導入し、調査結果をもとに職場環境の改善策を実施。
従業員から職場の課題に向き合ってもらえているという声があがり、離職率の低下につながった。
事例3:1on1ミーティングで上司へのスキル研修を実施せず申請できなかったケース
1on1ミーティングを就業規則に新設し実施したが、上司となる者へのコーチング・カウンセリング等のスキル習得を目的とした研修を受けさせていなかったケース。
申請時に要件を満たさないと判明し、助成金を受給できなかった。職場活性化制度の要件については後述します。
4. 支給要件
職場活性化制度の申請にあたっては、以下の要件をすべて満たす必要があります。
事業主の要件
- 雇用管理制度等整備計画を都道府県労働局長に提出し、認定を受けた事業主であること。
計画書の認定を受ける前に制度を導入してしまうと、要件を満たさず申請できなくなります。 - 計画の認定申請日から計画期間の末日までの間、同一の労働者を最低1名は対象労働者として継続して雇用していること。
計画期間中に対象労働者が全員退職してしまった場合は申請できません。 - 計画開始日の前日から起算して6か月前から計画期間の末日までの期間、雇用する雇用保険被保険者を事業主都合で解雇等していないこと。
この期間中に事業主都合での解雇があった場合、助成金は受給できません。 - 離職者がいる場合、計画期間開始日の前日から6か月前から申請日までの間に、倒産・解雇等の会社都合による離職者数が、計画書提出日時点の被保険者数の6%を超えていないこと(特定受給資格者となる離職理由の被保険者が3人以下の場合を除く)。
たとえば計画書提出日時点の被保険者数が10人の場合、会社都合の離職者が1人以内であれば要件を満たします(6%=0.6人→切り捨てで0人のため、実質3人以下の場合を除くという条件が適用されます)。 - 過去に以下の助成金を受給している場合、最後の支給決定日の翌日から起算して3年間が経過していること。
・人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース/目標達成助成)
・人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)
・人事評価改善等助成金(制度整備助成および目標達成助成)
・建設労働者確保育成助成金(雇用管理制度助成コース)など - 計画開始日までに、対象事業所ごとに「雇用管理責任者」を選任し、従業員に周知していること。
雇用管理責任者とは、雇用管理の改善への取り組みや従業員からの相談対応など、雇用管理の改善に関する事項を管理する担当者のことです。氏名を社内に掲示する、社内メール等で周知するといった方法で周知します。
制度の要件(共通)
- 新たに導入するものであること。
- 適用対象労働者の範囲・制度が適切に実施されるための合理的な条件・事業主の費用負担が労働協約または就業規則に明示されていること。
- 外部の機関や個人等に委託してその一部または全部を実施させる場合、計画認定日時点において公表されている外部機関等が実施した制度でないこと。
制度の要件(メンター制度)
- メンター(外部メンターを除く)に対し、民間団体等が実施するメンタリングに関する知識・スキル(コーチング・カウンセリング等)の習得を目的とする講習を受講させること。
外部メンターを活用する場合は、メンタリングに関する知識・スキルを有していることが必要です。 - メンターおよびメンティに対し、メンター制度に関する事前説明を行うこと。
- メンタリングは原則として対面での面談方式(WEB会議ツールを活用した面談方式を含む)により行うこと。
WEB会議ツールを活用する場合は、メンター・メンティが相互に表情・顔色・声・しぐさ等を確認できる環境を整備することが必要です。 - メンター研修等の受講料・交通費・外部メンターの謝金・委託料等の諸経費が発生する場合は、全額事業主が負担すること。
なお、メンターは適用対象労働者には含まれません。
制度の要件(従業員調査(エンゲージメントサーベイ))
- 外部機関や専門家の助言・指導のもとで導入されたものであること。
- 調査の目的・内容・実施頻度・結果のフィードバック等について、調査実施前に適用対象労働者に周知・事前説明を行っていること。
- 整備計画期間内に、以下の①〜⑤をすべて行っていること。
①調査の実施から終了
②調査結果の分析・とりまとめ
③適用対象労働者へのフィードバック(メール・電話等でも可)
④調査結果を踏まえた職場環境に係る改善方策の検討・整理
⑤調査結果を踏まえた職場環境に係る改善方策について適用対象労働者へ説明 - 実施にあたり費用が発生する場合、全額事業主が負担していること。
- 調査項目について、以下の条件を満たすこと。
・仕事へのやりがい・熱意・活力・組織への貢献意欲などを測定する項目を1つ以上設定すること
・3つ以上の質問項目を設けること
・趣味・嗜好を尋ねる項目など調査の目的にそぐわない質問項目が入っていないこと
制度の要件(1on1ミーティング)
- 1on1ミーティングを実施する上司に対し、民間団体等が実施するスキル(コーチング・カウンセリング等)の習得を目的とする講習を受講させること。
- 1on1ミーティングは原則として対面での面談方式(WEB会議ツールを活用した面談方式を含む)により行うこと。WEB会議ツールを活用する場合は、上司・部下が相互に表情・顔色・声・しぐさ等を確認できる環境を整備すること。
- 適用対象労働者に対して、月に1回以上実施すること。
- 研修の受講料・交通費等の諸経費が発生する場合は、全額事業主が負担すること。
なお、1on1ミーティングを実施する上司は適用対象労働者には含まれません。
離職率の要件
- 評価時離職率算定期間(計画期間終了後12か月間)において、離職率の目標を達成していること。
目標値は事業所の規模によって異なります。
従業員1〜9人の事業所:計画時離職率と同水準以下(現状維持でOK)
従業員10人以上の事業所:計画時離職率から1ポイント以上の低下
いずれの規模でも、評価時離職率が30%以下であることが条件です。
なお、計画時離職率がすでに0%の場合や、目標値を計算した結果が0%を下回る場合は、評価時離職率を0%とすることが目標となります。
5. 申請の流れ
STEP1. 雇用管理制度等整備計画の作成・提出
職場活性化制度の導入内容と計画期間(3か月以上1年以内)を記載した「雇用管理制度等整備計画書(様式第a-1号)」と「導入する職場活性化制度の概要票(様式第a-1号別紙4)」を作成し、計画開始日の少なくとも1か月前までに、かつ6か月より前にならないよう(つまり早すぎてもだめ)、本社所在地を管轄する都道府県労働局に提出します。計画書には計画時離職率も記載します。
提出方法は窓口への持参・郵送・電子申請のいずれかで行えます。郵送の場合は期限までに到達している必要があります。
STEP2. 計画の認定
提出した計画書の内容が適切と認められた場合、都道府県労働局から認定通知書が交付されます。認定が確認できるまで、制度の導入・実施を始めてはいけません。
STEP3. 職場活性化制度の導入・実施
認定を受けた計画に基づき、就業規則に職場活性化制度を明文化し、各制度の要件に沿って実施します。
メンター制度の実施日は、制度の導入を経て、面談方式によるメンタリングを実際に行った日です。
従業員調査(エンゲージメントサーベイ)の実施日は、実際に調査を行った日です。
1on1ミーティングの実施日は、1対1で行う対話方式の面談を実際に行った日です。
STEP4. 評価時離職率算定期間(12か月間)
計画期間終了後、12か月間の離職率(評価時離職率)を測定します。離職率の目標を達成していることが、支給申請の前提条件です。
STEP5. 支給申請
評価時離職率算定期間の末日の翌日から2か月以内に、支給申請書と必要書類を都道府県労働局に提出します。この期限を過ぎると申請が受け付けられなくなります。
主な提出書類は以下の通りです。
・支給申請書(様式第a-6号)
・導入した職場活性化制度の概要票(様式第a-6号別紙4)
・対象労働者名簿(様式第a-6号別紙7)
・事業所内への周知を行ったことが確認できる書類
・各制度の実施内容・日時・場所等が記録された実施記録等
・適用対象労働者の出勤簿(所定の月分)
・適用対象労働者の労働条件通知書または雇用契約書の写し
・離職証明書等(評価時離職率算定期間の離職理由が確認できる書類)
・支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
6. よくある質問
Q. メンター制度・エンゲージメントサーベイ・1on1ミーティングを3つすべて導入した場合、助成額は増えますか?
A. 増えません。職場活性化制度として受け取れる助成額は、3つすべてを導入しても20万円(賃金要件達成で25万円)で変わりません。
Q. メンターは社外の人でも認められますか?
A. 認められます。支援機関や専門家等による外部メンターを活用することができます。外部メンターを活用する場合は、メンタリングに関する知識・スキル(コーチング・カウンセリング等)を有していることが必要です。
Q. 1on1ミーティングはオンラインでも認められますか?
A. 認められます。WEB会議ツールを活用した面談方式も対象となります。ただし、上司・部下が相互に表情・顔色・声・しぐさ等を確認できる環境であること、面談の内容が第三者に知られることがないよう双方のプライバシーに配慮することが必要です。
Q. エンゲージメントサーベイは市販のツールを使っても認められますか?
A. 外部機関や専門家の助言・指導のもとで導入されたものであれば、市販のツールを活用することも可能です。ただし、調査の分析や改善方策の検討においても外部機関や専門家の関与が確認できることが必要です。
Q. 1on1ミーティングの上司へのスキル研修はどのようなものが認められますか?
A. 民間団体等が実施するコーチング・カウンセリング等のスキルの習得を目的とする講習が対象となります。社内での独自研修は対象外です。受講内容・日時・場所等が記載されたカリキュラムや修了証等が申請時の提出書類として必要になります。
7. まとめ
職場活性化制度は、メンター制度・従業員調査(エンゲージメントサーベイ)・1on1ミーティングのいずれかを新たに導入した事業主に20万円(賃金要件達成で25万円)を助成する制度です。給与や評価の仕組みを整えるだけでなく、職場のコミュニケーションを活性化させることで、従業員が安心して長く働ける環境をつくることが目的です。
他の雇用管理制度が賃金や評価の仕組みを整えるものであるのに対し、職場活性化制度は従業員の声を引き出し、職場のつながりを深める取り組みです。賃金規定制度や諸手当等制度と組み合わせることで、待遇面とコミュニケーション面の両方から職場環境を整備することができます。
導入にあたっては、メンター制度や1on1ミーティングでは上司・メンターへのスキル研修が必須である点、エンゲージメントサーベイでは外部機関の関与が必要である点に注意が必要です。まずは自社の職場コミュニケーションの現状を振り返り、どの制度が取り組みやすいかを検討することから始めましょう。
要件の詳細や自社の状況への当てはめ方については、管轄の都道府県労働局またはハローワーク、もしくは社会保険労務士にご相談ください。

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【参照資料】
厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)」のご案内
👉 厚生労働省:人材確保等支援助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)
※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。
助成金の支給要件は頻繁に変更されるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。