【人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)健康づくり制度】とは?人間ドックの制度化で20万円が受給できます


「法律で義務づけられた定期健康診断は毎年実施しているが、それ以上の健康管理は特に何もしていない」
「従業員の健康状態が気になるが、費用の問題もあり人間ドックの導入には踏み切れていない」
そういった状況を抱えている事業主の方は多いのではないでしょうか。

「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)健康づくり制度」は、希望する従業員に人間ドックを受診させる制度を新たに導入した事業主に対して、国が20万円を助成する制度です。

この記事では、健康づくり制度の要件・助成額・申請の流れを具体的に解説します。

こんな企業におすすめ!

・法定の定期健康診断以外の健康管理の取り組みがなく、従業員の健康状態が把握しにくい状態にある
・人間ドックを導入したいが、費用負担をどうするか決め切れていない
・従業員の健康への投資が採用や定着につながると考えているが、制度として整備できていない
・がん検診や歯周疾患検診など、法定健診では受けられない検診を従業員に受けさせたい
・福利厚生の充実を図り、求人票に記載できる待遇を増やしたい

1. 健康づくり制度とは?

健康づくり制度とは、希望する従業員に対して人間ドックを受診させる制度を新たに導入する取り組みです。

ここでいう人間ドックとは、通常の定期健康診断とは異なり、心臓・肝臓・肺・胃・腸・眼・耳などの諸臓器等の検査および糖・脂質代謝の検査等を含み、かつ以下の検診のうち1つ以上を含む総合的な健康診断のことをいいます。

対象となる検診の種類は以下の通りです。
・胃がん検診
・子宮がん検診
・肺がん検診
・乳がん検診
・大腸がん検診
・歯周疾患検診
・骨粗鬆症検診
・腰痛健康診断

他の雇用管理制度が給与や評価・職場のコミュニケーションを整えるものであるのに対し、健康づくり制度は従業員の身体的な健康を会社として支援する取り組みです。
従業員の健康状態を把握し、必要な配慮を行うことで、職場定着につながることが期待できます。

2. いくらもらえる?

助成額は20万円です(賃金要件達成で25万円)

メニュー内容助成額
賃金規定制度賃金規定と賃金表を整備し、定期昇給の仕組みを導入する(中小企業事業主のみ対象)40万円(賃金要件達成で50万円)
諸手当等制度資格手当・家族手当・退職金・賞与などを新設する40万円(賃金要件達成で50万円)
人事評価制度評価結果が賃金に反映される人事評価制度を導入する40万円(賃金要件達成で50万円)
職場活性化制度メンター制度・従業員調査(エンゲージメントサーベイ)・1on1ミーティングのいずれかを導入する20万円(賃金要件達成で25万円)
健康づくり制度希望する従業員に人間ドックを受診させる制度を導入する20万円(賃金要件達成で25万円)
業務負担軽減機器等従業員の直接的な作業負担を軽減する機器・設備等を導入する導入費用の1/2(上限150万円)※賃金要件達成で上限187.5万円または225万円

健康づくり制度は、他の雇用管理制度(賃金規定制度・諸手当等制度・人事評価制度・職場活性化制度)や業務負担軽減機器等と組み合わせて申請することができます。

複数の制度を同時に導入した場合の雇用管理制度の助成額上限は80万円(賃金要件達成で100万円)
業務負担軽減機器等と組み合わせた場合は最大230万円(賃金要件達成で最大325万円)まで受け取ることができます。

3. 活用事例

事例1:人間ドック制度を導入して従業員の健康意識が高まったケース

法定の定期健康診断のみを実施していた事業所が、希望する従業員に胃がん検診と歯周疾患検診を含む人間ドックを受診させる制度を就業規則に新設。

受診費用の半額以上を会社が負担する形で制度を導入した。
従業員から会社が健康に関心を持ってくれているという声があがり、職場への信頼感が高まった。
評価時離職率も目標を達成し、20万円を受給した。

事例2:受診費用を全額自治体補助で賄ったため対象外となったケース

自治体の補助制度を活用して従業員に無料で人間ドックを受診させたケース。

受診に要する費用を要さないものは原則として助成金の対象外と判明し、申請できなかった。
健康づくり制度の申請にあたっては、受診費用の半額以上を事業主が負担していることが必要です。

4. 支給要件

健康づくり制度の申請にあたっては、以下の要件をすべて満たす必要があります。

事業主の要件

  1. 雇用管理制度等整備計画を都道府県労働局長に提出し、認定を受けた事業主であること。
    計画書の認定を受ける前に制度を導入してしまうと、要件を満たさず申請できなくなります。
  2. 計画の認定申請日から計画期間の末日までの間、同一の労働者を最低1名は対象労働者として継続して雇用していること。
    計画期間中に対象労働者が全員退職してしまった場合は申請できません。
  3. 計画開始日の前日から起算して6か月前から計画期間の末日までの期間、雇用する雇用保険被保険者を事業主都合で解雇等していないこと。
    この期間中に事業主都合での解雇があった場合、助成金は受給できません。
  4. 離職者がいる場合、計画期間開始日の前日から6か月前から申請日までの間に、倒産・解雇等の会社都合による離職者数が、計画書提出日時点の被保険者数の6%を超えていないこと(特定受給資格者となる離職理由の被保険者が3人以下の場合を除く)。
    たとえば計画書提出日時点の被保険者数が10人の場合、会社都合の離職者が1人以内であれば要件を満たします(6%=0.6人→切り捨てで0人のため、実質3人以下の場合を除くという条件が適用されます)。
  5. 過去に以下の助成金を受給している場合、最後の支給決定日の翌日から起算して3年間が経過していること。
    ・人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース/目標達成助成)
    ・人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)
    ・人事評価改善等助成金(制度整備助成および目標達成助成)
    ・建設労働者確保育成助成金(雇用管理制度助成コース)など
  6. 計画開始日までに、対象事業所ごとに「雇用管理責任者」を選任し、従業員に周知していること。
    雇用管理責任者とは、雇用管理の改善への取り組みや従業員からの相談対応など、雇用管理の改善に関する事項を管理する担当者のことです。氏名を社内に掲示する、社内メール等で周知するといった方法で周知します。

制度の要件

  1. 新たに導入するものであること。
    ただし、過去に助成金を活用して健康づくり制度を導入しているが要件を満たしていない場合は「改定」として取り扱います。具体的には、法定健診の実施とあわせて対象検診のいずれか1つ以上の検診等を既に運用している場合において、希望する対象労働者に人間ドックを受診させる制度となるよう規定を見直す場合が該当します。
  2. 心臓・肝臓・肺・胃・腸・眼・耳などの諸臓器等の検査および糖・脂質代謝の検査等を含み、かつ検査項目に労働安全衛生法第66条第1項および労働安全衛生規則第44条に定める定期健康診断の項目を含んでいること。
  3. 適用対象労働者の範囲・合理的な条件・事業主の費用負担について、労働協約または就業規則に明示されていること。
  4. 受診等に要する費用は、その半額以上を事業主が負担していること。
    なお、従業員が希望した医療機関において本人が負担した費用について、事業主がその費用の半額以上を本人に支給する方法でも差し支えありません。
    受診に要する費用を要さないもの(自治体等の補助を受ける場合等)については、原則助成金の対象となりません。
  5. 厚生労働省その他の公的機関等が、当該検診等を実施するために適当であると認めていない検診手法によるものではないこと。

離職率の要件

  • 評価時離職率算定期間(計画期間終了後12か月間)において、離職率の目標を達成していること。

目標値は事業所の規模によって異なります。
従業員1〜9人の事業所:計画時離職率と同水準以下(現状維持でOK)
従業員10人以上の事業所:計画時離職率から1ポイント以上の低下

いずれの規模でも、評価時離職率が30%以下であることが条件です。

なお、計画時離職率がすでに0%の場合や、目標値を計算した結果が0%を下回る場合は、評価時離職率を0%とすることが目標となります。

5. 申請の流れ

STEP1. 雇用管理制度等整備計画の作成・提出

健康づくり制度の導入内容と計画期間(3か月以上1年以内)を記載した「雇用管理制度等整備計画書(様式第a-1号)」と「導入する健康づくり制度の概要票(様式第a-1号別紙5)」を作成し、計画開始日の少なくとも1か月前までに、かつ6か月より前にならないよう(つまり早すぎてもだめ)、本社所在地を管轄する都道府県労働局に提出します。計画書には計画時離職率も記載します。

提出方法は窓口への持参・郵送・電子申請のいずれかで行えます。郵送の場合は期限までに到達している必要があります。

STEP2. 計画の認定

提出した計画書の内容が適切と認められた場合、都道府県労働局から認定通知書が交付されます。認定が確認できるまで、制度の導入・実施を始めてはいけません。

STEP3. 健康づくり制度の導入・実施

認定を受けた計画に基づき、就業規則に健康づくり制度を明文化します。常時10人以上の労働者を使用する事業主は、就業規則を改定したら速やかに労働基準監督署に届け出ることが必要です。

健康づくり制度の実施日は、制度の導入を経て、実際に人間ドックを受診した日です。

STEP4. 評価時離職率算定期間(12か月間)

計画期間終了後、12か月間の離職率(評価時離職率)を測定します。離職率の目標を達成していることが、支給申請の前提条件です。

STEP5. 支給申請

評価時離職率算定期間の末日の翌日から2か月以内に、支給申請書と必要書類を都道府県労働局に提出します。この期限を過ぎると申請が受け付けられなくなります。

主な提出書類は以下の通りです。
・支給申請書(様式第a-6号)
・導入した健康づくり制度の概要票(様式第a-6号別紙5)
・対象労働者名簿(様式第a-6号別紙7)
・実施内容・日時・場所等が記載された実施通知
・実施機関との間で締結した契約書等(受診に係る申込書・発注書を含む)
・診断結果・所見等の情報の提供を受けることに関する取り決め等が分かる資料
・領収書等
・事業所内への周知を行ったことが確認できる書類
・適用対象労働者の出勤簿(所定の月分)
・適用対象労働者の労働条件通知書または雇用契約書の写し
・離職証明書等(評価時離職率算定期間の離職理由が確認できる書類)
・支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)

6. よくある質問

Q. 人間ドックは全員に受診させなければなりませんか?

希望する従業員に対して受診させる制度であればよく、全員に義務づける必要はありません。
ただし、制度の適用対象労働者の範囲・合理的な条件・事業主の費用負担が就業規則に明示されていることが必要です。

Q. 受診費用の負担割合はどうすればよいですか?

受診費用の半額以上を事業主が負担することが必要です。
従業員が一旦全額を支払い、事業主がその半額以上を後から支給する方法でも認められます。

Q. 自治体の補助を受けて無料で受診させた場合は対象になりますか?

対象になりません。
受診に要する費用が発生しないもの(自治体等の補助を受ける場合等)は、原則として助成金の対象となりません。

Q. 定期健康診断と同時に実施することはできますか?

可能です。法定の定期健康診断の実施と合わせて、人間ドックに含まれる検診を追加して実施する形でも対象となります。
ただし、人間ドックとして必要な検査項目をすべて満たしていることが必要です。

Q. 検診を受けられる医療機関は限定されますか?

特定の医療機関に限定する必要はありません。
ただし、一部の検診等について人間ドックを実施する医療機関では受診できない場合や、より専門的な医療機関で受診させることが適当な場合は、別の医療機関での受診を含めることができます。

7. まとめ

健康づくり制度は、希望する従業員に人間ドックを受診させる制度を新たに整備した事業主に20万円(賃金要件達成で25万円)を助成する制度です。
法定の定期健康診断では義務づけられていないがん検診や歯周疾患検診・骨粗鬆症検診などを含む総合的な健康診断を、会社として支援する仕組みを整えることが対象となります。

他の雇用管理制度が給与や評価・職場のコミュニケーションを整えるものであるのに対し、健康づくり制度は従業員の身体的な健康を会社として支援する取り組みです。賃金規定制度や諸手当等制度と組み合わせることで、待遇面と健康管理面の両方から職場環境を整備することができます。

注意が必要なのは、自治体等の補助で受診費用が発生しない場合は対象外となる点、受診費用の半額以上の事業主負担が必要である点です。
まずは自社の従業員の健康管理の現状を確認し、人間ドックの導入が現実的かどうかを検討することから始めましょう。

要件の詳細や自社の状況への当てはめ方については、管轄の都道府県労働局またはハローワーク、もしくは社会保険労務士にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください

【参照資料】
厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)」のご案内

👉 厚生労働省:人材確保等支援助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)

※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。
助成金の支給要件は頻繁に変更されるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。


PAGE TOP