【人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)人事評価制度】とは?頑張りが賃金に反映される仕組みをつくって40万円


頑張っている従業員もそうでない従業員も、給与がほとんど変わらない。評価の基準が曖昧で、昇給や昇格の理由を従業員に説明できない。そういった職場では、やる気のある従業員ほど「ここにいても報われない」と感じて離職するリスクが高まります。

「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)人事評価制度」は、従業員の能力や成果を評価し、その結果を賃金に反映させる人事評価制度を新たに導入した事業主に対して、国が40万円を助成する制度です。この記事では、人事評価制度の要件・助成額・申請の流れを具体的に解説します。

こんな企業におすすめ!

・評価の基準が曖昧で、昇給や昇格の理由を従業員に説明できない状態になっている
・管理職が部下の評価をどうつければいいかわからず、毎年悩んでいる
・従業員に目標を持って働いてほしいが、評価制度がなく動機づけが難しい

1. 人事評価制度とは?

人事評価制度とは、従業員の能力・成果・行動などを一定の基準で評価し、その結果を賃金(諸手当・賞与を含む)に反映させる仕組みを導入する取り組みです。

具体的にイメージすると、「営業目標の達成度」「後輩の指導回数」「資格の取得状況」といった項目を評価基準として設定し、年に1回以上評価を行い、その結果に応じて給与や賞与が変わる仕組みです。評価基準が明確であることで、従業員は「何を頑張れば給与が上がるか」を理解でき、働く意欲につながります。

賃金規定制度が「給与の計算ルールそのものを整備する」取り組みであるのに対し、人事評価制度は「従業員の頑張りを可視化し、賃金に反映させる仕組みをつくる」取り組みです。両方を組み合わせることで、昇給のルールと評価の仕組みが一体となった給与体系を整えることができます。

なお、年齢や勤続年数だけで評価が決まる仕組みは対象外です。従業員自身の努力や成果によって評価が変わる仕組みであることが必要です。

2. いくらもらえる?

助成額は40万円です。賃金要件(整備計画期間中に対象従業員の賃金を一定率以上引き上げること)を達成した場合は50万円に増額されます。

メニュー内容助成額
賃金規定制度賃金規定と賃金表を整備し、定期昇給の仕組みを導入する(中小企業事業主のみ対象)40万円(賃金要件達成で50万円)
諸手当等制度資格手当・家族手当・退職金・賞与などを新設する40万円(賃金要件達成で50万円)
人事評価制度評価結果が賃金に反映される人事評価制度を導入する40万円(賃金要件達成で50万円)
職場活性化制度メンター制度・従業員調査(エンゲージメントサーベイ)・1on1ミーティングのいずれかを導入する20万円(賃金要件達成で25万円)
健康づくり制度希望する従業員に人間ドックを受診させる制度を導入する20万円(賃金要件達成で25万円)
業務負担軽減機器等従業員の直接的な作業負担を軽減する機器・設備等を導入する導入費用の1/2(上限150万円)※賃金要件達成で上限187.5万円または225万円

賃金規定制度は、他の雇用管理制度(諸手当等制度・人事評価制度・職場活性化制度・健康づくり制度)や業務負担軽減機器等と組み合わせて申請することができます。

複数の制度を同時に導入した場合の雇用管理制度の助成額上限は80万円(賃金要件達成で100万円)
業務負担軽減機器等と組み合わせた場合は最大230万円(賃金要件達成で最大325万円)まで受け取ることができます。

3. 活用事例

事例1:人事評価制度を導入して従業員のモチベーションが上がったケース

これまで昇給の基準が明文化されておらず、従業員から評価への不満が出ていた。

そのため、能力・行動・成果の3つの軸で評価基準を設定し、評価結果を賞与に反映させる人事評価制度を導入した。
従業員が目標を持って働けるようになり、職場全体の雰囲気が改善した。評価時離職率も目標を達成し、40万円を受給した。

事例2:既存の評価制度を整備して「改定」として申請したケース

すでに簡易的な人事評価制度を運用していたが、評価結果が賃金に反映される仕組みが就業規則に明記されていなかった。

評価結果と賃金の関係を就業規則に明文化し、「改定」として申請。評価時離職率も目標を達成し、40万円を受給した。

事例3:評価基準が年齢・勤続年数のみで要件を満たさなかったケース

年齢と勤続年数に応じて昇給する仕組みを人事評価制度として申請を試みたケース。

評価基準が年齢・勤続年数のみで決まるものは対象外と判明し、申請できなかった。人事評価制度の要件については後述します。

4. 支給要件

人事評価制度の申請にあたっては、以下の要件をすべて満たす必要があります。

事業主の要件

  1. 雇用管理制度等整備計画を都道府県労働局長に提出し、認定を受けた事業主であること。
    計画書の認定を受ける前に制度を導入してしまうと、要件を満たさず申請できなくなります。
  2. 計画の認定申請日から計画期間の末日までの間、同一の労働者を最低1名は対象労働者として継続して雇用していること。
    計画期間中に対象労働者が全員退職してしまった場合は申請できません。
  3. 計画開始日の前日から起算して6か月前から計画期間の末日までの期間、雇用する雇用保険被保険者を事業主都合で解雇等していないこと。
    この期間中に事業主都合での解雇があった場合、助成金は受給できません。
  4. 離職者がいる場合、計画期間開始日の前日から6か月前から申請日までの間に、倒産・解雇等の会社都合による離職者数が、計画書提出日時点の被保険者数の6%を超えていないこと(特定受給資格者となる離職理由の被保険者が3人以下の場合を除く)。
    たとえば計画書提出日時点の被保険者数が10人の場合、会社都合の離職者が1人以内であれば要件を満たします(6%=0.6人→切り捨てで0人のため、実質3人以下の場合を除くという条件が適用されます)。
  5. 過去に以下の助成金を受給している場合、最後の支給決定日の翌日から起算して3年間が経過していること。
    ・人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース/目標達成助成)
    ・人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)
    ・人事評価改善等助成金(制度整備助成および目標達成助成)
    ・建設労働者確保育成助成金(雇用管理制度助成コース)など
  6. 計画開始日までに、対象事業所ごとに「雇用管理責任者」を選任し、従業員に周知していること。
    雇用管理責任者とは、雇用管理の改善への取り組みや従業員からの相談対応など、雇用管理の改善に関する事項を管理する担当者のことです。氏名を社内に掲示する、社内メール等で周知するといった方法で周知します。

制度の要件

  • 対象事業所における全ての対象労働者を適用対象労働者とする制度であること。
    一部の従業員だけを対象とした制度は認められません。
  • 労働者の生産性の向上に資すると見込まれる制度であることについて、労働組合または従業員の過半数を代表する者と合意していること。
    制度の導入前に、従業員代表との合意を得ることが必須です。計画申請時には合意が確認できる書類の提出が必要です。
  • 人事評価の対象と基準・方法が明確であり、従業員に開示していること。
    評価基準が従業員に公開されていることが必要です。評価基準が不透明なまま運用することは認められません。
  • 評価の基準が、年齢や勤続年数のみで一義的に決定されるものでなく、能力・技能・資格、行動・コンピテンシー・努力・姿勢・情意、成果・業績など、従業員個人の意思によって向上させることが可能な項目を対象とした制度であること。
    年功序列のみの評価制度は対象外です。従業員自身の努力や成果が評価に反映される仕組みであることが必要です。
  • 評価対象期間は1年以内の期間であり、評価が年1回以上行われること。
  • 人事評価の結果が当該人事評価の対象となった従業員の賃金(諸手当・賞与を含む)に反映されるものであること。
  • 評価結果が賃金に直接反映されるものであって、その額またはその変動の幅・割合との関係が明確なものであること。また、新しい人事評価制度が賃金規定または賃金表と連動する仕組みであり、平均的な評定を受けた場合に人事評価制度の実施日以後に賃金が増加する仕組みであることが、労働協約または就業規則に明記されていること。
  • 従業員の賃金の額の引き下げや降級(降格)を行う等、助成金の趣旨・目的に反する制度ではないこと。
  • 人事評価期間は、整備計画期間を超えない範囲で設定すること。
  • 新たに導入するものであること。
    ただし、既存の人事評価制度について、就業規則に評価の対象と基準・評定と賃金との関係が規定されていない状態から全ての項目を満たす状態に改めて規定する場合、または更なる生産性の向上に資するよう改めて規定する場合は「改定」として対象になります。

離職率の要件

  • 評価時離職率算定期間(計画期間終了後12か月間)において、離職率の目標を達成していること。

目標値は事業所の規模によって異なります。
従業員1〜9人の事業所:計画時離職率と同水準以下(現状維持でOK)
従業員10人以上の事業所:計画時離職率から1ポイント以上の低下

いずれの規模でも、評価時離職率が30%以下であることが条件です。

なお、計画時離職率がすでに0%の場合や、目標値を計算した結果が0%を下回る場合は、評価時離職率を0%とすることが目標となります。

5. 申請の流れ

STEP1. 雇用管理制度等整備計画の作成・提出

人事評価制度の導入内容と計画期間を記載した「雇用管理制度等整備計画書(様式第a-1号)」と「導入する人事評価制度の概要票(様式第a-1号別紙3)」を作成し、計画開始日の少なくとも1か月前までに、かつ6か月より前にならないよう(つまり早すぎてもだめ)、本社所在地を管轄する都道府県労働局に提出します。計画書には計画時離職率も記載します。

なお、人事評価制度の計画期間は原則3か月以上1年以内ですが、導入日から起算して1年を超える日に人事評価に基づく賃金の支払日が到達する場合は、最長1年3か月以内まで延長することができます。

また、計画申請時には労働組合または従業員の過半数を代表する者と合意していることが確認できる書類(様式第a-1号参考様式1)の提出が必要です。

提出方法は窓口への持参・郵送・電子申請のいずれかで行えます。郵送の場合は期限までに到達している必要があります。

STEP2. 計画の認定

提出した計画書の内容が適切と認められた場合、都道府県労働局から認定通知書が交付されます。計画期間の開始日が近づいても労働局から連絡がない場合は、提出先の労働局に確認してください。認定が確認できるまで、就業規則の改定や賃金の支払いを始めてはいけません。

STEP3. 人事評価制度の導入・実施

認定を受けた計画に基づき、就業規則に人事評価制度を明文化します。常時10人以上の労働者を使用する事業主は、就業規則を改定したら速やかに労働基準監督署に届け出ることが必要です。

人事評価制度の実施日は、制度の導入を経て、制度に基づく賃金を実際に支払った日です。

STEP4. 評価時離職率算定期間(12か月間)

計画期間終了後、12か月間の離職率(評価時離職率)を測定します。離職率の目標を達成していることが、支給申請の前提条件です。

STEP5. 支給申請

評価時離職率算定期間の末日の翌日から2か月以内に、支給申請書と必要書類を都道府県労働局に提出します。この期限を過ぎると申請が受け付けられなくなります。

主な提出書類は以下の通りです。
・支給申請書(様式第a-6号)
・導入した人事評価制度の概要票(様式第a-6号別紙3)
・対象労働者名簿(様式第a-6号別紙7)
・評価結果の一覧、評価結果に基づく昇進・昇給・昇格に係る通知
・制度導入後の賃金規定および賃金表
・事業所内への周知を行ったことが確認できる書類
・適用対象労働者の賃金台帳(所定の月分)
・適用対象労働者の出勤簿(所定の月分)
・適用対象労働者の労働条件通知書または雇用契約書の写し
・離職証明書等(評価時離職率算定期間の離職理由が確認できる書類)
・支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)

6. よくある質問

Q. 既存の人事評価制度がある場合、この制度は使えませんか?

申請できる場合があります。
既存の人事評価制度について、就業規則に評価の対象と基準・評定と賃金との関係が規定されていない状態から全ての項目を満たす状態に改めて規定する場合、または更なる生産性の向上に資するよう改めて規定する場合は「改定」として対象になります。

Q. 評価結果が賃金に反映されるとは、具体的にどういう意味ですか?

評価結果と賃金の変動の関係が就業規則に明記されていることが必要です。例えば、「S評価の場合は賞与を基本額の1.5倍、A評価は1.2倍、B評価は1.0倍とする」といった形で、評価結果と賃金の関係が明確になっていることが求められます。また、平均的な評定を受けた場合に制度実施日以後に賃金が増加する仕組みであることが必要です。

Q. 評価は年1回でよいですか?

年1回以上であれば問題ありません。
ただし、評価対象期間は1年以内の期間で設定することが必要です。

Q. 計画期間はどのくらいに設定すればよいですか?

原則3か月以上1年以内で設定します。ただし、評価サイクルの関係で導入日から1年を超えた日に賃金の支払日が到達する場合は、最長1年3か月以内まで延長することができます。評価から賃金反映までのスケジュールを考慮したうえで計画期間を設定してください。

7. まとめ

人事評価制度は、従業員の能力・成果・行動を評価し、その結果を賃金に反映させる仕組みを整えた事業主に40万円(賃金要件達成で50万円)を助成する制度です。

評価基準が曖昧なまま運用してきた職場では、やる気のある従業員ほど報われないという状況が生まれやすく、離職の遠因になるケースがあります。

賃金規定制度が給与の計算ルールそのものを整備する取り組みであるのに対し、人事評価制度は従業員の頑張りを可視化して賃金に反映させる仕組みをつくる取り組みです。両方を組み合わせることで、昇給のルールと評価の仕組みが一体となった給与体系を整えることができます。

導入にあたっては、従業員代表との事前合意が必須である点、評価基準を従業員に開示することが必要である点に注意が必要です。

また、制度を導入するだけでは助成金は支給されません。計画期間終了後の12か月間で離職率の目標を達成することが受給の条件です。まずは自社の評価基準の現状と、従業員代表との合意形成のステップを確認することから始めましょう。

要件の詳細や自社の状況への当てはめ方については、管轄の都道府県労働局またはハローワーク、もしくは社会保険労務士にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください

【参照資料】
厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)」のご案内

👉 厚生労働省:人材確保等支援助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)

※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。
助成金の支給要件は頻繁に変更されるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。


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