「障害者の就労支援として職業訓練を実施したいが、施設の設置・運営にかかる費用の負担が大きい」「社会福祉法人として障害者向けの訓練コースを新たに立ち上げたい」
そうした団体・法人を対象に、訓練施設の設置・整備・運営にかかる費用の一部を国が支援する制度があります。
それが人材開発支援助成金「障害者職業能力開発コース」です。
他の人材開発支援助成金のコースがすべて「雇用している従業員を訓練した事業主」への助成であるのに対し、このコースは「障害者を訓練する側の施設・団体」への助成です。制度の性格が根本的に異なる点が特徴です。
こんな団体・法人におすすめ!
・ 社会福祉法人として障害者向けの職業訓練コースを新たに設置・運営したい
・ 業界団体として障害者向けの職業訓練センターを立ち上げたい
・ 既存の障害者職業能力開発訓練施設を整備・拡充したい
・ 障害者の雇用促進に係る事業を行う法人として職業訓練を実施している
1. 障害者職業能力開発コースとは?
障害者職業能力開発コースは、事業主・社会福祉法人・学校法人などが障害者向けの職業訓練施設を設置・運営した場合に、その費用の一部を助成する制度です。
例えば、社会福祉法人が就労移行支援事業所に附設した職業訓練施設を新たに設置するケース、建設業や製造業の業界団体が障害者向けの職業訓練センターを運営するケースがイメージに近いです。
障害者雇用は障害者雇用促進法により事業主に義務づけられており、雇用数は増加傾向にあります。ただし、障害の種類・程度によっては一般就労の前に体系的な職業訓練が必要な方が多く、公的な職業能力開発施設(ポリテクセンターなど)だけでは対応しきれない現状があります。
本コースは、民間の事業主や社会福祉法人が自ら訓練施設を設置・運営することを費用面で後押しする仕組みとして設けられています。
本コースには「施設設置等助成」と「施設運営等助成」の2つの助成があります。
「施設設置等助成」は、職業訓練施設の設置・整備に要する費用への助成、「施設運営等助成」は、職業訓練の実施・運営に要する費用への助成です。
申請にあたっては、施設の設置・整備または訓練の実施を始める前に、都道府県労働局から受給資格の認定を受けることが必要です。
認定前に着手した場合は助成対象外となるため、早めに手続きを進めることが重要です。
2. いくらもらえる?
施設設置等助成(施設の設置・整備への助成)
| 区分 | 助成率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 施設または設備の設置・整備 | 4分の3(75%) | 5,000万円 |
| 施設または設備の更新 | 4分の3(75%) | 1,000万円(累計上限額) |
施設運営等助成(訓練の運営への助成)
四半期ごとに、訓練を受講した障害者1人あたりの運営費をもとに算定されます。
| 対象となる障害者の区分 | 助成額 | 月あたり上限 |
|---|---|---|
| 重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者など(重度障害者等) | 1人あたり運営費の5分の4 | 17万円 |
| それ以外の障害者 | 1人あたり運営費の4分の3 | 16万円 |
なお、重度障害者等が訓練修了後に就職した場合は、就職者1人あたり10万円が加算されます(就職加算)。
3. 活用事例
事例1:社会福祉法人が障害者向け訓練施設を新設
社会福祉法人が、精神障害者・発達障害者を対象としたPC操作・事務補助の職業訓練施設を新たに設置したケース。
施設の内装工事・訓練用機器の購入などにかかった施設整備費用は合計600万円だった。
受給額の試算(施設設置等助成)
施設整備費用600万円 × 75% = 450万円
事例2:業界団体が障害者向け訓練を運営
製造業の業界団体が、身体障害者10名を対象に機械加工の職業訓練を6か月間実施したケース。
1か月あたりの運営費は1人あたり18万円だったが、上限17万円が適用された。
訓練修了後、重度身体障害者3名が就職した。
受給額の試算(施設運営等助成)
運営費助成:17万円 × 10名 × 6か月 = 1,020万円
就職加算:10万円 × 3名 = 30万円
合計:1,050万円
事例3:施設設置と運営助成の組み合わせ
社会福祉法人が、知的障害者・精神障害者を対象とした食品加工・清掃技術の職業訓練施設を新設し(施設整備費800万円)、開設後に重度知的障害者5名・その他障害者5名の計10名に対して1年間訓練を実施したケース。
1人あたり月の運営費は重度障害者等が20万円(上限17万円適用)、その他障害者が18万円(上限16万円適用)だった。
訓練修了後、重度知的障害者2名が就職した。
受給額の試算
施設設置等助成:600万円(800万円 × 75%)
施設運営等助成(重度障害者等):17万円 × 5名 × 12か月 = 1,020万円
施設運営等助成(その他障害者):16万円 × 5名 × 12か月 = 960万円
就職加算:10万円 × 2名 = 20万円
合計:2,600万円
4. 支給要件
申請できる団体・法人の要件
次のいずれかに該当することが必要です。
- 事業主または事業主の団体であること
団体の場合は、代表者・管理者の選任、規約の規定、経理担当職員を配置した事務局の設置が必要です。 - 私立学校法に規定する学校法人であること
専修学校または各種学校を設置する学校法人が対象です。 - 社会福祉法第22条に規定する社会福祉法人であること
- その他障害者の雇用の促進に係る事業を行う法人であること
また、上記に加えて、訓練において就職支援責任者を1名以上選任することが必要です。
訓練を受けた障害者が実際に就職できるよう継続的に支援する担当者のことです。
訓練施設・カリキュラムの要件
- 訓練期間が6か月以上2年以内であること
簡易に習得できる技能等に関する訓練科については3か月以上6か月未満でも可となります。 - 訓練時間は6か月間について700時間を基準として定めること
1日5〜6時間が標準です。訓練期間・職種・障害の種類等に応じて増減することができます。 - 訓練科目は雇用機会の大きいものであって、対象となる障害者の職業に必要な能力を開発・向上することが必要なものであること
趣味・教養・就職との関連性が薄いもの、職業能力のごく一部を開発するにすぎないもの、通常の就職にあたって必要のないものは対象外です。 - 訓練カリキュラムは実技を中心としたものであること
実技がおおむね5割以上であることが必要です。
訓練対象となる障害者の要件
次のいずれかに該当する障害者であること。
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者
- 発達障害者
- 難病患者(対象となる疾病は支給要領に掲げる疾病に限る)
- その他心身の機能の障害のある者であって、職業能力の開発・向上が必要な者
5. 申請の流れ
STEP1:受給資格認定申請書の提出
施設の設置・整備または訓練の実施を始める前に、受給資格認定申請書を主たる事業所を管轄する都道府県労働局に提出し、受給資格の認定を受けます。認定を受けずに着手した場合は助成対象外となるため、計画段階で早めに申請してください。
主な提出書類は以下のとおりです。
- 受給資格認定申請書(施設設置等の場合:様式第1号、施設運営等の場合:様式第2号)
- 障害者職業能力開発訓練事業計画(施設設置等の場合)または障害者職業能力開発訓練運営事業計画(施設運営等の場合)
- 定款または規約の写し
- 法人登記事項証明書等
STEP2:施設の設置・整備または訓練の実施
受給資格の認定を受けた後、認定を受けた計画に沿って施設の設置・整備または職業訓練を実施します。
STEP3:支給申請書の提出
施設の設置・整備または訓練期間の終了後、定められた期限内に支給申請書と必要書類を管轄の都道府県労働局に提出します。
STEP4:審査・支給決定・振込
書類提出後、都道府県労働局で審査が行われます。支給決定後、指定の金融機関口座へ振り込まれます。
6. Q&A
Q1. 既に障害者向けの訓練を実施している場合も申請できますか?
はい、施設運営等助成は既存の訓練施設を運営している場合も対象となります。
ただし、申請前に受給資格の認定を受けることが必要です。既に運営している場合でも、認定を受けずに実施した期間分の費用は助成対象外となります。
Q2. 訓練対象は自社で雇用している障害者でなくてもよいですか?
はい、自社で雇用している障害者に限りません。
訓練施設に入所・通所する障害者であれば、雇用関係がなくても訓練対象となります。これが他の人材開発支援助成金のコースと大きく異なる点です。
7. まとめ
障害者職業能力開発コースは、障害者向けの職業訓練施設を設置・運営する社会福祉法人・事業主団体・学校法人などを、施設設置と運営の両面から国が費用支援する制度です。
他の人材開発支援助成金とは根本的に性格が異なり、「雇用している従業員を訓練する」制度ではなく「障害者を訓練する施設・事業そのもの」を支援する点が最大の特徴です。
施設整備費用の75%・月あたり最大17万円の運営費助成・就職加算と、助成の規模が大きい制度であるだけに、申請にあたっては施設設置・運営開始前の受給資格認定が必須で、認定前着手は助成対象外となります。
要件が多岐にわたるため、申請を検討している社会福祉法人・団体・法人は早い段階で都道府県労働局または社会保険労務士にご相談ください。

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※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。本コースの支給要領は令和5年度版が現行版ですが、支給要件は変更されることがあるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の情報をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。
【参照資料】
厚生労働省「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)支給要領(令和5年6月26日版)」