新卒を採用したが、OJTだけで育てようとすると先輩社員の負担が大きく、体系的なスキルが身につくか不安だ。外部研修と職場での実務指導を組み合わせて計画的に育成したいが、そのための費用と時間をどう確保すればいいかわからない。
そんな悩みに応える制度が「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の認定実習併用職業訓練」です。
6か月から2年間にわたってOJTとOFF-JTを組み合わせた育成計画を実施した場合に、研修費用の最大60%とOJT実施助成として20万円が支給されます。
有期実習型訓練が正社員転換を目的とするのに対し、認定実習併用職業訓練は主に15歳以上45歳未満の若手・中堅層の職業能力を体系的に高めることを目的とした制度です。
こんな企業におすすめ!
・新卒や若手社員を、OJTと外部研修を組み合わせて体系的に育てたい
・現場の実務指導と外部スクールの座学を連携させた育成計画を作りたい
・6か月以上かけてじっくりと専門スキルを身につけてもらいたい
1. 認定実習併用職業訓練とは?
認定実習併用職業訓練とは、企業内でのOJT(職場での実務指導)と教育訓練機関でのOFF-JT(座学・外部研修)を組み合わせた訓練計画について、厚生労働大臣の認定を受けたうえで実施した場合に助成を受けられるメニューです。
例えば、新卒で採用した製造スタッフに対して、午前中は工場でのOJT、週2回は外部の技術専門校での座学というように、OJTとOFF-JTを組み合わせた1年間の育成計画を実施するようなケースが典型的な活用例です。
人材育成訓練がOFF-JTのみを対象とするのに対し、認定実習併用職業訓練は6か月以上の長期にわたってOJTとOFF-JTを一体的に実施する点が特徴です。
また有期実習型訓練が正社員転換を必須要件とするのに対し、認定実習併用職業訓練は転換の義務はなく、在職中の若手・中堅層のスキルアップにも活用できます。
対象となる労働者は訓練開始日において15歳以上45歳未満の労働者に限られます。
また、訓練計画の実施にあたっては、事前に厚生労働大臣の認定(実践型人材養成システム)を受けることが必須です。大臣認定を受けていない訓練計画は助成対象になりません。
2. いくらもらえる? 助成率・助成額(中小企業)
経費助成(受講料など)
| 区分 | 通常 | 賃上げ等加算時 |
|---|---|---|
| 経費助成率 | 45% | 60%(+15%) |
経費助成の上限額は、OFF-JTの訓練時間数に応じて変わります(1人1訓練あたり)。
| 訓練時間数(OFF-JT) | 上限額(中小企業) |
|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 15万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 30万円 |
| 200時間以上 | 50万円 |
OJT実施助成
OJTの実施に対して、別途以下の助成が支給されます。有期実習型訓練・中高年齢者実習型訓練の10万円に対し、認定実習併用職業訓練は20万円と高く設定されています。
| 区分 | 通常 | 賃上げ等加算時 |
|---|---|---|
| 1人1コースあたり | 20万円 | 25万円(+5万円) |
賃金助成(訓練中の賃金)
OFF-JTの実施時間に対して、以下の賃金助成が支給されます。
| 区分 | 通常 | 賃上げ等加算時 |
|---|---|---|
| 1人1時間あたり | 800円 | 1,000円(+200円) |
賃金助成は所定労働時間内に受講した時間のみが対象です。
eラーニング・通信制の注意点
認定実習併用職業訓練のOFF-JTは、通学制または同時双方向型の通信訓練(ZoomやTeamsなどのオンラインライブ研修)に限られます。eラーニングや通信制は原則として助成対象外です。
ただし、通学制の訓練に付加的なものとして内容に連続性があるeラーニングを組み合わせる場合は、例外的に助成対象となる場合があります(その場合のeラーニング分の経費助成上限額は15万円)。
3. 活用事例
事例1:製造業(新卒採用者への1年間の育成訓練)
製造業の会社が新卒採用した製造スタッフに対し、外部の技術専門校でのOFF-JT(機械加工・品質管理研修、計200時間、受講料30万円)と社内でのOJT(650時間)を組み合わせた1年間の訓練計画を大臣認定を受けて実施した。
受給額の試算(通常分)
- 経費助成:30万円(30万円×45%=13万5千円。ただし上限50万円の範囲内のため全額適用→実際は13万5千円)
※正確には30万円×45%=13万5千円 - OJT実施助成:20万円
- 賃金助成:16万円(200時間×800円)
- 合計:49万5千円
事例2:IT企業(若手エンジニアの育成訓練)
IT企業が採用から3か月以内の若手エンジニアに対し、外部スクールでのOFF-JT(プログラミング・システム設計研修、計150時間、受講料40万円)と社内OJT(300時間)を組み合わせた6か月の訓練計画を大臣認定を受けて実施した。
受給額の試算(賃上げ等加算あり)
- 経費助成:24万円(40万円×60%。上限30万円の範囲内のため全額適用)
- OJT実施助成:25万円
- 賃金助成:15万円(150時間×1,000円)
- 合計:64万円
4. 支給要件
訓練の要件
- 職業能力開発促進法第26条の3第3項に基づく厚生労働大臣の認定を受けた訓練であること
この制度を利用するには、訓練開始の30日前までに「実践型人材養成システム実施計画」を管轄の労働局に提出し、大臣認定を受けることが必須です。大臣認定を受けていない訓練に対して計画届を提出しても、助成金の対象にはなりません。 - OJTとOFF-JTを効果的に組み合わせて実施する訓練であること
職場での実務指導(OJT)と、業務から切り離した座学・外部研修(OFF-JT)の両方を組み合わせることが必要です。どちらか一方のみでは対象になりません。 - 訓練実施期間が6か月以上2年以下であること
訓練の開始から終了までの期間が6か月以上2年以下である必要があります。1か月以上連続して訓練を実施しない期間が生じた場合、その空白期間は訓練実施期間に含まれません。 - 総訓練時間数が1年当たりの時間数に換算して850時間以上であること
1年換算で850時間以上のペースで実施することが必要です。例えば、訓練期間が6か月の場合は総訓練時間数が425時間以上(850時間÷2)必要となります。 - 総訓練時間数に占めるOJTの割合が2割以上8割以下であること
OJTの時間数が多すぎても少なすぎても対象外になります。OFF-JTとOJTのバランスを訓練カリキュラム作成時に確認しておきましょう。 - OFF-JTについては、通学制または同時双方向型の通信訓練であり、1コースの実訓練時間数が計画届の提出時および支給申請時において10時間以上であること
「同時双方向型の通信訓練」とは、ZoomやTeamsなどを使ったリアルタイムのオンライン研修を指します。録画視聴のみのものは該当しません。また、10時間の要件は計画届の時点だけでなく支給申請時にも満たしている必要があります。 - OFF-JTについては、事業主が自ら運営する認定職業訓練(事業内訓練)または教育訓練機関に委託して行う事業外訓練のいずれかであること
認定実習併用職業訓練の事業内訓練は、事業主が自ら運営する「認定職業訓練」に限られます。一般的な社内研修は事業内訓練として認められませんのでご注意ください。 - OJTについては、適格な指導者の指導のもとで、計画的に行われるものであること
適格な指導者とは、申請事業主の役員等または申請事業主に雇用されている者で、訓練実施日における出退勤時刻を確認できる者を指します。指導者の出退勤時刻が確認できない場合はOJTを実施したと認められません。なお、親会社や子会社の従業員は適格な指導者に該当しません。 - OJTについては、原則、対面で行うこと
OJTは原則として対象労働者と指導者が同じ場所で行う必要があります。ただし、労務管理・経理・書類作成・プログラム関連・システム開発・各種設計などの業務にかかるOJTは、テレワーク等オンラインで実施することが可能です。 - OJTについては、OJT実施日ごとに、対象労働者が「OJT実施状況報告書(OJT訓練日誌)(様式第9号)」を作成すること
訓練を実施した日ごとに、対象労働者本人が日誌を作成します。まとめて後から記入することはできません。支給申請時に提出が必要な書類です。 - 職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練であること
現在または将来の職務に直結する内容であることが必要です。ただし、認定実習併用職業訓練については、接遇・マナーなど「職業人として共通して必要なもの」がOFF-JT全体の半分未満であれば、助成対象として取り扱われる特例があります。 - 訓練終了後にジョブ・カード様式3-3-1-1「職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)」により職業能力の評価を実施すること
訓練が終わった後に、汎用性のある評価基準に基づいて対象労働者の職業能力を評価し、ジョブ・カードに記録します。この評価を実施しない場合は助成対象になりません。
労働者の要件
- 訓練開始日において、15歳以上45歳未満の労働者であること
訓練を開始する時点で15歳以上45歳未満であることが必要です。45歳以上の従業員については、令和8年4月に新設された「中高年齢者実習型訓練」をご検討ください。 - 次のいずれかに該当する労働者であること
- 新たに雇い入れた被保険者(雇い入れ日から訓練開始日まで3か月以内の者)
- 大臣認定の申請前から雇用している短時間等労働者であって、新たに通常の労働者に転換した者(転換日から訓練開始日まで3か月以内の者)
- 既に雇用している被保険者
新卒採用者はもちろん、中途採用者や、パートから正社員に転換した従業員も対象になります。ただし、新規採用者については雇い入れから3か月以内に訓練を開始する必要があります。
- キャリアコンサルタント等によるジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを受けた者であること(学校等の卒業・修了予定者を除く)
訓練開始前にキャリアコンサルティングを受けることが必要です。学校を卒業・修了する予定の新卒者はこの要件が免除されます。
- キャリアコンサルティングの中で、実習併用職業訓練への参加が必要と認められた者であること(学校等の卒業・修了予定者を除く)
面談の結果として訓練への参加が必要と認められる必要があります。こちらも新卒者は要件が免除されます。
- 訓練実施期間中に、申請事業主の事業所において被保険者であること
訓練を受けている期間中、雇用保険の被保険者であることが必要です。訓練期間中に退職した場合は対象外となります。
- OFF-JTおよびOJTのそれぞれについて、受講時間数が実訓練時間数の8割以上であること
OFF-JTとOJTの両方について、計画した時間数の8割以上を受講していることが必要です。どちらか一方でも8割を下回った場合、その従業員分の助成金は全額対象外となります。
- 業務独占資格に係る業務(理美容等)を対象とした訓練の場合、OJTを実施する前までに当該資格を有している者であること
理美容師など、資格を持つ者しか業務を行えない職種でのOJTを実施する場合は、OJT開始前に対象労働者がその資格を取得済みである必要があります。
5. 申請の流れ
認定実習併用職業訓練は、計画届の提出前に大臣認定の申請が必要です。大臣認定には審査期間がかかるため、早期に手続きを進めることが重要です。
特に1〜3月は申請が集中するため、早めの準備をお勧めします。
STEP1:大臣認定の申請(訓練開始日の30日前までに)
「実践型人材養成システム実施計画」を作成し、管轄の都道府県労働局へ提出します。審査を経て「実践型人材養成システム実施計画認定通知書」が交付されます。
主な申請書類(大臣認定)
- 実施計画認定申請書(様式第7号第1面〜第3面)
- 実践型人材養成システム実施計画
- 教育訓練カリキュラム
- ジョブ・カード様式3-3-1-1:企業実習・OJT用
- 提出書類の確認シート
STEP2:計画届の提出
大臣認定通知書の交付後、訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に「職業訓練実施計画届(様式第1-1号)」と必要書類を管轄の都道府県労働局へ提出します。計画届の提出前に訓練を開始した場合は、助成金を受けることができません。
STEP3:キャリアコンサルティングの実施
新卒者以外の対象労働者については、訓練開始前にキャリアコンサルタント等による面談を実施し、訓練への参加が必要かどうかを確認します。
STEP4:訓練の実施
計画届の内容に沿ってOJTとOFF-JTを実施します。OJT実施日ごとにOJT訓練日誌の作成が必要です。支給申請日までに訓練にかかった経費を全額支払っておく必要があります。
STEP5:職業能力評価・支給申請
訓練終了後にジョブ・カードによる職業能力評価を実施します。訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に支給申請書と必要書類を労働局へ提出します。
6. Q&A
Q1. 大臣認定の審査にはどのくらい時間がかかりますか?
審査期間は提出時期によって異なりますが、数週間から1か月程度かかる場合があります。
特に1〜3月は申請が集中するため、さらに時間がかかることがあります。訓練開始の30日前が申請期限ですが、余裕を持って2〜3か月前には申請することをお勧めします。
Q2. 大臣認定を受けたからといって助成金が必ず支給されますか?
残念ながら、大臣認定を受けた訓練計画であっても、助成金の支給要件を満たさない場合は助成対象とならないことがあります。
大臣認定の基準と助成金の支給要件は別々に定められています。計画届の提出前に、助成金の要件についても必ず確認しておきましょう。
Q3. 45歳以上の従業員にOJT+OFF-JTを組み合わせた育成訓練をしたい場合はどうすればよいですか?
令和8年4月に新設された「中高年齢者実習型訓練」をご活用ください。
認定実習併用職業訓練の対象が15歳以上45歳未満であるのに対し、中高年齢者実習型訓練は訓練開始日において45歳以上の被保険者が対象です。
大臣認定も不要でシンプルな手続きで申請できます。詳しくは「中高年齢者実習型訓練」の記事をご覧ください(近日公開予定)。
Q4. 途中で訓練計画の内容を変更したい場合はどうすればよいですか?
訓練計画の内容を変更する場合は、変更届の提出が必要です。
変更の内容によって提出期限が異なります。対象労働者の追加や事前届出が必要な変更事由については、変更後の訓練実施日の前日まで、対象労働者の病気・けがなどやむを得ない理由による変更は変更後の訓練実施日の翌日から7日以内が提出期限です。変更の内容によっては大臣認定の変更手続きも必要になる場合がありますので、早めに管轄の労働局にご相談ください。
7. まとめ
認定実習併用職業訓練は、6か月から2年にわたってOJTと外部研修を組み合わせた体系的な育成計画に対して助成を受けられる制度です。
OJT実施助成が他のメニューより高い20万円(賃上げ等加算時は25万円)に設定されており、長期的な人材育成に取り組む企業にとって手厚い支援内容となっています。
活用にあたって最も重要なのは、訓練開始の30日前までに大臣認定の申請を済ませることです。
新卒採用者を長期的に育成したい、外部研修と職場内指導を一体的に計画したいという場合は、まず大臣認定の申請に必要な訓練計画の作成から始めましょう。
大臣認定の申請手続きや助成金の要件の確認でお困りの場合は、都道府県労働局・ハローワーク、または社会保険労務士にご相談ください。

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※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。助成金の支給要件は変更されることがあるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。
【参照資料】
厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内(令和8年度版)パンフレット(PL080408開企01)」
厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)支給要領(令和8年4月8日版)」