「パートやアルバイトのスタッフに外部研修を受けさせたいけれど、受講料が気になって踏み出せない」「正社員だけでなく非正規の従業員も含めて育てていきたいが、会社として費用をどこまで負担できるか悩んでいる」
そんなときに活用したいのが「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」です。
研修にかかった受講料や、研修中に支払った賃金の一部が返ってくる制度で、正規・非正規を問わず幅広い従業員を対象にできるのが特徴です。
令和8年4月からは、45歳以上の中高年齢者を対象とした新しいメニューも加わりました。
こんな企業におすすめ!
・会社として計画的に人材育成に取り組みたい
・新入社員や若手社員のスキルアップのために外部講師を招いた社内研修を実施したい
・パートやアルバイトを正社員に登用することを検討しており、そのための育成訓練を実施したい
1. 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)とは?
人材開発支援助成金は、会社が費用を負担して従業員に研修を受けさせると、受講料や研修中の賃金の一部が国から返ってくる制度です。
例えば、介護施設がパートの介護職員に介護福祉士の受験対策講座を受けさせた場合や、建設会社が現場スタッフに施工管理の資格取得研修を受けさせた場合、費用の一部が助成されます。
業種や職種の縛りはなく、職務に関連した研修であれば幅広く対象になります。
「人材育成支援コース」はこの助成金の中で最も幅広く使えるコースで、正規・非正規を問わずほぼすべての従業員を対象にできます。
人への投資促進コースが令和4〜8年度の期間限定であるのに対し、人材育成支援コースは期限なく継続して使える制度です。
2. 4つの訓練メニューと使い分け
人材育成支援コースには、令和8年4月時点で4つの訓練メニューがあります。育てたい対象や目的によって使い分けます。
| メニュー | 対象 | 訓練形態 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| ①人材育成訓練 | 正規・非正規問わず全従業員 | OFF-JT(座学・実習) | 最も汎用性が高い |
| ②認定実習併用職業訓練 | 主に15歳以上45歳未満 | OJT+OFF-JT | 厚生労働大臣の認定が必要 |
| ③有期実習型訓練 | 有期契約労働者等 | OJT+OFF-JT | 正社員転換が必須要件 |
| ④中高年齢者実習型訓練 | 45歳以上の被保険者 | OJT+OFF-JT | 令和8年4月新設 |
① 人材育成訓練(最も使いやすい)
最も汎用性が高く、多くの企業が利用しているメニューです。
正規・非正規を問わず対象にでき、10時間以上のOFF-JT(生産活動と切り離した場所で行う座学や実習)であれば申請できます。
外部研修への参加や、外部講師を招いた社内研修などが対象になります。
👉 詳しい要件・申請方法は「人材育成訓練」の記事で解説しています(近日公開予定)
② 認定実習併用職業訓練(若手をじっくり育てる)
主に新卒者など若手を対象に、OJT(職場での実務指導)とOFF-JTを組み合わせて6か月以上かけて育成するメニューです。
実施計画について厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。訓練開始日時点で15歳以上45歳未満の労働者が対象です。
👉 詳しい要件・申請方法は「認定実習併用職業訓練」の記事で解説しています(近日公開予定)
③ 有期実習型訓練(正社員転換を目指す)
パートや契約社員など有期契約の従業員を正社員へ転換させることを目的としたメニューです。
OJTとOFF-JTを2か月以上組み合わせて実施します。
令和7年4月以降は、訓練終了後・支給申請日までに正規雇用労働者等への転換を行った場合にのみ助成対象となります。
👉 詳しい要件・申請方法は「有期実習型訓練」の記事で解説しています(近日公開予定)
④ 中高年齢者実習型訓練(令和8年4月新設)
45歳以上の従業員が、新しい職務や役割に対応するためのスキルを体系的に身につけるためのメニューです。OJTとOFF-JTを2か月以上組み合わせて実施します。
訓練開始前にキャリアコンサルタントによる面談を受け、訓練への参加が必要と認められることが条件です。
👉 詳しい要件・申請方法は「中高年齢者実習型訓練」の記事で解説しています(近日公開予定)
3. いくらもらえる? 助成率・助成額(中小企業)
助成金は「経費助成」と「賃金助成」の2種類があります。
賃上げ等の要件を満たした場合は、助成率・助成額がさらに加算されます。
経費助成(受講料などの補助)
| メニュー | 対象者 | 通常 | 賃上げ等加算時 |
|---|---|---|---|
| ①人材育成訓練 | 正規雇用労働者等 | 45% | 60%(+15%) |
| 有期契約労働者等 | 70% | 85%(+15%) | |
| ②認定実習併用職業訓練 | 正規雇用労働者等 | 45% | 60%(+15%) |
| ③有期実習型訓練 | 有期契約労働者等 | 75% | 100%(+25%) |
| ④中高年齢者実習型訓練 | 被保険者 | 60% | 75%(+15%) |
経費助成には、訓練時間数に応じた上限額があります(1人1訓練あたり)。
| 訓練時間数 | 中小企業 |
|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 15万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 30万円 |
| 200時間以上 | 50万円 |
1事業所・1年度あたりの助成限度額は1,000万円です。
賃金助成(訓練中の給与補助)
従業員が訓練を受けている時間中も賃金を支払う必要がありますが、その負担を軽減するための助成です。
| メニュー | 通常 | 賃上げ等加算時 |
|---|---|---|
| 全メニュー共通(1人1時間あたり) | 800円 | 1,000円(+200円) |
| OJT実施助成額(1人1コースあたり) ②認定実習併用職業訓練 ③有期実習型訓練 ④中高年齢者実習型訓練 | 10万円 | 13万円 |
eラーニング・通信制の注意点
eラーニングや通信制による訓練は、経費助成の対象にはなりますが、賃金助成の対象外です。また、賃金助成の対象時間数は、所定労働時間内に受講した時間のみとなります。
4. 申請の流れ(各メニュー共通)
訓練を始める前に必ず計画届を提出しておく必要があります。研修を受けさせてから後で申請することはできません。
STEP1:計画届の提出
訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に「職業訓練実施計画届」を管轄の都道府県労働局へ提出します。1か月前を1日でも過ぎると受け付けられませんので、日程には余裕を持って動きましょう。
メニューによっては、計画届の前後にキャリアコンサルティングの実施や、厚生労働大臣の認定申請など、追加の手続きが必要になる場合があります。詳しくは各メニューの記事をご確認ください。
STEP2:訓練の実施
計画届の内容に沿って訓練を実施します。支給申請日までに訓練にかかった経費を全額支払っておく必要があります。通学制・同時双方向型の通信訓練の場合、実訓練時間数の8割以上の出席が必要です。
STEP3:支給申請
訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請書と必要書類を労働局へ提出します。この期限も厳守です。
5. 令和7年・令和8年の主な変更点
【令和8年(2026年)4月からの変更】
・中高年齢者実習型訓練の新設
45歳以上の被保険者を対象とした新しい訓練メニューが加わりました。
詳しくは「中高年齢者実習型訓練」の記事をご覧ください。
・eラーニング・通信制の経費助成上限額の引き下げ
eラーニングおよび通信制による訓練の経費助成上限額が、中小企業で30万円から15万円に変更されました。
令和8年4月8日以降に提出された計画届に基づく訓練から適用されます。
【令和7年(2025年)4月からの変更】
・賃金助成額のアップ
中小企業の基本額が760円から800円に増額されました。
・有期実習型訓練の厳格化
支給申請日までに正規雇用労働者等への転換を行った場合にのみ助成対象となりました。
・審査タイミングの変更
要件の審査が支給申請時に一括して行われるようになりました。
計画届が受け付けられた=支給確定ではありませんので、要件の確認は慎重に行いましょう。
6. Q&A
Q. パートやアルバイトでも申請できますか?
はい、可能です。
人材育成支援コースは、正規・非正規を問わず、雇用保険の被保険者であれば申請対象になります。パートやアルバイトへの研修費用も助成対象となり、有期契約労働者等への訓練は助成率が70%(賃上げ等加算時は85%)と正規雇用者より高く設定されています。ただし、雇用保険の被保険者資格がない方(週所定労働時間が20時間未満の方など)は対象外です。
7. まとめ
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、会社が費用を負担して従業員に研修を受けさせると、その受講料や研修中の賃金の一部が返ってくる制度です。
正規・非正規を問わず使えることと、期間の限定がなく継続して活用できることが大きな特徴です。
4つのメニューはそれぞれ対象者や訓練形態が異なります。
・外部研修に誰でも参加させたいなら・・「人材育成訓練」
・若手を1年かけてじっくり育てたいなら・・「認定実習併用職業訓練」
・パートを正社員に登用したいなら・・「有期実習型訓練」
・50代のベテランに新しいスキルを身につけてもらいたいなら・・令和8年4月に新設された「中高年齢者実習型訓練」という形で使い分けます。
申請で最も重要なのは、訓練開始の1か月前までに計画届を提出することです。研修の日程が決まったら、まず計画届の提出期限を確認するところから始めましょう。
要件の確認や計画届の作成でお困りの場合は、都道府県労働局またはハローワーク、または社会保険労務士にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください
※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。助成金の支給要件は変更されることがあるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。
【参照資料】
厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内(令和8年度版)」
厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)支給要領(令和8年4月8日版)」
厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)改正のご案内(中高年齢者実習型訓練の新設)」
厚生労働省「人材開発支援助成金(コース共通)改正のご案内(令和8年4月8日)」
👉 厚生労働省:人材開発支援助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)