【人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)】とは?就業規則の多言語化など外国人従業員が安心して働ける職場環境へ!制度導入で最大80万円


外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行の知識が十分でない場合や、言語の違いから労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい傾向があります。

「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備に取り組む事業主に対して、1つの取り組みにつき20万円(上限80万円)を助成する制度です。

この記事では、外国人労働者就労環境整備助成コースの要件・助成額・申請の流れを具体的に解説します。

こんな企業におすすめ!

・外国人従業員が増えてきたため、雇用管理の仕組みを整備したい
・就業規則や労働条件通知書の外国語対応に取り組みたい
・社内の標識や安全衛生マニュアルが日本語のみで、外国人従業員の安全管理に不安がある

1. 外国人労働者就労環境整備助成コースとは?

「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」とは、事業主が外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備(就労環境整備措置)を導入・実施し、外国人労働者の職場定着を図る場合に助成する制度です。

例えば、就業規則を外国人従業員の母国語に翻訳して配布する、外国人従業員が職場の悩みを母国語で相談できる窓口を設ける、社内の安全衛生マニュアルを多言語化して掲示するといった取り組みが対象となります。

雇用管理制度・雇用環境整備助成コースが雇用形態を問わずすべての従業員を対象に職場の制度整備を支援するものであるのに対し、外国人労働者就労環境整備助成コースは外国人労働者特有の事情(言語の壁・日本の労働法制の不理解・帰国ニーズ等)に特化した取り組みを支援する点が特徴です。

就労環境整備措置は以下の5種類で構成されており、必須メニュー2つと選択メニュー1つ以上を組み合わせて実施することが必要です。

必須メニュー
・雇用労務責任者の選任
・就業規則等の多言語化

選択メニュー(①〜③のいずれか1つ以上)
① 苦情・相談体制の整備
② 一時帰国のための休暇制度の整備
③ 社内マニュアル・標識類等の多言語化

なお、本コースは事業主単位で申請するものであり、事業所単位での申請はできません。

2. いくらもらえる?

就労環境整備措置1つの導入につき20万円が支給されます。最大4つの措置を導入した場合に上限の80万円を受け取ることができます。

3. 活用事例

事例1:就業規則の多言語化と苦情・相談体制の整備を組み合わせて受給したケース

外国人従業員の離職が続いており、職場のルールや相談窓口が十分に伝わっていないことが一因と考え、以下の3つの措置を導入した。

・雇用労務責任者の選任(必須)/雇用労務責任者を選任し、定期面談を実施/20万円
・就業規則等の多言語化(必須)/就業規則をベトナム語に翻訳・配布/20万円
・苦情・相談体制の整備(選択)/母国語で相談できる窓口を就業規則に新設/20万円

合計助成額:60万円

措置導入後、従業員が職場のルールや相談窓口を正確に理解できるようになり、離職率が改善した。

事例2:社内マニュアルの多言語化で安全衛生の理解が向上したケース

製造現場に外国人従業員を受け入れているが、安全衛生マニュアルが日本語のみで内容が十分に伝わっているか不安があったため、以下の3つの措置を導入した。

・雇用労務責任者の選任(必須)/雇用労務責任者を選任し、定期面談を実施/20万円
・就業規則等の多言語化(必須)/就業規則をタガログ語に翻訳・配布/20万円
・社内マニュアル・標識類等の多言語化(選択)/危険箇所の標識と安全衛生マニュアルをタガログ語に翻訳して掲示・配布/20万円

合計助成額:60万円

措置導入後、作業中のヒヤリハットが減少し、外国人従業員から「何が危険かわかるようになった」という声があがった。

事例3:4つの措置すべてを導入して上限80万円を受給したケース

外国人従業員が10名を超え、雇用管理の整備が急務となっていた。以下の4つの措置をすべて導入し、助成金80万円を受給した。

・雇用労務責任者の選任(必須)/雇用労務責任者を選任し、定期面談を実施/20万円
・就業規則等の多言語化(必須)/就業規則をベトナム語・中国語に翻訳・配布/20万円
・苦情・相談体制の整備(選択)/母国語で相談できる窓口を就業規則に新設/20万円
・社内マニュアル・標識類等の多言語化(選択)/安全衛生マニュアルを多言語化して掲示/20万円

合計助成額:80万円

措置導入後、外国人従業員から「自分の権利や相談先がわかった」という声があがり、離職率が改善した。

事例4:計画書の提出前に就業規則の翻訳を発注してしまい対象外となったケース

外国人従業員向けに就業規則の翻訳を翻訳会社に依頼した後、助成金の存在を知って申請を試みたケース。

計画書の提出前にすでに翻訳業務を外部機関に発注・費用の支払いが発生していたため、当該費用は助成対象外と判明し申請できなかった。
取り組みを始める前に、必ず計画書の提出から着手しましょう。

4. 支給要件

事業主の要件

  1. 外国人雇用状況届出を適正に届け出ている事業主であること。
    外国人を雇用する事業主は、雇用保険の資格取得・喪失の際にハローワークへ外国人雇用状況の届出を行う義務があります。届出が適正になされていない場合は申請できません。
  2. 認定就労環境整備計画に基づき、計画期間内に必須メニューに加え、選択メニュー(①〜③のいずれか)を新たに導入し、外国人労働者に対して実施した事業主であること。
    必須メニュー
    イ. 雇用労務責任者の選任
    ロ. 就業規則等の多言語化
    選択メニュー(①〜③のいずれか1つ以上)
    ① 苦情・相談体制の整備
    ② 一時帰国のための休暇制度の整備
    ③ 社内マニュアル・標識類等の多言語化
  3. 過去に本コースの助成金を受給している場合、最後の支給決定日の翌日から起算して3年間が経過していること。
  4. 就労環境整備計画期間の初日の前日から起算して6か月前から計画期間末日までの間、対象事業所において雇用する雇用保険被保険者である外国人労働者を解雇等していないこと。
  5. 外国人労働者離職率が15%以下であること(ただし、離職率算定期間の初日における外国人労働者数が2人以上10人以下の場合で、離職者数が1人の場合を除く)。かつ、離職率算定期間の末日時点で継続して雇用されている外国人労働者が1人以上いること。
    ただし、外国人労働者雇用労務責任者講習を受講し、かつ就労環境整備措置の実施日の前日から起算して6か月前までの期間に外国人労働者を解雇等していない場合は、離職率要件の確認を行いません。

就労環境整備措置の要件

  • 雇用労務責任者の選任(必須)
    以下の1〜3をすべて満たすことが必要です。
  1. 雇用労務責任者を事業所(外国人労働者が就労していない事業所を除く)ごとに選任し、氏名を掲示等により外国人労働者に周知すること。雇用労務責任者は専任でなくても構わず、人事課長等が兼任することも認められます。
  2. 雇用労務責任者が計画期間において外国人労働者と1回以上の面談(テレビ電話による面談を含む)を行い、その結果を書面により作成すること。
  3. 外国人労働者が労働基準法その他の労働に関する法令違反を受けた場合に相談できる関係行政機関(労働基準監督署等)の案内を周知すること。
  • 就業規則等の多言語化(必須)
    就業規則・労働協約・労働条件通知書・雇用契約書のいずれかを多言語化し、計画期間中に外国人労働者に周知すること。
    多言語化とは、雇用する外国人労働者の母国語その他当該外国人労働者が使用する言語、または平易な日本語(いわゆるやさしい日本語)を用いて記載することをいいます。
    外国人労働者が複数の言語に対応できる場合は、当該労働者が最も理解しやすいいずれか1つの言語への翻訳で要件を満たします。
    なお、就業規則の作成・届出義務のない常時10人未満の事業所であっても、本助成金を受給するためには就業規則・労働協約・労働条件通知書・雇用契約書のいずれかの作成・多言語化が必要です。
  • 苦情・相談体制の整備(選択)
    就業規則または労働協約を変更することにより苦情・相談体制を新たに定め、外国人労働者の母国語またはその他の使用言語により苦情・相談に応じること。
    計画期間中に外国人労働者に苦情・相談体制の内容(利用方法等)を周知することが必要です。なお、実際に計画期間中に苦情・相談がなかった場合でも、体制を整備・周知していれば支給対象となり得ます。
    ただし、特定技能外国人を雇用する事業所または技能実習の監理団体に設けられた苦情・相談体制は対象となりません。特定技能外国人を雇用している場合や監理団体である場合は、以下の「一時帰国のための休暇制度の整備」または「社内マニュアル・標識類等の多言語化」を選択してください。
  • 一時帰国のための休暇制度の整備(選択)
    就業規則または労働協約を変更することにより、外国人労働者が一時帰国を希望した場合に必要な有給休暇(年次有給休暇とは別に付与されるもの)を取得できる制度を新たに定め、1年間に1回以上の連続した5日以上の有給休暇を取得させること。
    なお、この措置の実施日は、外国人労働者が当該制度に基づく連続した5日以上の有給休暇を実際に取得した最後の日です。計画期間中に取得者が1人もいなかった場合は、当該措置への助成は受けられません。ただし、他の措置の実施が完了していれば、完了した措置を対象とした額に限り支給されます。
  • 社内マニュアル・標識類等の多言語化(選択)
    安全衛生・ハラスメント・福利厚生等に関するマニュアル・標識類その他の文書(動画を含む)等を新たに多言語化し、計画期間中に外国人労働者に周知すること。
    就業規則等(就業規則・労働協約・労働条件通知書・雇用契約書)は対象外です。なお、頻繁に使用するマニュアルのみの翻訳でも支給対象となり得ます。

対象となる外国人労働者

  • 以下の3つをすべて満たす者が対象となります。
  1. 外国人雇用状況届出の対象となる者であること
  2. 事業主に直接雇用される者であって、当該事業主と労働契約を締結していること
  3. 雇用保険の被保険者(短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者を除く)であること

特別永住者および在留資格「外交」・「公用」を有する者は対象外です。在留資格の種類を問わず上記3つの要件を満たせば対象となります。

5. 申請の流れ

STEP1. 就労環境整備計画の作成・提出

導入する就労環境整備措置の内容と計画期間(3か月以上1年以内)を記載した「就労環境整備計画書(様式第a-1号)」と必要書類を作成し、計画開始日の6か月前から1か月前までの間に(つまり早すぎてもだめ)、本社所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークに提出します。

提出方法は窓口への持参・郵送・電子申請のいずれかで行えます。郵送の場合は期限までに到達している必要があります。

STEP2. 計画の認定

提出した計画書の内容が適切と認められた場合、都道府県労働局から認定が行われます。計画書提出前に就労環境整備措置に係る業務を外部機関に発注したり、費用の一部でも支払いを行ってしまうと対象外となるため注意が必要です。

STEP3. 就労環境整備措置の導入・実施

認定を受けた計画に基づき、計画期間内に就労環境整備措置を導入し、外国人労働者に対して実施します。

STEP4. 支給申請

外国人労働者離職率算定期間(就労環境整備措置の実施日の翌日から6か月間)終了後2か月以内に、支給申請書と必要書類を都道府県労働局またはハローワークに提出します。

ただし、外国人労働者雇用労務責任者講習を受講し、かつ就労環境整備措置の実施日の前日から起算して6か月前までに外国人労働者を解雇等していない場合は、就労環境整備措置の実施日の翌日から2か月以内に提出することができます。

主な提出書類は以下の通りです。
・支給申請書(様式第a-6号)
・導入した就労環境整備措置に応じた概要票(様式第a-6号別紙1または別紙2)
・雇用労務責任者による面談結果一覧表(様式第a-6号別紙3)
・事業所における外国人労働者名簿(様式第a-1号別紙3)
・事業所確認票(様式a-1号)
・多言語化した就業規則等および多言語化前の就業規則等
・導入した就労環境整備措置を実施したことが確認できる書類
・外国人労働者雇用労務責任者講習受講証明書(写)(受講した場合)
・支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)

6. よくある質問

Q. 就業規則の翻訳はどの言語でも認められますか?

雇用する外国人労働者が理解できる言語であれば認められます。
対象となる外国人労働者が実際に理解できない言語に翻訳しても要件を満たしません。外国人労働者本人に確認のうえ、その方が最も理解しやすい言語に翻訳してください。なお、平易な日本語(やさしい日本語)への書き換えでも対象となります。

Q. 計画書の提出前にすでに就業規則の多言語化を行っている場合は申請できますか?

状況によっては申請できる場合があります。
例えば、既存の就業規則に変更点があり改めて翻訳を行う場合、または就業規則は多言語化済みだが労働条件通知書・雇用契約書の多言語化は行っていない場合など、新たに多言語化を行う取り組みがあれば申請できます。

Q. 一時帰国のための休暇制度を整備したが、外国人労働者が一時帰国しなかった場合はどうなりますか?

計画期間中に当該制度を利用して実際に5日以上の有給休暇を取得した外国人労働者が1人もいなかった場合、一時帰国のための休暇制度の整備に対しては支給されません。
ただし、その他の就労環境整備措置の導入・実施が完了していれば、完了した措置を対象とした額に限り支給されます。

Q. 一時帰国のための有給休暇を取得したが、帰国しなかった場合はどうなりますか?

支給申請の際には、外国人労働者が実際に帰国したことを証明する書類(航空券の半券の写し等)の提出が必要です。
有給休暇を取得したものの実際に帰国しなかった場合、帰国の証明書類を提出できないため、当該措置への助成を受けることは難しいと考えられます。具体的な状況については、管轄の都道府県労働局にご相談ください。

7. まとめ

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人従業員の就労環境を整備する取り組みに対して、1措置につき20万円(上限80万円)を助成する制度です。就業規則の多言語化、相談窓口の整備、社内マニュアルの翻訳など、言語の壁や法制度の理解不足から生じるトラブルを未然に防ぐための取り組みが幅広く対象となります。

雇用管理制度・雇用環境整備助成コースが全従業員を対象に職場の制度整備を支援するのに対し、外国人労働者就労環境整備助成コースは外国人労働者特有の事情に特化した環境整備を支援する制度です。外国人従業員を雇用している事業所であれば、両コースを組み合わせて活用することで、より包括的な職場環境の整備を図ることができます。

注意が必要なのは、計画書を提出して認定を受ける前に翻訳や整備業務を外部機関に発注・費用を支払ってしまうと対象外となる点です。また、外国人労働者雇用労務責任者講習を受講することで離職率要件の確認が免除される特例があります。まずは自社の外国人従業員の現状と、導入できる措置の種類を確認することから始めましょう。

要件の詳細や自社の状況への当てはめ方については、管轄の都道府県労働局またはハローワーク、もしくは社会保険労務士にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください

【参照資料】
厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」のご案内(令和8年度版)

👉 厚生労働省:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)

※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。
助成金の支給要件は頻繁に変更されるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。


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