【令和8年度最新/業務改善助成金】とは? 賃上げと設備投資で生産性アップ!機械やシステム導入費用の最大600万円


最低賃金が上がるたびに、パートやアルバイトの時給をどう対応するか頭を悩ませている経営者は多いと思います。
「賃上げはしなきゃいけない。でも、ちょうど厨房の設備も古くなってきたし、配送用の車も買い替えたかった……」

そんなタイミングが重なったとき、賃上げの負担を少しでも軽くしながら、設備投資の費用も一緒に手当てできる制度があります。それが「業務改善助成金」です。

賃金を上げることを条件に、生産性向上のための設備投資費用を国が助成してくれる制度で、助成額は最大600万円。
キャリアアップ助成金が非正規雇用から正社員への転換を支援するのに対し、業務改善助成金は”賃上げと設備投資をセットで支援する”点が特徴です。

こんな企業におすすめ!

・パートやアルバイトの時給を引き上げる予定があり、同じタイミングで機器や設備を入れ替えたい
・POSレジや在庫管理システムを導入して、少ない人数でも回せる体制を整えたい
・老朽化した調理機器・製造設備・搬送用機器を、より高性能なものに買い替えたい

1. 業務改善助成金とは?

業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。

例えば、飲食店でパート・アルバイトの時給を上げるタイミングで、調理効率を上げる厨房機器を導入した場合、その機器の購入費用の一部を国が負担してくれるイメージです。

“賃上げと設備投資を同時に支援する”点がこの制度の特徴です。

令和7年度からの主な変更点

  1. (重要)引き上げ対象労働者の要件が「雇用保険被保険者」に変更
    令和7年度まで、引き上げ対象となる労働者の要件は「事業場内で最も賃金の低い労働者」とされており、必ずしも雇用保険の加入者に限定されていませんでした。
    しかし、令和8年度からは対象者が「雇用保険被保険者」に変更されたため、週所定労働時間が20時間未満のパートやアルバイトは引き上げ対象労働者としてカウントされません。
  2. (重要)申請期間が複数の期から一本化へ
    令和7年度は申請期間が第1期(4月〜6月)・第2-1期・第2-2期と複数に分かれており、申請時期によって賃金引上げのタイミングの要件も異なっていました。
    しかし、令和8年度からは申請期間が原則「令和8年9月1日〜地域別最低賃金の発効日の前日まで」と一本化されます。申請できる期間が一本化されシンプルな構造になった一方で、申請できる期間がおよそ1か月と短くなるため、夏頃から設備投資の計画と賃上げの計画を並行して進めておくことがより重要になっています。
  3. 物価高騰等要件の利益率の算定期間が「最近3か月間のうち任意の1か月」から「最近6か月間平均」に変更
    令和7年度までは直近3か月のうち最も影響が大きい1か月を選んで申告できましたが、令和8年度からは直近6か月間の平均値で判断するよう変更されました。
  4. 自動車(特殊用途自動車を除く)が助成対象外に変更
    令和7年度までは一定の条件を満たす自動車も助成対象となる場合がありましたが、令和8年度からは特殊用途自動車(冷凍車・クレーン車など、特定の業務用途に特化した車両)を除き、自動車全般が助成対象外となりました。
    配送用トラックや営業車などの一般的な自動車の購入を設備投資として申請することはできません。

2. いくらもらえる?助成上限額と助成率

助成される金額は、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用に助成率をかけた金額と、助成上限額を比較して、いずれか低い方の金額です。

助成率

事業場内最低賃金が1,050円未満の事業場4/5(80%)
事業場内最低賃金が1,050円以上の事業場3/4(75%)

「事業場内最低賃金」とは、事業場の中で最も時間あたりの賃金が低い従業員の賃金のことです。
ただし、「事業場内最低賃金」の算定対象となるのは、雇入れ後6か月を経過した従業員(雇用保険被保険者)の賃金で、雇入れ直後の従業員の賃金は「事業場内最低賃金」にはカウントしません。これは、雇入れ直後の試用期間中や研修中の従業員は賃金が低く設定されていることが多く、そうした一時的な賃金水準を事業場の最低賃金として扱うことが実態に合わないためです。

なお、精皆勤手当・通勤手当・家族手当は算定から除外します。これらは、労働の内容や質に関係なく、個人の事情(通勤距離・扶養家族の有無・出勤日数)によって金額が変わる手当だからです。あくまで「純粋に労働そのものに対して支払われる賃金かどうか」が算定の基準になります。

助成上限額

賃金引き上げ額と引き上げる従業員の人数・事業場規模(30人未満か否か)によって、以下のとおり上限額が変わります。

コース(いくら引上げるか)引き上げる労働者数上限額(事業場規模30人未満)上限額(30人以上)
50円コース1人30万円40万円
2~3人40万円70万円
4~5人70万円70万円
6~7人90万円90万円
8人以上110万円110万円
10人以上※130万円130万円
70円コース1人40万円50万円
2~3人50万円100万円
4~5人130万円130万円
6~7人180万円180万円
8人以上230万円230万円
10人以上※300万円300万円
90円コース1人90万円100万円
2~3人150万円240万円
4~5人270万円270万円
6~7人360万円360万円
8人以上450万円450万円
10人以上※600万円600万円

※10人以上の上限額区分は、特例事業者が10人以上の従業員の賃金を引き上げる場合に対象になります。

事業場規模(30人未満か否か)によって上限額は違いますが、賃金を引上げる労働者数が「4~5人」以上はどのコースであっても上限額は同じです。

【図:助成金額の計算例】
事業場内最低賃金1,040円 / 90円コース / 8人引き上げの場合
設備投資費用600万円 × 助成率4/5 = 480万円
助成上限額450万円 < 480万円のため、上限額の450万円が支給

特例事業者について

以下のいずれかに該当する事業者は「特例事業者」となり、10人以上の従業員の賃金を引き上げる場合に上表の10人以上の上限額区分が適用されます。

  1. 賃金要件:事業場内最低賃金が1,050円未満である事業者
  2. 物価高騰等要件:原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前6か月間平均における利益率が前年度と比べ3%ポイント以上低下している事業者
    物価高騰等要件に該当する特例事業者は、通常は助成対象外となるパソコン・タブレット・スマートフォン等の端末と周辺機器の新規導入も助成対象となります。

申請の単位・年間助成上限額

申請は工場・事務所など、従業員がいる拠点(事業場)ごとに行います。
同一の事業主が複数の事業場を持つ場合は事業場ごとに別々に申請します。

1事業主あたりの年間助成上限額は合計600万円で、同一事業場での申請は年度内1回までとなります。

3. 活用事例

事例1:賃上げのタイミングで厨房機器を入れ替えた飲食店

パートスタッフの時給を引き上げるタイミングで、老朽化していた業務用食洗機と調理台を新しいものに買い替えたいと考えていた。
設備の買い替えは以前から検討していたが、費用の負担が重く先送りにしていた。

最低賃金の改定を機に賃上げの計画を立てる中で業務改善助成金を活用すれば設備投資費用の一部を国が負担してくれることを知り、申請を決めた。

【事業場の概要】
・従業員数:12人(うちパートスタッフ8人)
・引き上げ前の事業場内最低賃金:1,035円
・引き上げ後の事業場内最低賃金:1,105円(70円引き上げ)
・引き上げ対象:パートスタッフ8人全員

【設備投資の内容】
・業務用食洗機(1台):80万円
・調理台・作業台の入れ替え:40万円
・合計:120万円

【助成金額の計算】
・コース:70円コース
・引き上げ人数:8人以上
・助成上限額:230万円
・助成率:4/5(事業場内最低賃金1,035円 < 1,050円のため)
・設備投資費用120万円 × 4/5 = 96万円
・96万円 < 上限額230万円のため、96万円が支給

食洗機の導入により洗い場の作業時間が大幅に短縮され、少ない人数で回せる体制が整った。
賃上げによる人件費の増加分を業務効率化によって一定程度カバーでき、経営への負担を抑えながら従業員の処遇改善を実現した。

事例2:配送効率を上げるためにルート管理システムを導入した運送会社

手作業でルートを組んでいたため、ドライバーごとに配送時間にばらつきがあり、残業が発生しやすい状況が続いていた。この課題を解消するためにルート最適化システムの導入を検討していたが、費用面で踏み出せずにいた。

パート従業員の時給を引き上げる計画を立てるタイミングで業務改善助成金を活用すれば設備投資費用の一部を国が負担してくれることを知り、申請を決めた。

【事業場の概要】
・従業員数:8人(うちパートドライバー3人)
・引き上げ前の事業場内最低賃金:1,040円
・引き上げ後の事業場内最低賃金:1,130円(90円引き上げ)
・引き上げ対象:パートドライバー3人

【設備投資の内容】
・ルート最適化システムの導入(初期費用):150万円
・タブレット端末3台:15万円
・合計:165万円

※タブレット端末は通常助成対象外だが、物価高騰等要件の特例事業者に該当したため対象となった。

【助成金額の計算】
・コース:90円コース
・引き上げ人数:2~3人
・助成上限額:150万円(事業場規模30人未満)
・助成率:4/5(事業場内最低賃金1,040円 < 1,050円のため)
・設備投資費用165万円 × 4/5 = 132万円
・132万円 < 上限額150万円のため、132万円が支給

システム導入後、配送ルートの組み立てにかかる時間が大幅に削減され、ドライバーの残業も減少した。賃上げと同時に業務効率を改善できたことで、採用時の条件提示にも自信を持って臨めるようになった。

事例3:受注管理をシステム化して事務効率を上げた製造業

データの転記ミスや在庫の確認に時間がかかる問題が長年続いており、手書きや表計算ソフトで管理していた受注・在庫管理のシステム化を検討していたが、費用面で踏み出せずにいた。

パート事務員の時給を引き上げる計画を立てるタイミングで業務改善助成金を活用すれば設備投資費用の一部を国が負担してくれることを知り、クラウドシステムへの移行を決めた。

【事業場の概要】
・従業員数:20人(うちパート事務員2人)
・引き上げ前の事業場内最低賃金:1,060円
・引き上げ後の事業場内最低賃金:1,110円(50円引き上げ)
・引き上げ対象:パート事務員2人

【設備投資の内容】
・受注・在庫管理クラウドシステム導入費:200万円
・初期設定・導入支援費用:50万円
・合計:250万円

【助成金額の計算】
・コース:50円コース
・引き上げ人数:2~3人
・助成上限額:70万円
・助成率:3/4(事業場内最低賃金1,060円 ≧ 1,050円のため)
・設備投資費用250万円 × 3/4 = 187万円
・187万円 > 上限額70万円のため、上限額の70万円が支給

引き上げ額が50円にとどまったため助成上限額は低く、設備投資費用全体に対する助成割合は大きくなかった。一方で、システム化による業務効率の向上効果は大きく、事務担当者の作業時間が半減した。引き上げ額を大きくするほど上限額も上がるため、設備投資の規模に合わせてコースを選ぶことが重要だと分かった事例でもある。

不支給事例1:交付決定前に設備を発注してしまったケース

パートスタッフの時給を引き上げるタイミングで、老朽化した製造設備の入れ替えを計画していた。

業務改善助成金の存在を知り申請を決めたが、「先に契約しておかないと納期が間に合わない」と判断し、交付決定の通知が届く前に設備メーカーと契約を済ませてしまった。

業務改善助成金では、交付決定の通知を受けた後に設備の契約・納品を行うことが必須の要件となっている。
交付決定前に契約した設備は助成対象外となるため、申請した設備投資費用の全額が不支給となった。

「申請中だから大丈夫だろう」という判断が不支給につながったケースです。交付決定の通知が届くまでは契約・納品・支払いのいずれも行ってはなりません。

不支給事例2:地域別最低賃金の改定後に賃上げしたケース

10月に地域別最低賃金が改定されたタイミングで、「法律で決まったから」とパートスタッフの時給を引き上げた小売店が、その後に業務改善助成金の存在を知り申請しようとした。
設備投資の計画もあったため、ぜひ活用したいと考えていた。

しかし、改定後に行った賃上げは制度上の「賃金引き上げ」とはみなされないため、申請することができなかった。

毎年10月の最低賃金改定を賃上げのきっかけにすること自体は自然な流れですが、業務改善助成金を活用するには改定前に動く必要があります。翌年度の申請に向けて、夏頃から賃上げの計画を立てておくことが重要です。

4. 支給要件

  1. 中小企業・小規模事業者であること
    大企業が発行株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上を所有している企業(みなし大企業)は対象外です。医療法人・社会福祉法人・NPO法人など資本金のない法人は、常時使用する労働者数で判断します。
  2. 申請時点の事業場内最低賃金が、令和8年度の地域別最低賃金未満であること
    申請時点で、事業場の中で最も時間給が低い従業員の賃金が、令和8年度に改定される新しい地域別最低賃金の額をまだ下回っている状態であることが必要です。
    例えば、大阪府の令和8年度の地域別最低賃金が仮に1,240円に改定される場合、申請時点の事業場内最低賃金が1,177円(令和7年度の大阪府の最低賃金)〜1,240円未満であれば申請できます。一方、すでに1,240円以上であれば、残念ながら申請対象外となります。

    また、事業場内最低賃金の算定対象となるのは、雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者です。これは、雇入れ直後の試用期間中や研修中の従業員は賃金が低く設定されていることが多く、そうした一時的な賃金水準を事業場の最低賃金として扱うことが実態に合わないためです。精皆勤手当・通勤手当・家族手当は算定から除外します。
    そのため、雇入れ後6か月未満の従業員がその事業場で最も賃金が低い場合でも、事業場内最低賃金の算定からは除外されます。例えば、6か月以上勤務しているパート従業員の最低時給が1,200円の事業場に、入社2か月で時給1,100円のアルバイトがいる場合、事業場内最低賃金は1,200円として算定します。ただし、賃金引き上げの際には時給1,100円のアルバイトも新たな事業場内最低賃金まで引き上げる必要があります。
  3. 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
    申請書の提出日の前日から1年前の日以降に、労働基準監督署から是正勧告を受けている場合は申請できません。(業務改善助成金Q&A 問48より)

他の助成金との調整

業務改善助成金は他の助成金と併用できる場合がありますが、業務改善助成金で賃上げの対象とした従業員について、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の支給対象労働者としてカウントすることはできません。(業務改善助成金Q&A 問46より)

助成対象経費

助成対象となるのは「生産性の向上、労働能率の増進に資する」と認められる設備投資等です。
助成対象経費の下限は税抜10万円です。
ただし、1つの設備が税抜10万円未満であっても、他の生産性向上に資する設備投資等と合わせた合計金額が税抜10万円以上となる場合は、助成対象となります。例えば、税抜6万円のPOSレジと税抜8万円の自動釣銭機やセルフレジを同時に導入する場合、合計14万円として申請できるということです。

対象となる主な経費

経費区分 |内容の例
・機器・設備の導入|POSレジシステム、リフト付き特殊車両、業務用厨房機器など
・経営コンサルティング|中小企業診断士・社会保険労務士・ファイナンシャル・プランニング技能士(1級または2級)等の国家資格者による業務フロー見直しなど
・システム開発・委託|顧客管理・受発注システムのシステム化など
・リース・保守契約|助成実施年度に支払われる費用(複数年分を一括で支払った場合は最大3年分まで)

対象外となる主な経費

・広告宣伝費・販売促進費(パンフレット作成、ランディングページ作成、展示会出展など)
・エアコン設置・内装工事・机・椅子の増設など快適化を目的とした職場環境の改善
・消耗品費・通信費・光熱費など通常の事業活動に伴う経費
・パソコン・タブレット・スマートフォン等の端末(物価高騰等要件の特例事業者を除く)
・自動車(特殊用途自動車を除く)
・太陽光パネルなど再生エネルギーに係る設備

なお、老朽化した設備の更新については、既存のものより高い能力を持つ上位機種への入れ替えであれば助成対象となります。
同等性能への単純な買い替えは対象外です。

5. 申請の流れ

申請期間・賃金引上げ期間はいずれも、令和8年9月1日から申請事業場に適用される地域別最低賃金の発効日の前日までです。
毎年10月頃に地域別最低賃金が改定されるため、実質的に9月中に申請と賃金引上げの両方を完了させる必要があります。申請前の準備を含めると、夏頃から動き出すのが理想です。

STEP1. 賃金引上げ計画の策定

引き上げ後の事業場内最低賃金をいくらにするかを決め、コース(50円・70円・90円)を選択します。
引き上げ対象となる雇用保険被保険者が何人いるかを確認し、助成上限額を把握しておきましょう。

STEP2. 就業規則等の整備

引き上げ後の事業場内最低賃金額を就業規則等に定める必要があります。
就業規則の作成・労働基準監督署への届出は申請前に行うことができますが、就業規則の適用日(賃金引上げの効力発生日)は必ず交付申請日以降に設定する必要があります。事前に書面を準備しておき、交付申請後に速やかに適用できる状態にしておきましょう。
なお、10人未満の事業場で就業規則の作成義務がない場合は、賃金引き上げ後の額と適用日を記載した書面を作成し、従業員代表の意見書を添付のうえ従業員に周知する必要があります。

STEP3. 設備・機器の選定と見積取得

導入する設備・機器を選定し、見積書を取得します。
契約予定額が税抜10万円以上の場合は、原則として2者以上の相見積もりが必要です。最低価格を提示した者と契約する必要があります。

重要:見積書の取得や仕様の打ち合わせは交付決定前に行うことができますが、発注・契約・納品は必ず交付決定後に行う必要があります。

STEP4. 交付申請書の提出

賃金引上げ計画と設備投資等の計画をまとめた交付申請書・事業実施計画書等を、事業場の所在地を管轄する都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)に提出します。物価高騰等要件の特例事業者に該当する場合は、利益率に関する申出書も併せて提出します。

STEP5. 賃金の引上げ

交付申請後、地域別最低賃金の発効日の前日までに賃金の引上げを実施します。繰り返しになりますが、就業規則等の適用日(賃金引上げの効力発生日)は、交付申請日以降に設定する必要があります。
なお、賃金の引上げは複数回に分けて行うことはできません。申請したコースの引き上げ額を一括で実施します。

STEP6. 交付決定

労働局による審査を経て、交付決定の通知が届きます。
設備の発注・契約・納品は、この通知が届いてから行う必要があります。

STEP7. 設備投資の実施

交付決定後、計画に沿って設備の発注・導入・代金の支払いを進めます。
これらすべてを事業完了期限(原則として交付決定の属する年度の1月31日)までに完了させます。
なお、事業完了日は①導入機器等の納品日、②助成対象経費の支払完了日、③賃金引上げ日(就業規則等の改正日)のいずれか遅い日となります。一般的には、③賃上げ→②機器の支払い→①納品の順番となることが多いため、機器の納品をもってして事業完了となります。

STEP8. 事業実績報告書・助成金支給申請書の提出

事業完了後、労働局に事業実績報告書と助成金支給申請書を提出します。
引き上げた賃金は、実績報告書を提出する時点で少なくとも1回分が実際に支払い済みである必要があります。事業完了のタイミングと賃金の支払い日の設定によっては提出時点で未払いとなる可能性もあるため、給与体系に応じて提出のタイミングを調整してください。

STEP9. 助成金の受領

労働局による報告内容の審査を経て、交付額が確定します。
審査が完了し適正と認められれば、助成金が振り込まれます。なお、報告書等が到達した日から原則として20日以内に交付額の確定通知が行われます。

6. よくある質問

【対象・要件について】

Q. 過去に業務改善助成金を受給したことがある事業場でも申請できますか?

はい、申請できます。
過去に受給した事業場も支給対象となります。ただし、同一事業場での申請は年度内1回までです。また、過去の助成事業で定めた事業場内最低賃金額を、その後の賃金が下回っている場合は申請できません。

Q. 交付決定後に、賃上げ対象の従業員が退職してしまった場合はどうなりますか?

退職の時期によって対応が異なります。
賃金引き上げ前に退職した場合、他に引き上げ対象となる従業員(雇入れ後6か月以上勤務している労働者)がいれば、事業計画変更申請書を提出することで対応できます。対象者が他にいない場合は、申請の取り下げまたは事業廃止承認申請書の提出が必要です。賃金引き上げ後に退職した場合は、引き上げ後に1日でも勤務し賃金が支払われていれば、退職までの日数にかかわらず助成対象となります。(業務改善助成金Q&A 問14より)

Q. 賃金引き上げ後に、対象の従業員の所定労働時間を短縮した場合はどうなりますか?

従業員本人の希望による短縮であれば、不交付事由には該当しません。
会社都合で所定労働時間を短縮し、月当たりの賃金額が下がった場合は不交付事由に該当します。一方、従業員本人の希望による短時間勤務への変更であれば、賃金の引き下げには当たらないとされています。ただしその場合、本人の希望による旨を記載した書面(本人の署名または記名押印あり)を事業実績報告書に添付して提出する必要があります。(業務改善助成金Q&A 問41より)

【設備投資・経費について】

Q. 関連のない複数の設備投資をまとめて申請することはできますか?

はい、できます。
それぞれが生産性の向上・労働能率の増進に資すると認められれば、設備投資等の合計額をもって申請し、各コースの上限額を限度として助成を受けることができます。例えば、厨房機器の導入とPOSレジシステムの導入を同時に行う場合、合算した金額で申請することが可能です。(業務改善助成金Q&A 問27より)

Q. 老朽化した設備の買い替えは助成対象になりますか?

既存の設備より高い能力を持つ上位機種への入れ替えであれば、助成対象となります。
老朽化や破損を機に、より高性能な設備に入れ替えて生産性の向上・労働能率の増進に資すると認められれば申請できます。ただし、同等性能の設備への単純な買い替えは「生産性の向上が認められない」として対象外となります。申請の際は、既存設備より能力が高い点について、具体的な数値や客観的な根拠資料を事業実施計画書に記載する必要があります。(業務改善助成金Q&A 問29より)

【他の助成金との関係について】

Q. キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)と併用することはできますか?

併用自体は可能ですが、注意が必要です。
業務改善助成金で賃上げの対象とした従業員については、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の支給対象労働者としてカウントすることはできません。ただし、業務改善助成金の対象としなかった従業員については重複しないため、キャリアアップ助成金の対象としてカウントすることができます。複数の助成金を組み合わせて活用する場合は、対象者の整理を事前に行うことが重要です。(業務改善助成金Q&A 問46より)

7. まとめ

業務改善助成金は、賃上げと設備投資を同時に進めたい中小企業にとって、両方の負担を一度に手当てできる制度です。毎年10月頃の地域別最低賃金の改定を機に時給を引き上げるなら、そのタイミングに合わせてPOSレジや調理機器、受注管理システムといった設備投資を計画することで、費用の一部を国が助成してくれます。

申請できるのは9月1日から地域別最低賃金の発効日の前日まで、期間はおよそ1か月と短いですが、設備投資の計画さえ事前に固めておけば、申請書の作成自体はそれほど複雑ではありません。助成上限額は引き上げ額と引き上げ人数によって大きく変わるため、どのコースを選ぶかを早めに検討しておくことが重要です。例えば、90円コースで8人以上の賃金を引き上げれば、最大450万円の助成が受けられます。

注意したいのは、交付決定の通知が届く前に設備を発注・契約してしまうと助成対象外になる点です。「申請中だから大丈夫」という判断が不支給につながるケースが実際にあります。また、毎年10月の最低賃金改定後に賃上げを行っても対象外となるため、夏頃から計画を立てて9月中に動き出すことが鍵です。

まずは自社の事業場内最低賃金を確認し、令和8年度の地域別最低賃金の改定額と比較したうえで、どのコースで申請するかを検討することから始めましょう。要件の詳細や自社の状況への当てはめ方については、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)または社会保険労務士にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください

【参照資料】
厚生労働省『令和8年度業務改善助成金のご案内』
中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)交付要綱(令和8年4月22日)
中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)交付要領(令和8年4月22日)
業務改善助成金Q&A(令和8年4月22日作成)

👉 厚生労働省:業務改善助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)

※本記事は2026年5月時点の法令・情報に基づき作成しています。助成金の支給要件は変更されることがあるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の交付要綱・要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。


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