【令和8年度最新/業務改善助成金】何が買える?何がダメ?対象経費と対象外経費を徹底解説!


「古くなったレジを新しいPOSレジに替えたい。せっかく助成金を使うなら、事務所のエアコンも一緒に新しくできないだろうか」

結論からお伝えすると、POSレジは業務改善助成金の対象になり得ますが、エアコンは対象になりません。
POSレジはレジ締めや会計作業にかかる時間を直接短縮する”生産性向上に資する設備”と判断されるのに対し、エアコンは職場を快適にするための”環境改善”とみなされ、対象外とされているためです。
同じ「職場の設備を新しくする」買い物でも、業務改善助成金では”生産性向上に資するかどうか”で対象・対象外がはっきり分かれます。

業務改善助成金は、事業場内最低賃金(その職場でいちばん低い時給)の引上げとセットで設備投資を行ったときに、費用の一部が助成される制度です。キャリアアップ助成金が正社員への転換など”人への取り組み”に対して支給されるのに対し、業務改善助成金は”何を買うか”が申請の成否を左右します。

この記事では、令和8年度の交付要綱・交付要領・Q&Aに基づいて、対象となる経費とならない経費を、見積もりを取る前にチェックできる形で整理しました。

こんな企業におすすめ!

・POSレジや券売機、食器洗浄機など、導入したい設備が対象になるか申請前に確認したい

・エアコンやパソコンなど、身近な設備が対象になるのか知りたい

・業者から見積もりを取る段階で、対象外の経費が混ざっていないか確認したい

・ホームページのリニューアルやリース契約、コンサルティング費用が対象になるか迷っている

・10月の最低賃金の引上げを前に、どうせ時給を上げるなら設備投資に助成金を活用したい

1. 対象経費の大原則「生産性向上・労働能率の増進に資する」とは?

業務改善助成金では、対象となる設備投資等について、”生産性向上、労働能率の増進に資する設備投資等”と定めています
つまり、単に古い設備を新しくするだけでなく、業務のムダを減らしたり、従業員の作業効率を上げたりする効果が求められるということです。

この「生産性向上」には、作業時間の短縮だけでなく、事業場の売上の増加や収益改善も含まれます(業務改善助成金Q&A 問23より)。
POSレジの導入でレジ締め時間が短くなることも、券売機の導入で注文ミスが減り客席の回転率が上がることも、どちらも生産性向上に当たります。

一方で、生産性の向上や労働能率の増進に資する設備投資等であっても、助成対象外となるものがあります(業務改善助成金Q&A 問23より)。
たとえば同じ「職場を新しくする」買い物でも、POSレジは対象になり得るのに対し、エアコンは対象外です。この違いは、設備そのものの新しさや価格ではなく、”特定の作業や工程を直接的に短縮・削減できるかどうか”で判断されている点にあります。

2. 対象となる9つの経費区分

業務改善助成金の対象経費は、以下の9つの区分に分類されています(業務改善助成金交付要領 別紙3より)。

  1. 謝金
    外部講師による従業員向けの研修や、導入機器の操作研修などに対する謝礼です。
    例えば、新しいレジシステムを導入した際に、外部の講師を招いて従業員向けの操作研修を行った場合の謝礼などが該当します。1回当たりの上限は10万円までとし、回数は5回までとされています。
  2. 旅費
    専門家を招く際の旅費です。
    例えば、経営コンサルタントに事業所まで来てもらう際の交通費などが該当します。
    公共交通機関を用いた、最も経済的かつ合理的な経路による実費が対象で、グリーン車やビジネスクラスなどの割増運賃は対象外です(外国旅費、日当、宿泊費も対象外です)
  3. 借損料※
    器具や機械の借料・損料、物品の借料・損料などです(会場借料は対象外です)
    例えば、新しい複合機をリース契約で導入する場合のリース料や、工事現場で使う重機を一定期間レンタルする場合の借上げ料などが該当します。ただし対象となるのは助成金を受ける年度に支払う分に限られ、複数年分をまとめて支払った場合でも、その年度を含めて3年分までが上限です。
    ※「借料」・・器具や機械を借りる際の賃借料、「損料」・・使用に伴う消耗分も含めた使用料
  4. 印刷製本費
    機械装置等の導入に伴う研修資料やマニュアルの作成費用です。
    例えば、新しく導入したPOSレジの操作マニュアルを印刷して従業員に配布する費用などが該当します。
  5. 原材料費
    資材購入の費用です。原則として、設備投資等を自社で施工・製造する場合は対象外ですが、その施工・製造にかかる原材料費のみを事業費とする場合は対象となります。
    例えば、店舗のカウンターを自社で製作する際に使う木材や金具の購入費などが該当します。
  6. 機械装置等購入費
    機器・設備類の購入、製作、改良の費用です。
    例えば、清算業務を自動化するPOSレジシステム、送迎業務を1人で行えるようにするリフト付き特殊車両、在庫管理を効率化するハンディターミナルなどが該当します。
    なお、この区分にはパソコン(タブレット端末やスマートフォン、周辺機器を含む)と、特種用途自動車以外の自動車は含まれません。パソコンが対象となる例外的なケースについては別記事で詳しく解説します。
  7. 造作費
    機械装置等の据付にかかる費用です(つまり、購入した機械そのものの費用ではなく、それを設置するための工事費用が対象ということです)。助成対象となる「機械装置等購入費」の機器・設備類に必要な設置費用に限られます。
    例えば、新しく購入した厨房機器を設置するための配管工事や電気工事の費用などが該当します。
  8. 経営コンサルティング経費
    外部の専門家やコンサルティング会社による経営コンサルティングの費用です。中小企業診断士、社会保険労務士、ファイナンシャル・プランニング技能士(1級または2級)など、経営コンサルティングに資する国家資格を持ち、常態としてコンサルティングを業とする者が実施するもの、または金融機関が行う経営相談に限られます。人員削減や労働条件の引下げを内容とするものは対象外です。
    例えば、中小企業診断士に依頼し、来店客の回転率を上げるための業務フローの見直しを行ってもらう場合の費用などが該当します。
  9. 委託費
    調査会社やシステム開発会社などへの委託費用です。就業規則の作成・改正や賃金制度の整備にかかる委託費は対象外です。
    例えば、外部のシステム開発会社に依頼して、顧客情報を一元管理できるシステムを構築してもらう場合の費用などが該当します。

各区分の具体例を一覧にまとめると、以下のとおりです。

経費区分具体例
謝金導入機器の操作研修の外部講師への謝礼、従業員向け研修の外部講師への謝礼
旅費経営コンサルタントや研修講師を事業所に招く際の交通費
借損料業務用機械のリース料、機器のレンタル料、ソフトウェアのライセンス料、導入機器の保守契約料
印刷製本費導入機器の操作マニュアルの印刷費、研修資料の作成費
原材料費自社で設備を施工・製作する際の木材・金具・配管資材などの購入費
機械装置等購入費POSレジシステム、券売機、QRコードオーダーシステム、自動食器洗浄機、自動炊飯器、リフト付き特殊車両(8ナンバー車)、電動式高さ調節介護ベッド、ベッドセンサー、乗用草刈り機、除雪機、自動充填・包装機、パネルソー、業務用の予約・顧客管理システム
造作費導入した厨房機器の配管工事費・電気工事費、機械装置の据付工事費
経営コンサルティング経費国家資格者による業務フロー見直しのコンサルティング費用、金融機関が行う経営相談の費用、経営革新等支援機関によるコンサルティング費用
委託費顧客管理システムの開発委託費、受注機能を持つホームページの作成・改修費

3. 対象外となる経費【カテゴリ別一覧】

生産性向上に役立ちそうに見える経費でも、以下に該当する場合は助成対象外となります(業務改善助成金交付要領 別紙3(注7)、業務改善助成金Q&A 問24より)。見積もりを取る前に、導入したい設備がこのリストに含まれていないか確認してください。

  1. 単なる経費削減を目的とした経費
    支出を減らすことが目的の投資は、生産性向上とは区別され、対象外です。
    【例】LED電球への交換、通信費削減のためのプラン変更、資料作成の外注など
  2. 快適化を目的とした職場環境の改善経費
    職場の不快感を減らしたり、動線を確保したりするための経費は対象外です。従業員にとって働きやすくなる投資であっても、作業そのものの時間短縮に直接つながらないためです。
    【例】エアコンの設置、動線確保のためのレイアウト変更、執務室の拡大、内装工事などの改築費用、机・椅子の増設、空調服など
  3. 通常の事業活動に伴う経費
    設備投資ではなく、日々の事業運営に必要な支出は対象外です。
    【例】事務所の借料、光熱費、従業員の賃金、交際費、消耗品費、通信費、掃除機などの清掃用品、汎用事務機器の購入費など
  4. 広告宣伝費・販売促進費
    売上を増やすための投資であっても、宣伝や販売促進にあたるものは対象外です。
    【例】パンフレット・動画・写真の作成や媒体への掲載、デジタルサイネージによる掲載、展示会への出展、セミナーの開催、市場調査、営業代行の利用、ランディングページの作成、マーケティングツールの活用など
  5. 建築物の構築に関する経費
    建物そのものを建てたり、増やしたりする費用は対象外です。
    【例】工場の建屋、構築物、簡易建物(ビニールハウス、コンテナ、ドームハウス、室内の作業スペースなど)の取得費用や、これらを作り上げるための組み立て用部材の取得費用など
  6. 再生エネルギーに係る費用
    【例】太陽光発電を行うためのソーラーパネルなど、再生エネルギーの発電を行うための発電設備や、その設備と一体不可分の附属設備
  7. 移動に要する費用
    【例】船舶や航空機の購入費・修理費・車検費用など。特種用途自動車を除く自動車の購入費も対象外であり、自動車のリース、ローン契約、保守契約なども対象になりません。
  8. 娯楽性・遊行性が高い設備
    事業の生産性向上や業務効率化に直接資すると認められない設備は対象外です。
    【例】全自動麻雀機、カラオケ機器、ゲーム機など

このほか、設備の内容にかかわらず、以下に該当する経費も対象外となります。

  • 法令等で義務づけられたものの整備に係る経費、および事業を実施する上で必須となる資格の取得に係る経費
  • 交付決定前に発生した費用、補助事業実施期間外に発生した費用(いかなる理由でも事前着手は認められません)
  • 日本国外で実施する事業
  • 申請事業場の生産性向上、労働能率の増進が認められないと所轄労働局長が判断したもの
  • 経費の算出が適正でないと所轄労働局長が判断したもの
  • そのほか、社会通念上助成が適当でないと所轄労働局長が判断したもの

なお、カテゴリの中には判断に迷うものもあります。同じ「ホームページの作成」でも、会社案内が目的なら広告宣伝費として対象外ですが、受注機能を付けるなら対象になり得ます。こうした線引きが分かれるケースは、次の章で個別に解説します。

4. 判断に迷いやすい7つのケース

対象・対象外の大枠は前の章のとおりですが、実際の申請では「これはどちらに当たるのか」と判断に迷うケースがあります。ここでは、問い合わせの多い7つのケースを取り上げます。

ケース1|ホームページの作成・改修

対象になる場合と、対象外になる場合があります。
ホームページ上で受発注と決済の両方ができるもの、または顧客からの発注をホームページ上で受ける機能を付け加える作成・改修は、対象となります(業務改善助成金Q&A 問35より)。

一方で、会社案内や商品紹介など、通常の事業活動に伴う経費や広告宣伝費・販売促進費に当たる内容の場合は、対象外です。同じ「ホームページを作る」でも、”受注の仕組みを作るか””宣伝のために作るか”で結論が変わります。

ケース2|リース料金・保守料金

対象になります。
ただし、対象となるのは助成金を受ける年度に支払う分に限られます。複数年分をまとめてその年度に支払った場合は、その年度を含めて3年分までが対象です(業務改善助成金Q&A 問37より)。

例えば、5年契約のリースで全額を初年度にまとめて支払った場合でも、助成の対象になるのはそのうち3年分までで、残り2年分は対象になりません。

なお、自動車については、そのリース料・ローン・保守契約はいずれも対象外です(特殊用途自動車を除く自動車そのものが対象外であるためです)。

ケース3|経営コンサルティング

対象になります。
ただし、実施者に条件があります。中小企業診断士、社会保険労務士、ファイナンシャル・プランニング技能士(1級または2級)などの国家資格を持ち、常態としてコンサルティングを業とする者、または金融機関が行う経営相談、経営革新等支援機関によるコンサルティングに限られます(業務改善助成金Q&A 問36より)。

特定のコンサルティングを依頼する契約だけでなく、新たに継続的な顧問契約を結ぶ場合も、その年度内の経費であれば対象です。
コンサルティングであっても2者以上の見積もりが必要です。2者以上から見積書を取ることが難しい場合は、その理由を記載した理由書を提出し、1者見積もりの妥当性を説明することになります。

ケース4|特殊用途自動車(8ナンバー車)

対象になります。
前の章のとおり、通常の自動車は対象外ですが、ナンバープレートの数字が8で始まる特殊用途自動車(福祉車両など)は対象です(業務改善助成金交付要領 別紙3(注3)より)。なお、車両の使用の本拠の位置が、申請事業場の住所である必要があります。

車両本体のほか、通常装備、検査登録手続の代行費、車庫証明手続の代行費、納車費用なども対象となります。
一方で、検査登録手続の預かり法定費用、車庫証明手続の預かり法定費用、自動車取得税、自動車重量税、自動車損害賠償責任保険、リサイクル料金、希望ナンバーの交付手数料、オーディオなどのオプション装備は対象外です(業務改善助成金Q&A 問33・問38より)。

ケース5|10万円未満の設備

対象になる場合があります。
助成対象経費の下限は10万円ですが、1つの価格が10万円未満の設備投資であっても、他の生産性向上に資する設備投資と合わせた合計金額が10万円以上になる場合は、対象となります(業務改善助成金Q&A 問25より)。

例えば、8万円のハンディターミナルと5万円のバーコードリーダーを合わせて導入すれば、合計13万円となり、下限の10万円を満たします。

なお、この下限10万円に消費税は含まれません。税込価格が10万円を超えていても、税抜価格が10万円未満であれば対象外です。

ケース6|互いに関連のない複数の設備

対象になります。
互いに関連のない複数の設備投資であっても、それぞれが生産性の向上、労働能率の増進に資するものであれば、合計の額をもって申請し、各コースの上限額を限度として助成を受けられます(業務改善助成金Q&A 問27より)。

例えば、厨房の食器洗浄機と店頭のPOSレジのように、用途の異なる設備をまとめて申請することも可能です。

ケース7|老朽化した設備の買い替え

対象になる場合があります。
老朽化したり破損したりしたことをきっかけに、これまでより高い能力を持つ上級機器を導入し、生産性の向上や労働能率の増進に資すると認められれば、対象となります(業務改善助成金Q&A 問29より)。

残念ながら、同じ性能の機器に買い替えるだけの場合は、生産性の向上が認められないため対象外です。
例えば、10年使った食器洗浄機を同じ処理能力の新品に交換するだけでは対象になりませんが、洗浄時間が半分になる高性能機に切り替えれば対象になり得ます。この場合は、既存の機器よりどの点が優れているかを、具体的な数値などで示して申請しましょう。

なお、パソコンの買い替えについては、原則として対象外となるなど特有の注意点があります。詳しくは別記事で解説します。

5. 活用事例

対象経費の考え方を、具体的な事例で確認します。

事例1|飲食店が券売機とPOSレジを導入し、対象経費を組み合わせた

ある飲食店では、昼のピーク時に注文の聞き取りと会計が重なり、ホールのパート従業員が客席とレジを何度も往復していた。注文の伝え間違いも起きており、店長は「人手を増やさずに回転を上げたい」と考えていた。

そこで、入口に券売機を、レジにPOSレジシステムを導入することにした。券売機で注文と会計を先に済ませる仕組みにしたことで、客席への往復と注文ミスがなくなり、POSレジによってレジ締めの集計作業も自動化された。

申請にあたっては、券売機とPOSレジという用途の異なる2つの設備を合わせて申請した。互いに関連のない複数の設備でも、それぞれが生産性向上に資するものであれば合算して申請できるためである。

  • 設備投資額:合計90万円
  • 事業場内最低賃金:1,050円以上(助成率4分の3)
  • 申請コース:70円コース(2人引上げ)
  • 助成額:67万5,000円(90万円×4分の3、上限額の範囲内)

券売機とPOSレジは、いずれも作業時間の短縮やミスの削減という効果がはっきりしているため、生産性向上に資する設備として認められやすい典型例です。用途が違う設備でも合算して申請できることを知っておくと、申請の幅が広がります。

事例2|介護事業所がリフト付き特殊車両で送迎を1人化した

ある介護事業所では、利用者の送迎に毎回2人の職員がついていた。車椅子の利用者を車に乗せる際に、抱え上げる作業が必要で、1人では安全に対応できなかったためである。送迎に人手を取られ、他の業務が後回しになることが続いていた。

そこで、車椅子に乗ったまま乗降できるリフト付きの特殊車両を導入した。リフトで乗降できるようになったことで、抱え上げる作業がなくなり、送迎を1人で安全に行えるようになった。空いた1人分の人手を、施設内の介護業務に回せるようになった。

導入した車両は、ナンバープレートの数字が8で始まる特殊用途自動車(福祉車両)にあたる。通常の自動車は対象外だが、特殊用途自動車は対象となるため、申請できた。

  • 設備投資額:300万円
  • 事業場内最低賃金:1,050円以上(助成率4分の3)
  • 申請コース:90円コース(4人引上げ)
  • 助成額:225万円(300万円×4分の3、上限額270万円の範囲内)

福祉車両は「移動に使う車だから対象外では」と思われがちですが、車椅子ごと乗降できる特殊用途自動車は、送迎作業そのものを省力化する設備として対象になります。通常の自動車との違いを押さえておくことが大切です。

事例3|小さな設備を組み合わせて下限をクリアした

ある小売店では、在庫の数え間違いや棚卸しの手間が課題だったが、大きな設備投資をする余裕はなかった。1つひとつは高額でないものの、作業を効率化できる機器をいくつか導入したいと考えていた。

そこで、ハンディターミナルとバーコードリーダー、在庫管理ソフトを組み合わせて導入した。バーコードで在庫を読み取れるようにしたことで、手作業で数えていた棚卸し作業の時間が大きく減った。

業務改善助成金の対象経費には10万円の下限があるが、1つの機器が10万円未満でも、複数の設備を合わせた合計が10万円以上になれば対象となる。この事業者は、単体では下限に届かない機器を組み合わせることで、申請の要件を満たした。

  • 設備投資額:合計15万円(税抜)
  • 事業場内最低賃金:1,050円以上(助成率4分の3)
  • 申請コース:50円コース(1人引上げ)
  • 助成額:11万2,500円(15万円×4分の3、上限額の範囲内)

大きな設備投資でなければ助成金は使えない、と考える必要はありません。小さな機器でも、合わせて10万円以上になり、それぞれが作業の効率化に役立つものであれば対象になります。なお、下限の10万円は税抜で判断される点に注意が必要です。

事例4|繁忙期だけ使う設備が対象になった

ある事業者は、冬場の除雪作業に毎回3時間近くかかり、従業員の体力的な負担が大きいことに悩んでいた。ただ、除雪機は冬の間しか使わないため、「一年中使う設備でないと対象にならないのでは」と申請をためらっていた。

実際には、使う時季が限られる設備であっても、生産性の向上や労働能率の増進に資すると認められれば対象となる。この事業者は除雪機を導入し、除雪作業の時間を大幅に短縮できた。

ただし、想定される使用頻度が極端に低い場合には、生産性向上に資するとは認められず、対象外となることがある。

  • 設備投資額:50万円
  • 事業場内最低賃金:1,050円以上(助成率4分の3)
  • 申請コース:50円コース(2人引上げ)
  • 助成額:37万5,000円(50万円×4分の3、上限額70万円の範囲内)

年間を通して使う設備でなければ対象にならない、というわけではありません。季節的にしか使わない設備でも、その作業の負担や時間をはっきり減らせるものであれば対象になり得ます。

事例5|受注機能を付けたホームページ改修が対象になった

ある飲食店では、電話での注文受付に人手を取られていた。ピーク時には電話対応でホールが手薄になり、来店客への対応が遅れることもあった。そこで、ホームページからネット注文を受け付けられるように改修することにした。

ホームページの作成・改修は、内容によって対象になるかどうかが分かれる。会社案内や商品紹介が目的の場合は広告宣伝費として対象外だが、この事業者のように、顧客からの注文をホームページ上で受ける機能を付け加える改修は対象となる。改修後は電話対応の時間が減り、ホールの人手を接客に回せるようになった。

  • 設備投資額:40万円
  • 事業場内最低賃金:1,050円以上(助成率4分の3)
  • 申請コース:50円コース(1人引上げ)
  • 助成額:30万円(40万円×4分の3、上限額の範囲内)

同じ「ホームページを作る・直す」でも、宣伝のためか、注文を受ける仕組みを作るためかで結論が変わります。改修を検討する際は、どの機能を付けるのかを整理し、受注や決済の仕組みが含まれているかを確認しておくとよいでしょう。

失敗事例1|見積もりに対象外の経費が混ざり、減額された

ある製造業の事業者は、作業効率を上げるために新しい加工機械を導入することにした。
同時に、夏場の作業環境が厳しいことから、工場にエアコンも設置しようと考えた。導入業者に依頼し、加工機械とエアコンをまとめた見積書を作成してもらい、その総額で申請しようとした。

ところが、エアコンは職場の快適化を目的とした環境改善経費に当たり、対象外だった。
加工機械そのものは生産性向上に資する設備として認められたものの、見積書に含まれていたエアコンの費用は助成の対象から外され、その分だけ助成額が減ることになった。

エアコンの設置は、従業員にとって働きやすい環境づくりとして意味のある投資です。ただ、業務改善助成金の対象になるかどうかは、”作業時間を直接短縮するか”という基準で判断されます。設備の必要性とは別の物差しで見られるため、見積書を作る段階で、対象になる経費と対象外の経費を分けて把握しておくことが大切です。

失敗事例2|同じ性能の機器への買い替えで対象外になった

ある事業者は、10年以上使っていた業務用の機械が古くなってきたため、新しい機械に買い替えることにした。
せっかくなら助成金を使いたいと考え、業務改善助成金の申請を検討した。ところが、買い替えようとしていたのは、これまで使っていた機械とほぼ同じ処理能力の後継機種だった。

同じ性能の機器に買い替えるだけでは、生産性の向上が認められず、対象とはならなかった。老朽化した設備の更新であっても、これまでより高い能力を持つ機器を導入し、生産性向上に資すると認められることが必要だったためである。

古くなった設備を新しくすること自体は、事業を続けるうえで避けられない出費です。ただ、業務改善助成金は”今より良くなること”に対して支給される制度です。買い替えを検討する際は、処理速度が上がる、複数の作業を1台でこなせるなど、これまでより優れた点がある機種を選び、その違いを具体的な数値で示せるようにしておくと、対象として認められやすくなります。

失敗事例3|交付決定を待たずに発注してしまった

ある事業者は、業務改善助成金を使って新しい機械を導入しようと申請を済ませた。
ところが、納期がかかる機械だったため、「早めに手配しておきたい」と考え、労働局からの交付決定通知が届く前に業者へ発注してしまった。

業務改善助成金では、設備の契約や発注、納品、支払いは、必ず交付決定を受けた後に行わなければならない。
交付決定の前に着手した費用は、いかなる理由であっても対象外となる。この事業者は、機械そのものは生産性向上に資するものだったにもかかわらず、発注のタイミングが早かったために、助成を受けられなくなった。

早く設備を入れたい気持ちは自然なものですが、業務改善助成金では、手続きの順番が非常に重要です。
申請をしても、交付決定の通知が届くまでは、契約も発注も支払いもしないよう注意してください。納期の長い設備を導入する場合は、そのことを見込んでスケジュールを立てることをおすすめします。

6. Q&A

Q1|中古品を購入する場合も対象になりますか?

はい、対象になります。
ただし、中古品は価格の適正性が明確でないため、3者以上の古物商の許可を得ている中古品流通業者から、型式や年式が記載された相見積もりを提出する必要があります(業務改善助成金交付要領より)。販売実績や事業実績の確認が取れない業者からの見積もりは、適切な見積もりとして認められないため注意してください。

Q2|見積もりは何者から取る必要がありますか?

原則として、2者以上から見積もりを取る必要があります(契約予定額が10万円未満の場合を除く)。
同じ条件で2者以上から見積もりを取り、交付決定を受けた後に、最も低い価格を提示した者と契約することになります(業務改善助成金交付要領より)。

なお、特許などにより販売元が限られていて相見積もりが取れない場合は、販売元が限られていることが分かる資料(特許登録証など)を提出することで対応できます。

Q3|設備を導入した後、すぐに助成金は振り込まれますか?

いいえ、設備の導入後すぐには振り込まれません。
業務改善助成金は、交付申請と交付決定を経て設備を導入し、その後に事業実績報告を行い、労働局の審査を経てから助成金が支払われる流れです。設備の代金は、いったん事業者が全額を立て替えて支払う必要があります。

このため、設備投資の資金は自社で用意しておく必要があります。事業場内最低賃金の引上げに取り組む事業者向けには、日本政策金融公庫による融資制度もあります。

Q4|消費税も助成金の対象に含まれますか?

原則として、消費税は助成の対象に含めません。ただし、免税事業者など消費税の仕入税額控除を受けられない事業者は、消費税を含めた税込の金額で申請できます(業務改善助成金交付要領 別紙1より)。

これは、業務改善助成金が実際に負担した費用の一部を助成する制度だからです。
課税事業者は、設備購入時に払った消費税を納税の場面で差し引いて取り戻せるため、消費税は最終的な負担になりません。
一方、免税事業者はその仕組みを使えず、払った消費税がそのまま負担として残ります。負担が残る分に限って、助成の対象に含められる、という考え方です。

なお、対象経費の下限である10万円の判定には、事業者を問わず消費税を含めません。例えば税込価格が10万4,500円(消費税率10%)でも、税抜価格が9万5,000円であれば、下限に届かず対象外です(業務改善助成金Q&A 問25より)。

7. まとめ

業務改善助成金で対象になるかどうかは、設備の新しさや価格ではなく、”その設備が作業時間を減らすか、売上を増やすか”を説明できるかどうかで決まります。
POSレジや券売機のように、手作業や待ち時間を直接減らせる設備は対象になりやすく、反対に、エアコンの設置や内装工事のように、職場を快適にすることが目的の投資は対象になりません。同じ「職場を新しくする」買い物でも、この一点で結論が分かれます。

判断に迷いやすいものもあります。
ホームページの改修は、宣伝が目的なら対象外ですが、ネット注文を受ける仕組みを付けるなら対象になります。
自動車は原則対象外ですが、車椅子ごと乗降できる福祉車両のような特殊用途自動車は対象です。
老朽化した機械の買い替えも、同じ性能の機種にするだけでは対象になりませんが、これまでより高い能力を持つ機種に切り替えるなら対象になり得ます。どれも、”作業がどう良くなるか”を具体的に示せるかどうかが分かれ目です。

導入したい設備が決まっているなら、まずはその設備を紙に書き出し、この記事の対象外リストに当てはまらないかを確認することから始めましょう。そのうえで、業者から見積もりを取る段階で、対象になる経費と対象外の経費が混ざっていないかを整理しておくと、申請後に助成額が減ってしまう事態を防げます。

対象になるか判断が難しい設備や、自社のケースに当てはめて確認したい場合は、事業場の所在地を管轄する都道府県労働局や、社会保険労務士に相談することをおすすめします。

お気軽にお問い合わせください

【参照資料】

  • 厚生労働省「業務改善助成金 交付要綱(令和8年度版)」
  • 厚生労働省「業務改善助成金 交付要領(令和8年度版)」
  • 厚生労働省「業務改善助成金 Q&A(令和8年度版)」
  • 厚生労働省「業務改善助成金のご案内(令和8年度版)」

👉 厚生労働省:業務改善助成金(交付要綱・要領・Q&A・申請様式のダウンロードはこちら)

※本記事は令和8年7月時点の法令・情報に基づき作成しています。助成金の支給要件は変更されることがあるため、申請の際は必ず最新の交付要綱・要領・Q&Aをご確認ください。


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