【65歳超雇用推進助成金/高年齢者評価制度等雇用管理改善コース】とは?高年齢者が意欲をもって働き続けられる職場へ!制度整備で最大90万円


60代のベテラン従業員に「もう少し働き続けてほしい」と思っていても、評価制度や勤務時間の仕組みが定年前のままでは、高年齢者が働きやすい環境とはいえません。定年を延ばす制度を整えることと、実際に長く働ける職場をつくることは、別の課題です。

高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、賃金・評価制度の見直しや、短時間勤務・健康診断制度の導入など、高年齢者が意欲と能力を発揮して働き続けられる雇用管理制度を整備した事業主に対して、国が一定額を支給する助成金です。65歳超継続雇用促進コースが定年の年齢そのものを変える取り組みを対象とするのに対し、このコースは定年の前後を問わず、高年齢者が実際に働きやすい制度を整える取り組みを対象とします。

こんな企業におすすめ!

・60歳以上の従業員向けに、能力や職務に応じた評価・賃金制度を新たに整えたい
・体力面の不安を抱える高年齢者のために、短時間勤務や隔日勤務の制度を導入したい
・法定の定期健康診断とは別に、人間ドックや生活習慣病予防検診を会社で費用を一部負担して受けてもらいたい
・高年齢者を対象とした在宅勤務制度を新たに設けたい
・長年培った技術や経験を若手に伝えるための研修制度を整備したい

1. 高年齢者評価制度等雇用管理改善コースとは?

高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、高年齢者が意欲と能力を発揮して働き続けられる職場環境を整えた事業主を、国が費用面で後押しする助成金です。

例えば、60歳以上の従業員を対象とした能力評価制度を新たに導入した、短時間勤務制度を整備した、といった取り組みが対象となります。

対象となる措置は次の6つです。

・① 賃金・人事処遇制度の導入または改善
年齢ではなく、能力や職務内容に応じて評価・処遇する仕組みを新たに整えること。「60歳以上の従業員向けに評価基準を設け、結果を給与に反映する」「若手への技術指導を担う専門職ポストを設ける」といった取り組みが該当します。

・② 労働時間制度の導入または改善
体力や生活スタイルに合わせた柔軟な働き方ができる制度を導入すること。短時間勤務制度、隔日勤務制度、フレックスタイム制などが該当します。

・③ 在宅勤務制度の導入または改善
通勤の負担を減らすため、自宅での勤務を認める制度を新たに設けること。全従業員向けの既存制度とは別に、高年齢者専用の制度として導入する場合が該当します。

・④ 研修制度の導入または改善
働き続けるために必要な知識を身につけてもらうための研修制度を整えること。技能伝承のための研修や、定年後のライフプラン・キャリア設計に関する情報提供を含む研修が対象です。なお、研修は1人につき4時間以上の実施が必要です。

・⑤ 健康管理制度の導入
法定の定期健康診断とは別に、高年齢者を対象とした健康診断制度を新たに設けること。人間ドック、または生活習慣病予防検診(胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮頸がん・歯周疾患・骨粗鬆症の各検診)が対象です。費用の半額以上を事業主が負担することが必要です。なお、健康管理制度は新たな導入のみが対象で、既存制度の改善は対象となりません。

・⑥ その他
上記①〜⑤以外で、高年齢者の雇用機会の増大に必要な雇用管理制度の導入または改善。

2. いくらもらえる?支給額の一覧

実施した措置の内容に応じて、以下の額が支給されます。
一つの計画期間内に複数の措置を実施した場合でも、支給額はいずれか高い額のみとなります。

例えば、①賃金・人事処遇制度(60万円)と②労働時間制度(30万円)を同じ計画期間内に実施しても、支給されるのは高い方の60万円のみです。

ただし、異なる措置であれば別々の計画として申請することは可能です。その場合、措置ごとに計画申請・実施・実施確認期間・支給申請の手続きがそれぞれ必要になります。

措置の内容中小企業
①賃金・人事処遇制度の導入または改善60万円
②〜⑥のいずれか30万円

機器等の導入加算

措置の実施に伴い、必要となる機器・システム・ソフトウェア等を導入した場合は、導入経費(上限50万円)の60%を上乗せして支給します(100円未満切り捨て)。

例えば、短時間勤務制度(②)の導入に合わせてICカード認証による出退勤管理システムを導入した場合、システム導入費用が30万円であれば、30万円×60%=18万円が加算され、合計48万円の支給となります。

ただし、機器等の導入加算には以下の点に注意が必要です。

・認定された計画書に記載された機器等に限ること
・高年齢者以外にも汎用性が高いものは対象外となる場合があること
・計画実施期間内に契約・発注・納品が完了し、支給申請日までに支払いが済んでいること

3. 活用事例

事例1|60歳以上向けの能力評価制度を導入し、モチベーション低下に歯止めをかける

製造業を営む従業員20名ほどの会社。定年後も再雇用で働き続けるベテランが数名いるが、再雇用後は一律の賃金になってしまい、「頑張っても評価されない」という声が上がっていた。

雇用管理整備計画を作成し、計画開始日の4か月前に計画申請を提出・認定を受けた。計画期間内に、60歳以上の従業員を対象とした「シニア社員能力評価制度」を就業規則に規定・施行。能力評価の結果を処遇に反映する仕組みを整えた。

実施確認期間(計画終了日の翌日から6か月)を経て支給申請を行い、①賃金・人事処遇制度の導入として60万円の支給を受けた。

事例2|短時間勤務制度の導入で、体力面の不安を抱える高年齢ドライバーが継続就労

運送業を営む従業員15名ほどの会社。長距離ルートを担ってきた60代のドライバーが体力面の不安から退職を考え始めていた。

計画申請を経て、60歳以上の従業員が1日の所定労働時間を最大3時間短縮できる短時間勤務制度を就業規則に整備。あわせて、出退勤管理のためのICカード認証システムを導入した。

システム導入費用は20万円で、20万円×60%=12万円の機器等導入加算が発生。②労働時間制度の導入(30万円)と合わせて合計42万円の支給を受けた。

事例3|歯周疾患検診制度の導入で、高年齢従業員の健康意識が向上

介護サービスを提供する従業員25名ほどの会社。高年齢の従業員が多く、健康面への不安から定年後の継続雇用を希望しない者が増えていた。

計画申請を経て、60歳以上の従業員を対象とした歯周疾患検診制度を就業規則に規定。検診費用の半額を会社が負担することを明記した上で制度を実施した。

⑤健康管理制度の導入として30万円の支給を受けた。制度導入後、「会社が健康をサポートしてくれる」という声が増え、継続雇用を希望する従業員が増加した。

4. 支給要件

次のすべての要件を満たす事業主が支給対象となります。

要件1:雇用保険適用事業所の事業主であること

支給申請日および支給決定日の時点で、雇用保険被保険者が存在する事業所の事業主であること。

要件2:計画の認定を受けていること

取り組みを始める前に「雇用管理整備計画書」を提出し、機構から計画認定通知書の交付を受けていること。計画を認定された後に措置を実施する必要があり、計画申請前に措置を実施した場合は支給対象となりません。

要件3:措置の実施と運用状況の記録

認定された計画に基づき、計画の実施期間(1年以内)内に対象措置を実施し、計画終了日の翌日から6か月間の運用状況を明らかにする書類を整備していること。

要件4:高年齢者雇用等推進者の選任

計画書の提出日前日において、高年齢者雇用等推進者を選任していること。高年齢者雇用等推進者とは、高年齢者の雇用環境の整備を担当する責任者として事業主が選任した者をいいます(事業主本人でも可)。

要件5:高年齢者雇用安定法の遵守

就業規則が、高年齢者雇用安定法の次の2つのルールに反していないことが必要です。

第8条(60歳未満定年の禁止)
定年を60歳未満に設定していないこと。

第9条第1項(65歳までの雇用確保措置)
定年が65歳未満の場合、①定年の引き上げ、②希望者全員を65歳まで継続雇用する制度の導入、③定年の廃止のいずれかを就業規則に規定していること。

また、上記の措置を講じていないことにより行政から勧告を受けていないことも必要です(勧告を受けた後、計画書申請日または支給申請日の前日までに是正を図った場合は申請可能)。

要件6:対象被保険者

支給申請日の前日において、事業主に1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者(短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者を除く)であって、実施した措置により計画終了日の翌日から6か月以上継続して雇用されている者が1人以上いること。

要件7:措置の実施に必要な許認可等を受けていること

実施する措置の内容によっては、法令上の許認可等が必要となる場合があります。該当する場合は、支給申請日前日までに必要な許認可等を取得していることが必要です。

要件8:機器等の導入経費を支払っていること(機器等を導入した場合のみ)

措置の実施に伴い機器等を導入した場合は、支給申請日までにその経費の支払いを完了していること。

要件9:就業規則への明記

この助成金は制度助成であり、就業規則等の条文に何と書かれているかを基準に審査が行われます。実際に措置を実施していても、就業規則等に明記されていない場合は支給対象となりません。また、就業規則等は計画書提出日前日までに労働基準監督署へ届け出ている必要があります。

5. 申請の流れ

このコースは、取り組みを始める前に計画申請が必要です。計画申請→措置の実施→実施確認期間→支給申請という流れで進めます。

STEP1:計画申請を行う

「雇用管理整備計画書」に必要書類を添えて、都道府県支部へ提出します。提出できる期間は、計画実施期間の開始日の6か月前から3か月前までです。例えば、令和9年2月1日から措置を開始する場合、令和8年8月1日から11月1日までが計画申請の受付期間となります。

この期間を過ぎると申請を受け付けてもらえないため、取り組みを始めたいと考えた時点で早めに準備を始めることが重要です。

STEP2:計画認定を受け、措置を実施する

機構本部での審査を経て計画が認定されたら、認定内容に基づき措置を実施します。計画実施期間は1年以内で設定します。就業規則の改正・施行および労働基準監督署への届け出は、計画実施期間終了日までに完了させる必要があります。

STEP3:実施確認期間(6か月間)の運用を行う

計画実施期間終了日の翌日から6か月間、導入した制度を実際に運用し、その状況を記録します。この期間中の運用実績が確認できない場合は支給対象となりません。

STEP4:支給申請を行う

実施確認期間終了日の翌日から2か月以内に、支給申請書と必要書類を都道府県支部へ提出します。この期間を過ぎると受理されないため注意が必要です。

主な提出書類は以下のとおりです。

・支給申請書(評価様式第5号)
・雇用保険適用事業所等一覧表(評価様式第1号)
・預金通帳等(写)
・雇用保険被保険者資格取得等確認通知書または事業所別被保険者台帳(写)
・対象被保険者の出勤簿(写)
・措置の実施結果および6か月間の運用状況がわかる書類
・就業規則等(写)
・支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
・機器等を導入した場合は契約・支払・履行確認書類(写)

STEP5:審査・支給決定・振込

書類提出後、都道府県支部での点検を経て機構本部で審査が行われます。支給決定後、指定の金融機関口座へ概ね2〜3週間で振り込まれます。

6. Q&A

Q1. 計画申請で複数の措置を計画したが、結果として1つしか実施できなかった場合はどうなりますか?

はい、1つの措置のみの実施でも支給を受けることは可能です。
ただし、実施できなかった措置については計画変更の手続きが必要です。計画実施期間中に「雇用管理整備計画書(変更)」を都道府県支部へ提出してください。変更手続きを経ずに認定内容と異なる形で実施した場合は、支給対象とならない場合があります。

Q2. 健康管理制度について、既存の法定外健康診断の対象年齢を55歳以上に限定する形で変更した場合は対象になりますか?

A. 残念ながら、対象となりません。
健康管理制度は新たな導入のみが対象であり、既存制度の改善は支給対象外です。新たに別の制度として設けることが必要です。

Q3. 計画実施期間中に、別の措置に係る計画を新たに申請することはできますか?

はい、可能です。
例えば、1つ目の計画で「短時間勤務制度(②)」を実施中に、別途「賃金・人事処遇制度(①)」の計画を新たに申請することができます。この場合、2つの計画はそれぞれ独立した計画として扱われるため、①で60万円・②で30万円、合計90万円を受け取ることができます。

7. まとめ

高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、評価・賃金制度の整備から短時間勤務・健康診断制度の導入まで、幅広い取り組みを対象とするコースです。

65歳超継続雇用促進コースが定年の年齢を変えることを目的とするのに対し、このコースは高年齢者が実際に長く活躍できる環境づくりに特化しています。

申請にあたって最も重要なのは、取り組みを始める前に計画申請を済ませておくことです。就業規則の改正や制度の導入を先に行ってしまうと、どれだけ要件を満たしていても支給対象となりません。「やってから申請」ではなく、「申請してから実施」という順番を必ず守ってください。

まずは自社で取り組みたい措置の内容を整理し、就業規則の現状を確認することから始めましょう。要件の充足状況や計画書の作成に不安がある場合は、都道府県労働局または社会保険労務士にご相談ください。

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※本記事は2026年4月時点の法令・情報に基づき作成しています。
助成金の支給要件は変更されることがあるため、具体的な申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただくか、所轄の労働局または社会保険労務士までご相談ください。

【参照資料】
厚生労働省「65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)のご案内(令和8年度版)」
     「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース 支給申請手引き(令和8年度版)」
     「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース 支給要領(令和8年4月改正)」

👉 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構:65歳超雇用推進助成金 公式ページ(申請書・要領のダウンロードはこちら)


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